野嶋剛のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
今、最もホットな半導体業界で圧倒的な成功を収めている会社の勝因研究である。30年間この業界とこの会社を見てきた台湾の著名ジャーナリスト林宏文が満を持して書き上げたTSMC分析の傑作だ。
アメリカと中国のデカップリング、’22 米CHIPS法施行、コロナによるサプライチェーンの綻びなど地政学的要因で、台湾のTSMCは半導体の受託製造工場をアメリカや日・欧に分散することを始めた。米アリゾナ州、日本の熊本、シンガポールやヨーロッパなどへ莫大な補助金付きの本格的な工場進出である。
かつて日本の半導体産業は世界を席巻しアメリカとの貿易摩擦で衰退したが、日本は大企業の一部門として設計・製造・製品と垂直展開 -
Posted by ブクログ
圧倒的に読ませる文章力。
北京と台北の二つの故宮から、近代中国の悲哀と昨今の両岸関係事情をも包含したドラマを紡ぐその展開に思わず一気読みした。
故宮の文物が中国大陸を彷徨い、最後に台湾まで渡ったその経緯は数奇に思えるが、文化は即ち政治であり、正統性を与えるものとして権力の象徴であった、中国の長い歴史から見れば、その流浪の旅もまた歴史上に繰り返されてきた一コマに過ぎないのかもしれない。混沌としているから、それを生き抜いてきた文物がより眩く見えるのか。
辛亥革命から100周年の年に、二つの故宮展を東京国立博物館で統一させようとした平山郁夫の演出も味があり、日本が、その歴史的経緯からも主要な参画プレ -
Posted by ブクログ
【大日本帝国から戦後へと続く日本,分断された中国,そして出身地の台湾という東アジアの境界を行き来しながら,失われてしまった自分の帰属すべき祖国・故郷を探し求めてきた人々がタイワニーズなのである】(文中より引用)
国際情勢の荒波に揉まれながらも,日本・中国・台湾という国家の国境をひらりと越えて自らの思うところに従った,台湾と関係を持つ「タイワニーズ」たちの半生を記した作品。著者は,『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』等の台湾をテーマとした作品でも知られる野嶋剛。
国際社会の荒波をもろに被り続けてきた人々の一人ひとりのエピソードが中心となっているため,非常に読みやすいというのがまず高評 -
Posted by ブクログ
「パリは燃えているか」ならぬ、「香港は泣いているのか」とでも問いたくなるような騒乱に見舞われた近年の香港。西欧と中国の共存社会が急速に変わりつつあるように見えるそんな香港を解説する本。
2014年の雨傘運動から2019年の逃亡犯条例改正に始まる大規模なデモ。そこには単なる中国による締めつけと片付けられない歴史と香港人のメンタリティがあるらしい。
アヘン戦争による香港の誕生史から、ブルース・リーやジャッキー・チェンに代表される映画界、ヤオハンやナショナル炊飯器を通じた日本との関係。
そこは中国でも西欧でもない、国家とも言い難いような場所であり、香港人が住む地である。その今の香港を理解する -
Posted by ブクログ
朝日新聞の記者が書いた経営本なので、特段の深い分析はないが、十分な知識量と爽快な読後感。
日本の書籍では珍しい台湾の企業をその成り立ちから現在まで、技術の変遷と業界環境また日本の自転車産業との比較も網羅している。Giantというアジアでも有数なブランドを作り上げた企業とその創業者の理念を分りやすく伝えている。
Giantの成功は、技術へのこだわり、最初はアメリカのシュウィンOEMからスタートし、シュウィンが中国メーカーにもOEM先を広げると、自社ブランドの確立を目指す、そこではまだニッチ市場であった欧州のMTBをターゲットとし、素材はフルカーボンを先駆ける。中国企業が台頭してくると、より高級車 -
Posted by ブクログ
現代台湾文学選を読むにあたって、台湾について知ろうと思い読んだ本の二冊目。一冊目の歴史総合パートナーズでは、どちらかというと日本の統治時代から現代にかけての日台関係が中心だった印象だったが、今回の本では、八十年代の民主化以降の現代史がよく分かった、という読後感が大きい。
一番知ってよかったと思うのは、第1章「台湾は『国』なのか」。ずいぶん昔だが、池袋で働いていたときに、小学生の子が台湾から来た子をいじめていたときの理由に「だって日本は台湾を国だと認めてないもん」と言ったことがあった。当時は、それと目の前の台湾人をいじめるのとは関係ねぇだろと