松木武彦のレビュー一覧
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日本列島の文明化と国家形成を、中国を中心とする東アジア(漢字、仏教、儒教、律令)の相互作用として捉え直す試み。本書の特色は、前方後円墳や聖徳太子といった「定説」を、東アジア全体の激動のなかで最新データを用いてアップデートする点にある。
まず刺激的なのは、巨大前方後円墳を直ちに「大王墓」とするテーゼを執筆者自らが「撤回する」と明記している点。前方後円墳は、一義的にはリネージ(出自系統)やクラン(氏族)のランクを表示する葬送舞台であり、王権秩序とは別次元の組織形態を反映していたという整理は、権威の表現が複線的であることを示す。
都城史では、藤原京から平城京への遷都が、大宝律令への対応だけでなく -
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弥生時代から古墳時代のどの本よりも詳しい考古学的解説書。
松木武彦氏の研究の集大成。
弥生時代からの各地域圏での氏族の始まりから、大王、ヤマト政権へ至る流れ。
ヤマト政権の確立とともに徐々に畿内は古墳の縮小、消滅へとむかう。
・1-2世紀
北部九州:外交と交易の先進地帯、甕棺墓がなくなる、原の辻貿易。
山陰:日本海交易の拠点、四隅突出型墳丘墓。
北近畿:貿易技術立国。
瀬戸内:内海航路と農業生産。
近畿中央部:農業社会の伝統と変革。
東海:肥沃な三日月地帯の要衝。
北陸:倭国乱の焦点。
関東:弥生の新開地。関東と東海にわたりアヅマの醸成。
・3世紀
古墳は氏族のシンボル、東日本で発生した。個 -
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本書は児童書の棚にあった。編集者は少なくとも中学生あたりを読者に想定しているのだろう。けれども内容はとっても高次なことを語っている。元の原稿は駒澤大学の学部生向けの「日本考古学概説」である。コロナ禍の下、配信のみになったのが残念で書籍化したらしい。目次全文が手に入ったので、本レビュー最後尾にコピペした。よくぞ新書体裁にここまで詰め込んだ、というぐらいに日本認知考古学のパイオニアとしての矜持を持った概説書になっていることが、この目次を眺めるだけで判ると思う。栞だけで頁が倍くらい膨らんだ。全部メモすると大変なことになるので、どうしてもという部分のみメモしてゆきたい。
以下少し専門的になるので、(い -
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美の考古学、古代人は何に魅せられてきたか ということで、従来の考古学にはないアプローチの仕方、つまり、
第1章 人類は美とどうかかわってきたか
第2章 形の美の変遷
第3章 数と図形の美
第4章 色と質感の考古学
という方法をとり、その中身を詳しく述べている。
その成果を踏まえ、
第5章 美の人類史と列島史
で、仮説の理論づけを施した著作である。
従来の単純な縄文時代、弥生時代、古墳時代・・・
という直線的な歴史認識では、面白くもなんともないわけで、著者の論法からいけば、ユーラシア大陸の東西で、同時期同じような石斧が作られることも立証できるわけです。
考古学の世界におけるステレオタイプ的な実証 -
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考古学者である著者が、ヒトの確かな足跡が発見される旧石器時代から、巨大古墳が築かれる5世紀までの4万年の日本列島の歴史を文字の記録に頼らず、物質資料のみで描いた大作。
何より新鮮だったのが、歴史科学の再生において「認知科学(ヒューマンサイエンス)」をベースにし、人の心の普遍的特質から人の行動を考古学的に説明しようとした点。文字のない「物質」と「人の心」から読み解く考古学の世界は、自分が想像していた以上に惹かれるものであった。
無文字社会の人、もの、心のあり方とは?そもそも宗教というものはあったのか?日本という国はどうやって形成されていったのか?
こういった素朴な疑問に対し、なんらかの新し -
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文字による記録がほとんどない5世紀までの日本古代史について書かれた本。
文字資料がない、つまり物質資料しかない時代における社会のあり方や人々の心を読み解こうというのが、本書の趣旨となる。認知考古学という学問があるというのを初めて知った。読み物として非常に面白い。まさにこんな本を読みたかった。
たとえば。地球が寒冷化した時期には無個性なツルンとした土器が増える。なぜか?寒くなると食料が得にくくなるため、同じ場所に定住するのが難しくなる。結果、人の移動が増え、文化の交流が生まれる。これが土器の無個性化に繋がった。。。
面白いけど、推理ゲームの感はある。その説の裏づけとなる証拠を見つけるのは難 -
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旧石器時代から古墳時代までの約4万年が対象。
当時の気候や土器、墓等の出土品から人々がどのように歩んで行ったかを検証していく。
なによりこの本が特徴的なのが、上記要素に加えて「心の科学」認知科学を用いて既成の解釈に囚われずに、新たなアプローチでこの時代を検証しているところ。
文字による記録がないこの時代のことを、日本列島の形や気候、土器の形状等の証拠と、人間の普遍的な行動を説明している認知科学とを用いて、さながら事件のプロファイリングをしていくように、その時々を推理していく過程はかなり分かりやすく、且つ刺激的だった。
そしてなにより、土器や古墳程度の認識しかなかったのが、本書のおかげ