野嶋剛のレビュー一覧
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「日本は二度台湾を捨てた」この言葉は日本の敗戦と、その後の台湾との断交〜中国との国交正常化について書籍や映画などでよく出てくる言葉だ。日本にとっては苦渋の選択だったかもしれないが、それ以上に台湾という国と、そこから巣立って日本に来て活躍した多くの政治家や文化人、作家などにも多くの影響を及ぼした。
日本と台湾の文化的な距離は非常に密接になっているなかで、日本に住んでいるタイワニーズの存在がぽっかりと空いているのをこの本を読み終わって改めて痛感した。
台湾への興味や関心の次のステップとして歴史と政治、そして二重国籍問題なども含む人間のアイデンティティーについて考えを巡らすことが出来る良作。 -
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ネタバレ「親日国(地域?)台湾」。これが多くの日本人が台湾について語る言葉である。しかし、著者が指摘するように、残念ながら多くの日本人は、台湾の歴史(特に日本との関係)を理解することなく、ただ「思考停止」しているというのが事実ではないだろうか。台湾を等身大の台湾として理解するための入門書。これが、本書の位置づけのようである。
台湾の歴史は複雑だがその分面白い。500年前まで南島語族の先住民族の居住地だったが、16世紀以降、福建系・客家系の南方系漢民族など新たな族群が渡来。「海洋アジア」と「大陸アジア」などが混在する多様性に富んだ民族構成になっている。日本統治50年の結果、日本文化に造詣が深い日本語話 -
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ネタバレ【221冊目】元朝日新聞台湾特派員だった筆者が書いた2016年発行の本。筆者がここ10年の台湾を書いたと言っているが、その10年がどのような過去に規定されていたのかという点も簡単にまとめてあるので、台湾(の特に政治)に関する入門書としては最適だと思う。
読んでいて痛烈に感じたのは、筆者の「かつて、日本においては、台湾について正面から論じることをはばかられる時代があった」という認識。これが文書の端々から感じられる。
興味深かった指摘の1点目は、今の台湾には大陸から台湾を守る盾が2つあるという話。
1つ目の盾は、現状維持を望む民意。しかし、アンケート結果から浮かび上がるのは、大陸中国の圧 -
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台湾の自転車メーカー、GIANTのルポ。
70年代から現在に至る、産業構造の変化と、それに立ち向かうGIANT創業者のストーリーが興味深い。
東アジア各国の自転車事情にも触れていて、自転車産業や文化のアウトラインをなぞるにもとっつきやすい内容だと感じた。
ただ、この産業に関する分析はやや表面的というか、数字を追っかけたに過ぎない感じがあり、GIANTやシマノの持つ、自転車への情熱と絡めるにはやや突っ込み不足な印象も受けた。著者は新聞記者なのだが、良くも悪くもなるほど、記者か、という感じ。物語を紡ぐよりも、客観的なデータ分析に重きが置かれるのかもしれない。
その部分はともかく、自転車に乗ってみ -
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台湾の小説を読んでいて、台湾について勉強しようと思い立ち、読んだ本の(たしか)3冊目。先に読んだ『台湾の本音』と同じ著者であることに、読んでから気がついた。7年後に書かれた『台湾の本音』の方が、台湾に関するトピックが問いで分かれていて、数倍読みやすくなっていると思う。話題が色々と拡散しているような印象で、本全体としてこういうことを説明してくれている本だというのが説明しにくい。
今まで勉強してきたことから、話題として新しかったのが、沖縄や金門島の話。どうしても国境を境界線にして、土地と土地の関係を考えてしまうので、シンプルに物理的に近いがために生まれる関係や近さを忘れがちだなと思った。
筆者は -
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友人の読書記録から興味をもったので。台湾人の筆者による半導体ファウンドリーのTSMCに関するビジネス書。歴史、業界、企業文化、経営方針などについて、当然、地政学についても、たっぷりと書かれている。台湾を守るものは軍事力だけではなく世界の要である半導体産業だ。繰り返し書かれていることに、TSMCのコアは技術集約型産業で比類なき競争力を獲得していること、そのエンジンが台湾人エンジニアのコストパフォーマンスにあることだ。台湾からみた世界情勢や日本・日本人についての記述も興味ぶかい。
技術に投資し人を鍛え競争に勝ち事業を育て報酬を払う、というサイクルを長期的に繰り返す、基本的だと思うが日本でそのよう