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中国の東辺に位置した倭国・日本は、大陸・半島の政治や思想・文化の影響を強く受けながら、漢字文化圏のなかで国づくりを実施した。シリーズの総論として本巻では、古墳造り、都城の建設、仏教の伝来、日本語表記など、古代の基本的テーマを選び、最新の研究を収録する。現在の文化・宗教事情にも影響する日本史の「青春時代」の足跡である。また今日の課題とも関わる、災害とジェンダーの2つのテーマを歴史的に解き明かす。
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Posted by ブクログ
日本列島の文明化と国家形成を、中国を中心とする東アジア(漢字、仏教、儒教、律令)の相互作用として捉え直す試み。本書の特色は、前方後円墳や聖徳太子といった「定説」を、東アジア全体の激動のなかで最新データを用いてアップデートする点にある。 まず刺激的なのは、巨大前方後円墳を直ちに「大王墓」とするテーゼ...続きを読むを執筆者自らが「撤回する」と明記している点。前方後円墳は、一義的にはリネージ(出自系統)やクラン(氏族)のランクを表示する葬送舞台であり、王権秩序とは別次元の組織形態を反映していたという整理は、権威の表現が複線的であることを示す。 都城史では、藤原京から平城京への遷都が、大宝律令への対応だけでなく、疫病による多数の死者の発生が「礼に背く都」とみなされたことや、遣唐使が実見した長安大明宮の情報の反映によるという指摘が興味深い。遷都を「法整備」だけで単線化すると、疫病・礼制・対外情報という同時進行の論点を取り落とす。 文字文化においては、行政法典や正史には中国式漢文を用いる一方、和歌や宣命には日本語順の和文表記を用い、言語構造の異なる二重の表記体系を保有したことを明示。さらに、百済・新羅の文字表現(誓記体、吏読)が非漢文的な日本語表記の成立に決定的な影響を与えたことを、木簡や刻字土器から実証する。「中国→日本」の直線モデルに回収しない、半島・多方向の媒介を前提にする視点が重要。 仏教受容は信仰のみならず、測量・金属加工・造瓦・医薬といった先進技術者集団と一体で波及し、地方社会への浸透も評家(郡家)と寺院がセットで整備された。宗教と技術の「セット受容」として描く視点は、単なる信仰導入ではない複合的な国家形成を理解する鍵になる。 家族史・ジェンダーの観点からは、奈良時代以前は家父長制が未成立であり、キサキは「天皇の妻」ではなく「皇子女の養育者」として自立した経営主体であったという論考が刺激的。婚姻は一夫一婦制が固まらず、対偶婚のように結びつきが弱い形態が想定され、后妃は天皇と同居せず独立した宮で皇子女を育てる、というモデルを提示する。後世の「正妻・家父長」モデルをそのまま遡らせない注意が必要。 天智期関連では、白村江敗戦後の亡命百済人流入が技術・官制・記録能力を押し上げ、国防と制度整備が同時に進む局面として描ける。斉明追善の川原寺建立、天皇号使用の端緒可能性(野中寺弥勒菩薩像銘「中宮天皇」)など、宗教・称号・建設が政治と結びつく。ただし、近江令は体系的な法典としての実在は疑問視されており、単行法令の集成であった可能性が高い。 また、古代社会の流動性として、多産多死社会であり、都城への人口集中が病原体との接触機会を増やし、天然痘などの疫病拡散を律令制システムが加速させた点も重要。制度=進歩として描き切ると、疫病・災害という負の帰結が見えなくなる。 角川選書であり、最新説を平易な言葉で解説している初学者向け。女性の自立した邸宅経営、当時の過酷な災害・飢饉の実態など、リアリティのある描写に不可欠な知識が揃う。文字を持たなかった人々がどのようにして日本語を書き始めたのか、女性たちがどのように家を切り盛りしていたのかといった、生活実感に近い歴史像が得られる一冊。
シリーズの総論として、東アジア世界の中における日本古代国家の形成過程を扱う内容。個人的には伝播ルートを踏まえた漢字文化の受容過程が特に興味深かった。
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シリーズ 地域の古代日本 東アジアと日本
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吉村武彦
川尻秋生
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