野嶋剛のレビュー一覧
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我々が日常的に使う台湾という国名は、正式には中華民国である。大陸中国が中華人民共和国、共和国を名乗るのに対して、中華民国は共和国ではない、民の国である。これは名付けの孫文が説明する様に、海外ではすでに民主化が進み、多くの国が共和政という名の下で民主政治を施行しているが、遅れていた自分たち(中華民国)が民の力でそれに性急に追いついていく事を信念とし、国名にその決意(民の国)を表したと言える。
本書の筆者は学生時代を中国(長春)、香港(返還前)、そして本書のメインである台湾で過ごした経験を活かして、今の(2023年時点)台湾が自分たちの国の在り方をどの様に考えているかについて説明する内容となっている。日本では多くの人が「台湾は中国からの独立を目指している」という認識を持っているだろう。また、一昔前なら(蒋介石時代)、国共内戦に敗れた国民党政府が、一時的に避難した先が台湾であり、今なお大陸中国を支配する共産党勢力を武力闘争によって、大陸から追い出す事を夢見ていると考える様な時代もあった。勿論、今の台湾でその様な極論を唱える人は、もうごく僅かであろう。台湾人の多くは「現状維持」を望んでいるし、民進党から国民党に政権が変われば、中国との関係性の改善も期待できるから、中国側の無駄なリスク(国民が傷ついたり、亡くなる事)を取る必要も無くなる。現在台湾に暮らす人々も、太平洋戦争の日本の支配経験を持つものが少なくなり、勿論中国(大陸側)との争った経験を持ち合わせるものも殆どいない。生まれながらにして台湾という「国」しか経験していないから、中国の脅威は感じながらも、元々独立した地域であるという認識が強いだろう。
また、民間レベルでは中国と台湾の間には多くの商取引が存在しており人の往来も制限付き、かつ完全に自由ではないものの可能だ。そして我々日本人から見ると、どちらも中国語を話している。私は決して中国の武力による台湾統合を望まないし、それが起これば、正に現在の国会(2026年時点)で論争になる様な「台湾有事」に発展しかねない事も理解している。そして台湾に暮らす多くの人々が「現状維持」を望んでいる事や、「独立」を前面に押し出せば、大陸との緊張が生じる事を理解している事も解る。台湾人の立場でものを言う事は何様と言われそうだが、きっと彼等からしても、日本やアメリカが台湾有事を煽るようなことをしている様に見えているのかもしれない。先日の高市総理の発言をきっかけとして、中国は周辺での大規模な軍事訓練を実施しているし、確かに習近平氏は在職中に何とか台湾を統一したいと考えているから、日本やアメリカの出方をうかがい、何かしら理由を付けたがっている様に思える。そうなると、我々周囲の人間が軽々しくものを言うこと自体が間違い、リスクを煽る結果になるのではないかと思う。
正に今、台湾の歴史を知り、台湾の国民を知り(私も筆者と同様に台湾自体は一つの国であると言う認識)、台湾の民意を少しでも知る事は、台湾から無駄な血を流させない事に繋がるし、本書を読むことでそれに少し近く事が出来るだろう。 -
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台湾の小説を読んでいて、台湾について勉強しようと思い立ち、読んだ本の(たしか)3冊目。先に読んだ『台湾の本音』と同じ著者であることに、読んでから気がついた。7年後に書かれた『台湾の本音』の方が、台湾に関するトピックが問いで分かれていて、数倍読みやすくなっていると思う。話題が色々と拡散しているような印象で、本全体としてこういうことを説明してくれている本だというのが説明しにくい。
今まで勉強してきたことから、話題として新しかったのが、沖縄や金門島の話。どうしても国境を境界線にして、土地と土地の関係を考えてしまうので、シンプルに物理的に近いがために生まれる関係や近さを忘れがちだなと思った。
筆者は、中国の歴史の中で出てくる「流求」は、その記述からは沖縄なのか台湾なのかの区別がつかないという話から、沖縄と台湾の歴史を重ね合わせていく。言われて見ると、日本の南進政策の中で、独自の文化や経済を営んでいたところで日本の支配下におかれたという意味では似た運命を辿っている沖縄と台湾である。その発想に至らなかったのも、地図上の地理的なイメージが、頭の中で想像できていないからなのだなと思う。
辺野古基地問題で、沖縄としてのアイデンティティが高まるプロセスが、台湾アイデンティティが高まるプロセスと重ね合わせて考えるところも、なるほどなと感じてしまった。
加えて、新しい話題だったのが金門島の話。現在どうなっているのか知らないが、中国から水道を引いてくる計画があったほどに近い場所であった。台湾というと台湾のあの島を思い浮かべるが、媽祖島と金門島も台湾の島で、どういった歴史をもって、どんな生活をしているのかは、これまであまり考えたことがなかった。金門が国共内戦の最前線であったということも初めて知った次第である
全般的に、新しく知った情報にへえという感じで、感想を述べられるほどに噛み砕けていないというのが正直なところである。第1章が馬英九がどうして台湾で不人気なのかという問いから始まるところからしても、極めて同時代的な文脈に乗っかった本という印象が大きい。そういうところも、ピンと来づらい理由の一つのような気がする。
けれども逆に言えば、それだけ政治的な変化というのは、刻一刻と変化していくもので、追っていかないと分からなくなるものなのでもあるのだと思う。コロナ前なので当然なのにも関わらず、コロナ対応の話がない台湾の話は、すでに少し違和感を感じるし、まだ、東日本大震災への義援金の話がものすごく取り上げられているのも、すでに隔世の感がある。
こういった断片的な部分を、つないでいかないとダメだよなと思う。 -
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友人の読書記録から興味をもったので。台湾人の筆者による半導体ファウンドリーのTSMCに関するビジネス書。歴史、業界、企業文化、経営方針などについて、当然、地政学についても、たっぷりと書かれている。台湾を守るものは軍事力だけではなく世界の要である半導体産業だ。繰り返し書かれていることに、TSMCのコアは技術集約型産業で比類なき競争力を獲得していること、そのエンジンが台湾人エンジニアのコストパフォーマンスにあることだ。台湾からみた世界情勢や日本・日本人についての記述も興味ぶかい。
技術に投資し人を鍛え競争に勝ち事業を育て報酬を払う、というサイクルを長期的に繰り返す、基本的だと思うが日本でそのような腰を据えた経営を実行できている会社がどれぐらいあるか?アイデア+プレゼンで一発当てたいみたいなのが多すぎて中身がないように見えることが多い。 -
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ネタバレ台湾は世襲議員が少ない。むしろ学歴が魅力を出せる。学歴詐称が発覚しやすい。
台湾は台湾、と考えている人が多い。
国民党は中国のエージェントと思われやすい。
投票によって変えられるという信仰が強い。
コロナ対応の早さは,SARS対応の失敗から生まれた。
下関条約で日本が支配するとき2年間の猶予期間を与えた。0.2%が本土に行った。
台湾には統一王朝がなかったが、韓国には李氏王朝があった。台湾統治は50年で、韓国は30年。成果が見えない。「犬が去って豚が来た」国民党統治がひどかった。
2.28事件=国民党による知識層の弾圧。
半数以上が台湾人というアイデンティティをもっている。中国に働きに行くことに抵抗はないが統一されるべきとは思わない。
すでに台湾が本土から離れて70年以上経っている。同胞とは思っていない。
第一世代と第二世代は日本の支配を知っている。その後乗せ代は日本を好きではない。最近の世代は日本文化を浴びて日本びいき。
日本人とわかると5割くらい優しくなる。
アメリカは中国と国交を結ぶとき、台湾関係法を作った。日本は今更作れない。中国が力をつけたため。
TSMCは受託生産に徹し、自社ブランドを作らなかった。垂直統合ではなく水平分業の時代で活躍する。もはや単なる下請けではない。
台湾は、アメリカとの関係で日本と同じ。
今も台湾は内戦状態=台湾有事中。
独立状態派が大半。 -
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ネタバレ著者は朝日出身なのにかなりまともで台湾びいきなのを割り引いてもニュートラルな視点で今の台湾を描いているように感じた。
読んで良かった点:
・民主化への歴史的な経緯
・独立派というのは実は少数派で実質的な独立を達成している現状の維持が多数派。
・中国との関係は併合は絶対嫌だが対立も望まない
・意外とアメリカへの信頼感は低め
・国民性はブームに乗りやすい
・中国人は言葉が通じるが話が合わない、日本人は言葉が通じないが話が合う
・親日ハンバーガー構造
・日本の植民地としての韓国との違い、50年とかそれ以前の民族体制の希薄さ
作品紹介・あらすじ
コロナ前は200万人超の日本人が訪れ、観光地として人気が高い台湾。「台湾有事」という言葉が紙面を賑わすこともあり、日本の関心は高くなっている。しかし、私たちは台湾をどれほど知っているだろうか。中国と台湾の関係は? 首都はどこにある? 国連に非加盟なのはなぜ? 隣の島でありながら、私たちはその歴史や事情をあまり知らない。本書では、6つの問いからそんな台湾という〝国〟の姿を詳らかにしていく。 -
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【278冊目】元朝日新聞記者の著者による香港の歴史と現状の解説書。事情により通読するのに時間がかかってしまったので前半部分をあまり覚えていないのだけど、香港初心者にとっては読みやすかった。
前半には、香港民主化の女神と呼ばれる周庭さん含む、民主化活動家への直接インタビューがあり、これが興味深かった。活動家にもそれぞれアプローチの違いがあり、さらにそうした違いが時と共に変化していく様も重要な描写。きっと後から歴史を振り返ったときに、彼らの活動は一色の絵筆でしか描かれないだろうが、実際には様々な色の重ね塗りであることが分かる。
後半がより強く印象に残っているのだけど、大陸における香港の立ち位置が今とは全然違ったという事実は若い世代は勉強の必要がありそう。
特に第八章、中国にとっての香港で振り返る歴史のいくつかは、今後大陸と香港の関係を考える上で役立ちそうなのでフレーズメモにまとめておく。 -
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今年は台湾で民進党への政権交代かつ初の女性総統誕生。連日のニュースが気になり、本書と、祭英文と温又柔の著書を読みました。祭英文の著書からは、国内の産業や観光資源にもっと目を向けた政策を重視したい意向を感じ、温又柔の著書からはやはり中国人ではなく台湾人のアイデンティティを感じました。当人は、2年以内に台湾の入国がないことが原因で4年前の総統選挙で選挙権がなかったものの、中国大陸で台湾の半導体を売る台商である叔父と父親が大陸との関係を重視する国民党を支持していることなどが描かれていました。本書を読み、2つの著者を総括的に理解する手助けになりました。
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北京と台北にある故宮。その歴史は蒋介石の意志によるところが大きそうです。中華思想を体現する宝物として、文化資産が北京から出て、南京そして中国各地を転々とし、国民党軍の台湾への退却に伴い、船に載せ海峡を越えて台湾に運び込まれる!日本軍、中共軍との戦いの中で、良くあれだけの資産を損傷することなく、運び込んだという執念に驚きです。蒋介石にとっては三種の神器のようなものだったように思います。そしてこの2つの故宮の合体が今では大陸・台湾の和解という政治的な意味合いを持って語られることに歴史の皮肉を思います。元の黄公望という書家の風景画「富春山居図」という長大な絵巻の作品が焼け残って台北と杭州の博物館に分かれており2011年の文化交流として杭州から台北に片方が運ばれたというのは感動的な話です。しかし中華思想は元々台湾の本省人にとっては迷惑なものでしかないのも理解できました。人口700万人の島に200万人の本省人が49年に渡ってきたということは、考えてみれば恐ろしいことです。
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自転車と言えばやっぱりヨーロッパのブランドなわけで、台湾ブランドのGIANTではまだブランド力がないかなと思っていたけれど、性能を追求して自転車業界のてっぺんをとっていたんですね。
ロードレーサーの美しさはホリゾンタルフレームにあるけれど、性能的に優れているスローピングを採用して頭角を表してきたっていうところがなるほど革新的な企業です。
台湾の企業と言えば、最近は鴻海なんですが、元々台湾はOEMが盛んな場所だったそうで、GIANTもはじめはOEMから初めてノウハウを蓄積しながらブランドを確立したそうな。
高価な自転車を買うときって、性能より好みを重視するからGIANTが性能を超えたブランド力を持てるかどうかでこれからのポジションが決まってきますね。 -
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台湾のジャイアントができて、日本の自転車企業ができなかったことはなにか。中国市場で成功できたこと、ツール・ド・フランスで活躍して世界中に高級ブランドとしての知名度を上げたこと、スポーツ自転車の文化を広めて自ら市場を作り出したこと。日本メーカーは部品メーカーのシマノをのぞいて死屍累々。スポーツバイク市場が日本で育たなかったのは、道路事情もあるとは思うが、ガラパゴス的ママチャリ市場に甘えた結果という本書の結論もまた一理あるように思う。現在、家電で起こっていることの先取りが自転車市場で起こっていたという指摘は頷ける。読み心地は軽く、内容としてもわかりやすい。
ただ、自転車乗りとしては、GIANTのスポーツ自転車の特徴などにもっと突っこんだ記述を期待していたので、そこらへんは物足りなかった。GIANTはなにより、「高性能で安い」。徹底した合理化や、規模の追究がそれを実現しているのだと思う。そのかわり、サイズが豊富でなく、スペック重視でなくカラダにあわせて買おうと思うとうまくいかなくなるというイメージ。そうした自転車がなぜ生まれるのか、会社の体質・姿勢などからもうすこし垣間見えると良かった。
もうひとつ、GIANT製の自転車と言っても、フレーム以外の中心部品はほぼシマノ製。「サムスンの中は日本部品」みたいなところと似ているところがある。そうした類似にも注意を払ってもらうと、さらに深みが増した気がする。