松木武彦の作品一覧
「松木武彦」の「【6冊 合本版】シリーズ 地域の古代日本」「学習まんが はじめての日本の歴史」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
私の尊敬する考古学者三大巨頭の最後の1人だった松木武彦さんの「絶筆」である。今まで、何冊も古墳時代解説本を書いていて、読まなくても良いかな、と去年は思っていたけど、とんでもない間違いだった。audibleで聴き始め、聴き終わった今、必ず本書を購入し、大切に何度も熟読することを誓いたい(audible登録が何故か出来ないので仕方なくこの本で登録。恨めしい)。
古墳時代がどの様に始まったのか。文献史学者とは一味違う編年体著述の古墳時代史ではあるが、それのみが本書の真価ではない。古墳時代と言いながら、弥生時代後期の解説が多いのが松木古墳解説の特徴である。しかもその割には「卑弥呼」という言葉はあまり出てこない。
改めて、私の弥生時代妄想は、ほぼ妄想ではなくて根拠があることがわかった。というよりも、松木教授の教えをもとに妄想しているので、基本そうなってしまう。
改めて去年の旅は、我ながらちゃんとピンポイント押さえている。鳥取の青谷上寺地遺跡、北陸の小松市八日市遺跡(埋蔵文化財センターのみ)、濃尾平野の朝日遺跡を訪れたのは、意義のあることだった。また、2週間前に思いついて行った吉備東部の浦間茶臼山古墳についても、字数を割いて松木教授は解説してくれていて嬉しかった。
松木教授も言っているように、3世紀初めの(卑弥呼による)倭国統一は、戦争で成ったわけではなくて、話し合いだったのである。
何故奈良盆地が、統一した倭国の中心的な土地として選ばれたのか。
交通の要所としての「物流センター」としての役割を、各地の氏族たちが認めた(認めさせた)というストーリーを松木さんは持ったようだ。これは物凄く新鮮な視点だった。厳密な材料こそ出してはいないが、(明確に自らの死を意識しながら)明瞭な意識で斬新な視点を提示したのだと思う。氏の遺言だ。私たちがこれを引き継がなくてはならない。同時に、(西国の弥生遺跡ばかり訪ねていたが)大和以東の日本の弥生遺跡の重要性が初めてわかった。今年末、偶然にも愛知以東に行くことが決まった。東海、関東の弥生・古墳時代を見てきたいと思う。
その他、少し論理の飛躍はあるかもしれないが、空白の4世紀などモロともせず次々と「新説」を提示しながら、2-6世紀の日本を編年体で説明し尽くした。考古学なので、全て物理的に根拠のある新説なのである。
この前見た岡山市教育委員会の造山古墳時代の「二頭政治」説とは、次元の違う日本列島像であり、あの説を信じかけた自分を恥じた。そもそも、大和王は西日本を統べる王でもなかった。
また、「四半世紀を岡山で過ごしたから」と言って吉備の古墳時代を詳説してくれたのは、望外の嬉しさだった。これからキチンと検討したい。
論理の構成上、古墳時代後期は簡単な説明で終わった。この後に読む「継体天皇」が、偶然にもその時代を詳説しているはずで楽しみである。
Posted by ブクログ
近年の放射性炭素年代法と年輪年代法、及び土器、副葬品等の順番付け、火山灰層、更には年がわかる魏志倭人伝等や鉄剣から10~20年程度で割り出した編年の古墳時代の歴史を描く試み。
・3世紀前半 古墳は、古墳群として氏族にシンボルとして東日本で発生。
・250年前後 箸墓古墳
・3世紀後半 ヤマトに門閥氏族
・4世紀前半 ヤマトの門閥氏族が2つに分かれる。ツクシを除く各地の有力氏族とよしみ。金官伽耶と外交関係
・370年前後 百済と外交関係
・375~400年 武装の革新、騎馬
・391~404 高句麗と衝突
・400頃 カワチの2つの門閥氏族(古市・百舌鳥)が強大化。
・375~425 西日本各地更には東日本でも各地の氏族が男系大氏族に再編。
・425頃 半島での敗戦により軍事連合政権の「応神新体制」
・450~475 カワチの2大氏族が抗争の末挫滅。
・475~500 応神新体制の解体
・500~575 「大王」の成立
Posted by ブクログ
考古学の入門書として類書の中でもとりわけ初学者の方によい本だと思います。なぜ日本の古墳は世界の墳墓と比べて巨大なのか、縄文土器はなぜ派手な紋様をしているのか、という個別のトピックで興味を引きながらも、考古学という分野自体の歩みと危うさ、光と影もバランスよく扱っていてスッキリした構成となっています。
入門書としてよいと思ったのはまさに考古学のオーソドックスな解説をしながら考古学自体の意義を胡座をかかずに再考しているところで、ナチスと考古学の悪しき結びつきなどに警鐘を鳴らしつつも、そうした社会との関係を問う考古学を「パブリック考古学」と今は呼ぶとして学問への関心を持続させる書き方になっているのが誠実だったと思います。
また、縄文土器をめぐり当時の人々の主観的、心理的世界を探求していくアプローチを「認知考古学」と呼び最先端の学際的な領域を紹介しようとしているのも読み物としての娯楽性に富み楽しいものでした。
総じて入門書としてその学問の楽しさ、美味しい部分をスッと出す娯楽性と、学問的な誠実性が両立していた本と言えます。
Posted by ブクログ
日本列島の文明化と国家形成を、中国を中心とする東アジア(漢字、仏教、儒教、律令)の相互作用として捉え直す試み。本書の特色は、前方後円墳や聖徳太子といった「定説」を、東アジア全体の激動のなかで最新データを用いてアップデートする点にある。
まず刺激的なのは、巨大前方後円墳を直ちに「大王墓」とするテーゼを執筆者自らが「撤回する」と明記している点。前方後円墳は、一義的にはリネージ(出自系統)やクラン(氏族)のランクを表示する葬送舞台であり、王権秩序とは別次元の組織形態を反映していたという整理は、権威の表現が複線的であることを示す。
都城史では、藤原京から平城京への遷都が、大宝律令への対応だけでなく、疫病による多数の死者の発生が「礼に背く都」とみなされたことや、遣唐使が実見した長安大明宮の情報の反映によるという指摘が興味深い。遷都を「法整備」だけで単線化すると、疫病・礼制・対外情報という同時進行の論点を取り落とす。
文字文化においては、行政法典や正史には中国式漢文を用いる一方、和歌や宣命には日本語順の和文表記を用い、言語構造の異なる二重の表記体系を保有したことを明示。さらに、百済・新羅の文字表現(誓記体、吏読)が非漢文的な日本語表記の成立に決定的な影響を与えたことを、木簡や刻字土器から実証する。「中国→日本」の直線モデルに回収しない、半島・多方向の媒介を前提にする視点が重要。
仏教受容は信仰のみならず、測量・金属加工・造瓦・医薬といった先進技術者集団と一体で波及し、地方社会への浸透も評家(郡家)と寺院がセットで整備された。宗教と技術の「セット受容」として描く視点は、単なる信仰導入ではない複合的な国家形成を理解する鍵になる。
家族史・ジェンダーの観点からは、奈良時代以前は家父長制が未成立であり、キサキは「天皇の妻」ではなく「皇子女の養育者」として自立した経営主体であったという論考が刺激的。婚姻は一夫一婦制が固まらず、対偶婚のように結びつきが弱い形態が想定され、后妃は天皇と同居せず独立した宮で皇子女を育てる、というモデルを提示する。後世の「正妻・家父長」モデルをそのまま遡らせない注意が必要。
天智期関連では、白村江敗戦後の亡命百済人流入が技術・官制・記録能力を押し上げ、国防と制度整備が同時に進む局面として描ける。斉明追善の川原寺建立、天皇号使用の端緒可能性(野中寺弥勒菩薩像銘「中宮天皇」)など、宗教・称号・建設が政治と結びつく。ただし、近江令は体系的な法典としての実在は疑問視されており、単行法令の集成であった可能性が高い。
また、古代社会の流動性として、多産多死社会であり、都城への人口集中が病原体との接触機会を増やし、天然痘などの疫病拡散を律令制システムが加速させた点も重要。制度=進歩として描き切ると、疫病・災害という負の帰結が見えなくなる。
角川選書であり、最新説を平易な言葉で解説している初学者向け。女性の自立した邸宅経営、当時の過酷な災害・飢饉の実態など、リアリティのある描写に不可欠な知識が揃う。文字を持たなかった人々がどのようにして日本語を書き始めたのか、女性たちがどのように家を切り盛りしていたのかといった、生活実感に近い歴史像が得られる一冊。