松木武彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は、各地の古墳の遺構や遺物に大して行った、年代測定法など最新の技術を駆使した研究に基づき、弥生時代から古墳時代にかけて、日本国内がどのような状況にあったのかを、中国、朝鮮半島などを含む世界史的な視点も加味して描き出している。
正直、そこまでいろいろな古墳を見て回っているわけではないので、緻密に述べられた内容に対してどこまできちんと追えたのか自分では疑問に残る。
しかし私の中で、
・弥生時代は稲作が始まった弥生式土器の時代、吉野ヶ里遺跡などの時代
・古墳時代 いろいろな古墳が作られている 全国結構古墳はたくさんある 埴輪の時代
卑弥呼はこの時代?
・日本書紀や古事記の神話と物語?の世界
・日本書紀では、突然継体天皇のラインが登場
そして欽明天皇につながる(ここから先は、聖徳太子も出てきて普通に歴史の流れの中にあるイメージ)
といろいろなものがブツ切れであったものが、全体像と道筋が感じられ、なんか繋がったように思える内容でとても興味深かった。
(それにしても、こうやって書き出してみると、自分の古代史の知識や認識が酷い・・・)
著者の松木さん、テレビなどで拝見してお話が面白いなぁと感じていましたが、亡くなられていたのですね。おくればせながら、ご冥福をお祈りします。
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Posted by ブクログ
考古学的アプローチによる古墳の解説、私の愛読するジャンルの一つであるが、未解明な部分が多すぎるが故に、それぞれの学者は一つの研究テーマについて緻密に研究を進め、発表する。読み手はその情報を読んで知識を蓄え、その充実した内容に満足するわけだ。しかし研究者による古墳へのアプローチの幅はとても広く、一冊の本から与えられた知識からは全体像が掴めない。だからこそたくさん読むのだが、読めば読むほど新たな疑問が湧いてきたり、一度吸収したはずの情報が記憶から抜け落ちてしまったりして、自分の中の古代へのイメージがどんどんぼやけていってしまうことに気づいた。
多方面から古墳を見つめた学者がこぞって本を出してくれるのはありがたいが、これらの研究成果を編集して一まとめにした画期的な本はないものだろうか、そんなことを思って検索をかけて探してみたものの、条件に合うような書籍はまったくみつからなかった。やはりそれぞれの研究を読むだけではなく、自分自身で情報を取捨選択して編集していくべきなんだろうかと思っていた矢先、この本が出版されることを知った。
実際に手に取って読んでみて驚いた。今まで読んできた書籍の情報がこの一冊に凝縮されているではないか。更に近年明らかになった研究結果も反映されていて、編年体になっているため非常にわかりやすい。膨大な資料による裏付けと世界史的な視点による松木氏による考察は説得力が高く、箸墓古墳が誕生してからどのようにしてヤマトの氏族がこの墓制を各国に広めていったのかが一目でわかるようになっている。古墳の制度が東日本から生まれたという説には最初は疑問を抱いたが、古墳の独自性をその外形に求めるのではなく、群集墳とそれぞれの墳丘の関係性に見出す著者の論述を見て合点がいった。
大陸・半島貿易の拠点としては北九州や出雲、越に比べて明らかに不利な近畿以東の国々が、なぜ強大な力を持つようになったかについての説明も納得のいくものであった。
ここからは筆者の記述からの私の想像になるが、北九州や出雲、越で見つかった激しい戦闘の痕跡や、防御に優れた高地制集落の跡を見る限り、後漢の黄巾の乱と時を同じくする倭国大乱は、大陸・半島貿易の利権を巡る日本海側の国々による争いだったのではないかと思う。その戦乱から離れた位置にありながら豊かな農地と港を持ち、同じく豊かな田園地帯を持つ東国への中継地でもある近畿の諸勢力が倭国大乱以後力をつけていくのは、至極当然の流れであったように思う。
ただ、各地有力氏族の墓制を取り入れて団結力を保ちつつ、ヤマト氏族としてのアイデンティティを保つ目的で作られた前方後円墳、その全国への波及についての論述や、古墳時代の終焉の理由付はやや甘いなと感じた。埋葬に関する秘技を各国と共有して仲間意識を高めるためと氏は説明しているが、各地の氏族の独立性が高かった古墳時代にどうしてそうする理由があったのかが今一わからない。書面の情報で推測するなら、ヤマトの一員であることで交易に関して多くのメリットがあったことを想定し、そのヤマトの一員であることを示す目的で前方後円墳の作りや秘技を真似させたと見ることもできるかもしれない。しかしそれがなぜ「墓」である必要があったのか。それはもっと古代の墳墓に関する根源的な情報が必要になるのだろうか。何れにせよ本書に求められる情報ではないのかもしれない。
またはこう見ることもできないだろうか。4世紀中ごろの崇神天皇の時代、古の天候についての研究によれば冷涼かつ雨の多い時期が続き、稲の不作に陥っていた可能性が指摘されている。また、記紀の記述によれば疫病の蔓延により多くの人々の命が失われたという。
ここで吉備の造山古墳の築造年についての記述が重要になってくる。吉備の古墳は4世紀中頃にその築造の勢いが失せ、その数年後、人口回復の前に築造されたという。
全国的な不作や疫病が続く中、ヤマト氏族が自身も打撃を受けながらもその生産力や交易を周囲に誇示できていたとしたら、その秘密を探るために各国がヤマトの真似をしようとしたとしてもおかしくないとは思う。ただ前方後円墳の広がりは不作前から見られていた現象なので、この仮説は素人の想像の域を出ない。色々考えてみるが、やはりわからない。しかし、こうやって考えることができるだけの情報を松木氏が残してくれたことには心から感謝したいと思う。
所々記述の甘さは見られるものの、この書籍が古墳愛好家にとって有益なものであることは間違いないであろう。個人で研究を進めていく際、現在の学会の流れをおさらいするために読み直しても良いと思う。これほど素晴らしい本は一家に一冊、必ず持っておきたいものだ。 -
Posted by ブクログ
古墳についての研究がどうなっているのかわかるものでよかった。
弥生時代の「古墳以前」の状態から古墳の発生、時代による古墳の形状の変化とか、まったく知らなかった。たぶん研究の蓄積でいろいろなことが明らかになったのだろう。
日本だけでなく、中国・朝鮮半島、さらにはユーラシアの反対側のイギリスの状況も見据えて、人類史の中での位置づけを述べている(仮説という面もあろうが)。
前方後円墳がああいう形状であるのは仏教が広まる前のカルトによる儀式の場であったことが由来であろうということで、仏教後に古墳が廃れたことと整合性はある。
ただし、そのカルトはなんだかブラックボックスに見える。おそらく「認知考古学」でわかることとしてそのカルトがあるのだけど、認知考古学はこの本だけでは何のことだかわからなかった。 -
Posted by ブクログ
本書の主な内容
〇前方後円墳の成立年代
・鏡や土器の型式の検討、年輪年代、放射性炭素といった複数の手続から、纏向の前方後円墳は3世紀前半には出現し、半ばごろには箸墓が完成していた(76頁)。
・一方で経済の中心については、生産技術の一つのメルクマールである鉄器を見ると、鉄センターの拠点は九州北部と考えられる。
⇒ツクシとヤマトの関係
〇前方後円墳の形(第2章)
・箸墓を例に取ると、箸墓の前方部が、後円部の上からゆるやかに、しかし深く降下し、そこから再び前方部の前端に向かってせり上がる、逆放物線のスロープ面を作る形を目指した結果としてできた形(99頁)。
・後円部は石室と棺
・天理市柳本行燈山、渋谷向山古墳では、後円部頂から前方部へのスロープは極めて急になって、両脇の後円部斜面とあまり変わらなくなる一方、前方部は端まで長くなり、プラットフォームのような形になる。そのため古墳全体の長さも伸びることとなった(127頁)。
・大型前方後円墳の築造が奈良市の盆地北辺部に移ると、箸墓型のスロープ上の前方部が復活してくる(129頁以下)。
・前方後円墳に大規模かつ典型的に表現された古墳のカルトは、畿内を本源として各地に伝わっている。何かの利を願って主を神格化するカルトが畿内で整備され、同じ利を願う各地の人々がそれに同調したところに、古墳を大きく入念に営む慣わしが、きわめて短期間のうちに広がったと考えられる(149頁)。
⇒当初の利の一つが、生産を支える鉄の可能性にあったのではないか。
〇「巨大古墳の世界」(第3章)
・3世紀後半から4世紀にかけて、大型前方後円墳が奈良盆地東南部に集中しており、そのほかの地域はほとんど空白に近い。その不均衡は何を意味するのか?
→地域の頂点に立つ長がサミットメンバーとして大和に墓を営むべく地元を 「留守」にしたためではない か(164頁以下)。
・4世紀後半になると、古墳の分布パターンが激変する。各地に前方後円墳が築造されるが、そのスタイルや要素に高い共通性が認められる(177頁)。
→王と侯のような関係だったのではないか。
⇒さらにその背景として、各地の長の戦略が、それまでの交易から、自らが支配していた土地に生産拠点を建設し、その産物も活用して農業生産の進展を図る、という交易から殖産興業へと転換したのではないか(198頁)。
〇第4章「古墳文化の衰亡」(第4章)
・5世紀以降、古墳の小型化、墳丘の衰退、横穴式石室の普及という現象が見られ る。こうした変化は、それまでの英雄を仰ぎ見るための古墳から、地域支配者の一族の墓へと変貌したことを表しているのではないか(252頁以下)。
・その背景としては、列島の暮らしを支える基幹資源である鉄の国内生産が可能となり、外交や交易を征して資源や文物をもたらす英雄=プロバイダーの性格が変わってきたことによるものである(同上)。
最終章の「第5章 世界のなかの古墳文化」では、東アジア墳墓文化、さらにはヨーロッパの墳墓文化をも見据えた上で、日本の古墳文化を考えていく必要があることが述べられる。
一口に古墳と言っても、時代や地域による違いがいろいろあることについて詳しく説明がされているし、古墳が作られた社会的背景等についても十分な考察が加えられていて、非常に勉強になった。
ただ、本書の副題の「認知考古学からみる古代」という点について、著者も本文で「認知考古学とは」と多少の説明はしてくれているのだが、どういった考察が認知考古学による成果なのかということが、十分には理解できなかった。 -
Posted by ブクログ
大学時代の恩師のお名前を本屋でお見かけして、思わず購入。
分かりやすい文章、語りかけてくる文体に当時の講義を思い出しました。
「はじめて」と銘打っているだけあって、まずは考古学が扱う年代や史料についての話から入り、実際に旧石器時代から古墳時代にかけての時代解説。
そして考古学が現代人にとって、どう役に立つかなどの解説も。
初心者にも親しみやすく、それでいて内容は完全に初心者よりは詳しいため、それなりに考古学に触れている人でも楽しんで読める本でした。
要は誰でも楽しんで読める本。
是非、これまで考古学に触れてこなかったけど、少し勉強して見たいなと思う人に読んでいただきたいです。
考古学の世界に導いてくれる導入本としては最高だと思います。