栗本薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ1995年に出版された、パソコン通信と現実社会の融合とずれがキーとなっているミステリ。
これ、テーマは当時としては斬新だったと思うのね。
多分当時はネットはネット、現実は現実と、はっきり分断されていたから。
思い返せば、私がインターネットに触れた最初は1994年だったから、実は割と初期からネットに触れてはいたんだと今回気づいた。
プライベートで森博嗣や、読書家の皆さんのWEB日記や掲示板を見始めたのは、さらに1~2年後くらいだと思うし、コメントなどを書き始めたのはさらに数年後だったように思う。
だからパソコン通信を体験したことはないのだが、それでもこの作品に書かれたネット内で繰り広げられるオタクたちの会話はリアルに受け止められた。
あー、そういう人たち、いたよねー、みたいな。
だから余計に、読んでいて痛かった。
現実社会ですべてをあけっぴろげにオープンにしている人はいないだろう。
ある程度、こういう人間です、こういう風に見られたいのです、と装っているはずだ。
そしてネット上でそれは、さらに極端な形で、何ならリアルな自分と真逆な形で姿を現してしまう。
装うことが簡単だから。
あくまでも仮想空間内でのことだから、気持ちを切り替えればいくらでもなりたい自分を創出できる。
主人公の滝沢稔19歳は浪人生。
なのに1月の中旬というのに、昼前に起きて、パソコン通信で一日が潰れるような生活をしてる。(親目線で読むと、非常に腹立たしい)
アトムというハンドル名で結構ネット内では人気者の彼は、高校時代の友人・姫野をパソ通に誘ったところ、ハンドル名〈姫〉は、あっという間にアイドルとなってしまう。
女性と思われて。
過激な〈姫〉のファンたちが、チャットルームで排他的に〈姫〉を持ち上げ、不穏なムードがパソ通内に漂ったとき、稔は姫野に〈姫〉をやめるように言う。
姫野は一度オフ会をして、ファンたちをがっかりさせてから退場することにしたのだが、姫野が身代わりに立てた偽物の〈姫〉が殺された。
怯える姫野。
稔は事件の真相を探り始める。
これ、最初は伊集院大介を出すつもりはなかったのではないかと思った。
けれど、稔が探偵役をやるうちに、彼は身動きが取れなくなりそうだと気づいて、伊集院大介を仕込んだのかな…と。
現実の世界で自分自身と折り合いをつけられず、ネットの中に居場所を見つけようとあがく人。
ネットはネットと割り切り、あくまでも仮想の自分のスタンスを崩さない人。
でも、文章から、その人のひととなりっていうのは漏れ出てくるものだと思うが、今でもSNS上での行き違いから実際の事件が起きたりしてい待っているので、さすが栗本薫、慧眼である。
ただし、読後に大量のもやもやは残る。
だって、実際に起きた殺人事件なのに、パソ通の中だけで、しかもシークレットチャットだったので本当に限られた数人しか真相を知ることができず(つまり警察も)、証拠は何もなく、断罪もされない。
伊集院大介の示した真相すら、突き詰めることなく「そういうこともあるかもね」で終わる。
え?
証拠がないから断罪できなくて、その後もつきあいを続けて行けるの?
「そういうところ、あるからなあ…」で?
断罪されない方も、自分のしてしまったことの意味を深く考えもせずに、このまま一生を送れるの?
で、何事もなく稔が大学に合格したら、そっちの方が怖いよ、私は。 -
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