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古墳は前方後円墳だけじゃない。円墳、帆立貝形、双方中円墳……、横穴・洞窟など、墳丘以外も。東北から九州まで、驚きの個性派をフルカラーでたっぷり紹介。日本列島各地の古墳探訪を始めよう。 第1部 いろいろな形の古墳 第2部 古墳の歴史をたどる 第3部 古墳はどう変わったか 第4部 古墳が終わる道筋 第5部 古墳とは何か 第6部 古墳、ここが一番
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Posted by ブクログ
<目次> 第1部 いろいろな古墳 第2部 古墳の歴史をたどる 第3部 古墳はどう変わったか 第4部 古墳が終わる道筋 第5部 古墳とは何か 第6部 古墳、ここが一番 <内容> 古墳研究の第一人者による古墳の概説。ただ地域別とか時代別とかの作りではなく、松木先生らしい、形や副葬品などでの...続きを読む分類が面白い。写真もふんだんで、その古墳に行きたくなる。また先生による古墳見学の注意も(例えば、○○古墳は羨道が低いので要注意など)。
・松木武彦 「古墳」(角川文庫)を読んだ。といふより見た。前著「古墳とは何か」に続く書である。基本的 に、写真とその説明が見開き2頁に収められてゐる。読むよりは見る方が多い。うつかりするとポイントを見逃してしまひさ うである。しかし、そのポイン トをきちんと見ていくと、第1部「いろいろな形の古墳」、...続きを読む第 2部「古墳の歴史をたどる」、 第3部「古墳はどう変わったか」のそれぞれが分かるやうにできてゐる。前著でははつきりしなかつたところも本書では写真付きで分かり易くなつてゐ る。筆者が同じであるから、書いてあることに違ひはない。本書を先に見てから前著を見るのもありであらう。松木氏の基本 的な立場は、「『古事記』や『日本書紀』といった日本語の資料から古墳の歴史を読み解いていく姿勢が、いまの古墳研究のもっぱらの道筋となっていま す。(中略)しかしこれからは、そればかりを追求しても、 古墳の歴史的研究は一元的・部 分的にしか理解されず、結果として、ピラミッドや皇帝陵との人類学的比較はむずかしいでしょう。(中略)この本の大きな目的は、それを可能にする、 古墳のさまざまな見方やとらえ方の新しい提案です。」(「は じめに」4〜5頁)といふことである。より分かり易く言へ ば、「いまおこなわれているような(中略)作業とは異なる視点で古墳を見ていきたい」(5頁)ので、「大きくて有名な前方後円墳のみではなく、小さくても個性をもっていたり、近畿の大王墓とはまったく異なる景 観を見せたりする日本各地の古墳を、たっぷりと紹介します。」(同前)さうして「古墳 が一貫して『秩序』や『体制』や『国家』の表現や反映であったわけではないことを考える起点にしたいと思います。」 (5〜6頁)そんなこともあつ て本書は写真が中心となるので ある。 ・「古墳の出現・発達・衰退・消滅は、日本列島の歴史でもあるし、東アジアの歴史、ユーラ シアの歴史、そして人類全体の歴史でもあります。」(67 頁)とはじまる第2部では、古墳はモニュメントの一つとして位置づけられる。「日本の特徴 は、このモニュメント、すなわち古墳の巨大さと数の多さ。その解明こそは、これからの古墳研究の最大の基本的課題である。」(68頁)といふことで、ストーンサークルや朝鮮半島の王墓、ピラミッド等が出てくる。ポイントは、朝鮮半島の古墳は「墳墓の多くが、地面に棺を設けて主人公を深く葬」(85頁)つて墳丘を築いたのに対し、日本では「主人公の遺骸をできるだけ天に近いところ に位置づけるため、墳丘を山のように高く築き、頂上を尊い広 場にし、そこに棺を捧げて儀礼の核としたのである。」(同 前)といふ点である。これで日本の古墳は高くなつていく。し かも「前方後円墳の主人公は、 世界観の中では最高位の神であり、世俗的には大氏族の長や王として演出された。」(89 頁)古墳の主は神であつた。死して神になるといふ考へは古墳の最初からあつたらしい。それ ゆゑに、逆に神から人への変化は第3部の「古墳を彩る美しいフォルム」や「モニュメントから多様な墓へ」で述べられる。 ここで横穴式の石室が出てくる。私は古墳といふとこの羨道 と石室を思ひ出すが、これは6世紀以降であつた。石室出現により「天空のスロープも」(128頁)円筒埴輪も埴輪配列もなくなる。豊橋の馬越長火塚古墳(178頁)もこの時期 に当たる。と書いてゐたら既に 字数が尽きかけてゐる。要するに、死者は神、最後は人に戻つていく。この道筋が古墳でたどれるのである。これだけでも本 書を見るに値すると個人的には 思ふ。古墳は墓である。しかしその意味は時代的に変遷してゐる。おもしろく分かり易い書であつた。
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