安田夏菜のレビュー一覧
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むこう岸と言うタイトルと中身を読んで、「橋のない川」を思い出してしまった。あちらは部落差別のお話だが、あちら岸こちら岸は、深くて大きな川に阻まれていて、渡れる橋もない状態が、主人公たちの苦しすぎる生活を物語ってる気がする。
普通なら混じることもなさそうな、私立中学校からの転校生和真と、生活保護世帯で育つ樹希が、むこう岸とこちら岸の川を越えようとする、胸の熱くなるお話。もがいて、手足をばたつかせ、なんとか岸に辿り着こうとする、切ないお話。
生活保護法
第一章第二条
全ての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。
主人公の一人、和真が、美しいと感じた法律の条項だ。
「制度というものは、知らなければ確実に損をするってことだね」これも和真の言葉だ。 -
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典型的な遭難案件で負のスパイラルに落ちていく3人、一人は登山部に在籍していた経験者ですが、地図読みが苦手で4ヶ月で退部した美玖。あとの二人は未経験の同級生、ロープウエィで登山口に行きそこから整備された登山道を800m登れば山頂に着くとゆう山で行程的には上り3時間、下り2時間半。
予定より早く山頂に着いた3人は寄り道しようと反対側に見えた津ケ原温泉を目指して下山するなか道に迷い遭難する。
余裕をもって計画通りピストンしてたら問題なく下山できてたのにって感じです。
登山では「早出、早終い」も鉄則なんですよね。夏場は午後になるとガスが上がってきて天候か崩れて雷になることもあるから、日の出前の涼しいうちから登りだして午前中に下山してくることもよくあるんです。それでも行動時間はたっぷり8時間とれるのでゆったりできたりです。
予定にないルートに行くときもスマホに地図DLしておけば圏外でも位置がわかるけどそれを忘れていたとかはかなり痛い。けど、ここらまでは私も経験してます。
上りはどこから登っても頂上は目指せて迷いにくいのですが、降りる場合は分岐を間違えたらあみだくじのようにランダムに予定外のところにでてしまう。これが谷筋だと滑落や登り返せない場所にでてしまうので、迷ったら谷筋に下りず、尾根筋で上を目指すのが鉄則なんですよね。
予定外の行動で体力奪われて救助されるまでの6日間、必死に命をつないだ心境がリアルに伝わってきました。
作中に出てくる鎌月岳がどこにあるのかググってみたのですが架空の山のようでしたけど・・
山始める前に私も遭難の事例をSNSや映画でたくさん観て学習してたので慎重なんですよね。この作品、ヤング向けだけど山を始める前に是非読んで欲しい良書です。
ちなみに下の山岳遭難ものも必須ですね。
「八甲田山」「岳」「剱岳 点の記」「神々の山嶺」
「春を背負って」「聖職の碑」 -
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面白かった〜!山岳遭難の誰にでも起こりうるおそろしいお話、私はこういう事態が怖すぎて事前に家族に渡したルート以外ビタイチ歩かない、たまにネットの登山ログ読んでるとその時の気分で破線ルートに変更する人とかいてひえ〜〜〜と思う。でもトガちゃんが言ってたとおりなにがなんでも生き残る方がえらい!ネットの遭難批判なんてクソ食らえだ!死にたくて山に登るやつなんていね〜んだから!山岳救助隊も民間の捜索隊もみ〜んな山が大好きで山が好きなまま生きて帰ってほしい、そんでまた山に来てほしいって思ってるに決まってる!
得られる教訓としては
・迷ったら登れ
・沢は絶対に降るな
・ヘッデンは日帰りでも持ってく
・ヘッデンの電池を確認する
・エマージェンシーシートを持ってく
・紙地図コンパスを持ってく
・登山計画外の道に行かない
・リーダーが初心者の甘い提案に絆されるな
・リーダーの指示に従う
・全員がgps地図をダウンロードする
・モバイルバッテリーとコードを事前に確認する
とか?多いな…
あと笛とかあったらよかった?
最後に答え合わせの地形図とかがあったらよかったな。実は普通に歩けば1、2時間のところをぐるぐる回ってたってオチありそう。
昔高校生数人でまさにこの小説と同じような登山経験者一名と初心者数人が1週間弱遭難して大きく報道されたことがあったよね、報道がほんとうに胸糞悪かった、高校生なんて生き残っただけで100点満点よ -
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ネタバレ衝撃がもうね。
「生活保護受けてるやつは、生活保護って書いたTシャツ着ればいいんじゃね?」
それに「そうだね」と返し、自分の体操服に油性ペンで「生活保護」、背中側に「ありがとう」と書きなぐり着用する樹希。
フィクションだとわかってても心が抉られます。
樹希ほどインパクトのあるリアクションができる子はなかなかいないでしょうが、こういう言葉を簡単に吐いている性根腐れ少年少女はザラにいる。そしてそういう子たちはそれなりのオヤに育てられている。
斎藤くんの母親の感じもすごくリアルで。樹希をあんな目に合わせた元凶ではある。普通は、拾ったカード持つ意味や誰のものかなんて子どもには言わない。でも、アベルをかばう正義感も持っている。100%のクズってほんとはなかなかいないんですよね。
そんなオヤも子も樹希にとっては「むこう岸」。
そして脳内実写化のび太くんこと山之内くんだって「むこう岸」。
貧富の差がある以上、両者を隔てる川は流れているわけで、生活保護という制度があろうがなかろうが、やはり彼らは「むこう」と「こっち」なんでしょう。
ただ、この物語の何が刺さるって、やっぱり「生活保護」っていう制度の「概念」について。
本来はエマちゃん叔父さんの言っていることが軸であり、そういう性質の制度なんですよ。
条文を知って、山之内くんが感じた美しさを持つ制度。
なのに叔父さんの解説を読んだときに少なからずハッとした私も、生活保護受給者を「ナマポ」と呼ぶ匿名ネット民たちの概念に染まっていたんだろうなと引き攣りました。「施し」のにおいがするものだと思っていたんでしょうね。
ただ、これは「生活保護」に限らずあらゆることに言えちゃうことなんでしょうが、同等以上の罪が、その枠に入りながら不正をはたらく者たちにも多分にあるのではないかなと。
やはり人の目はそこに注視されるもので。
制度を利用しているはずなのに高級車に乗り、毎日パチンコに通っている人。
制度を利用できず、ギリギリの暮らしをしている家庭の子どもに、どう見ても不正受給をしている家庭の子どもが「おまえ服も頭もいつも汚くて臭いぞ!近寄るな!菌がうつる!」とイジメる。
受給者のイメージを彼らが背負っちゃってるところもあるんですよね。
かといってケースワーカーさんたちの過酷さはもう周知のとおりで、無理に不正受給を減らそうとすることが、本当に必要な人弾いてしまったりもする。
この制度の実態が100%その性質通りになることなんて多分なくて。
それでもやっぱり支える側も支えられる側もその美しさを持つ努力はしていかなきゃだよなあと考えさせられた1冊でした。 -
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令和四年度中学生課題図書。ミックスルーツの中学生が繰り広げる、中学校理科室でのバイオロジカルな日々。自分のルーツや周りの人種差別意識を考え、なかなか自分を出せない「藤堂ミハイル」が「蟲」に詳しい転校生「山口アビゲイル葉花」や科学電脳班の仲間たちと関わり、蟲のお世話をする中で、自分や周りの人について考えていく。
世界には78億人の人がおり、いくつもの国に分かれて戦っている。日本には1億人が、クラスには35人がいるが、意見が違って揉めたりする。しかし、細胞は37兆個あるけど、一つ残らず私のために24時間一致団結して働いている。中学2年生くらいの成長期だと2年くらいで全身のすべての細胞が入れ替わるが、別の人間にはならない。それは自分のことを愛してくれてるから。
葉花の「死んでも新しい細胞に私の情報を伝えてずっと私が私のままでいられるように力を合わせてくれているの。こんなに必死に守ってもらっているのに自分が泣いている場合じゃない。」という考え方が力強く素敵だと思った。
14本足でせわしなく決まるワラジムシ。
下から上にまぶたを閉じるカナヘビ。
ぴょんぴょん跳ねるもふもふのハエトリグモ。
心臓を高速で拍動させているミジンコ。
これからも彼らは自分たちで考え、協力し、新しいことに挑戦しながら「科学」の本質を探求していくだろう。"犬が吠え、風が伝わるそれでもキャラバンは進む。(他人の言うことにとらわれるな。犬が吠えても風が吹いても、ただ前を見て進め。)" -
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ネタバレ令和4年度課題図書、中学校の部。
面白かった!
ミックスルーツの彼らの悩みというか、
「なんとなく、びーっと線を引かれる」感じをうまく表現している。
蟲、昆虫を葉奈が散々語ってくれるんだけれど、
生き物の分類である
「門 - 綱 - 目 - 科 - 種」についてもきちんと語られてきて、それが最後の最後、「人類はひとつの種」というワードに結びつく。これがまあ、ミックスルーツに悩む登場人物たちの気持ちと重なり、イヤというほど効いてくるという手法。うますぎる。
感想文も書きやすそうだけれど、
なにより面白かったのでおすすめしたい作品。
これは小学校にも入れたい。
こじらせ系ハーフのミハイル、
最後かっこよかったぞー!すっきり! -
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そろそろ小学校卒業の6年生向けの本を探して読んでいる本の中の一冊。
日本人の父とロシア人の母を持つ藤堂ミハイルは、日本育ちながらもいかにも白人系の外見と名前から勝手なイメージを持たれたり、不要な注目を集めてきた。中学2年生の今では、目立たず波紋をたてずに地味に生きていこうとしている。入っている部活も「科学部電脳班」と名前だけは格好いいが、特に目的もなくのんびり過ごすメンバーの集まりだ。
そんなミハイルのクラスに新学期の転入生山口アビゲイル葉奈が入ってくる。アメリカ人父と日本人母の間に生まれて、ミルクコーヒー色の肌と、カーリーヘアと、縦にも横にも大きな体を持つが、日本生まれ日本育ち、英語は話せないし好きなものはお茶漬けでスポーツは全くダメ。最初の挨拶で「好きなものは『蟲』です!!」と言った葉奈は初日から完全に周囲から浮いてしまう。昆虫の「虫」ではない、虫三つの『蟲』。爬虫類、両生類、甲殻類も含む小さな生き物全般のこと。
葉奈は学校に生物部がないと知るとその立ち上げを訴え、ミハイルたちの「科学部」の一部の「科学部生物班」として1人で活動することになった。
葉奈が学校にせっせと持ち込むカナヘビやワラジムシ、ハエトリグモは、全生徒の悲鳴を呼び、理科室は魔界扱い。ミハイル達「科学部電脳班」も変な目で見られてしまう!?
周りが騒げば騒ぐほど自分のやりたいことを押し通す葉奈は、浮いているどころかほとんどいじめの対象になっている。
最初は避けていた「科学部電脳班」のメンバーだが、キラキラした眼で蟲たちへの情熱を語る葉奈の姿に興味を持つようになる。
しかし多くの蟲を持ち込む1人だけの部活動には、生徒や親たちからの苦情が相次ぐ。そして学校から科学部存続の条件として「『科学部』だと言うなら、科学的な取り組みをすること」と言われてしまう。科学部「電脳班」は、「生物班」(葉奈だけ)に協力して生物研究のテーマを決め、研究成果をレポート提出することになった!
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日本と別の国の両親を持つが日本育ちで日本の考えを持つのに「〇〇が得意っぽい」と決めつけられたり、自分の考えや振る舞いをいちいち「お前は普通の日本人ぽいよね」と言われたりすることへの疎外感。
中学生の部活動の考え方。「生物にエサをやるだけなら小学生の係。科学とは、物事の本質についてこうではないかと考え、その考えが正しいかどうかテータや論理を使って検証する行為のことです。自分たちでできますか」と言われて「自分たちはもうガキじゃないんで、やります!」という意地。
哲学的なややこしいロシアのことわざや、生物科学の豆知識も面白かったです。 -
Posted by ブクログ
面白かった!子供向きというよりは、ローティーンを中心に、大人も楽しめる作品です。字が大きくて、老眼フレンドリーではある。悩める中学生、藤堂ミハイルのクラスと科学部に蟲屋の転校生、山口アビゲイル葉奈がはいってくることによって、悩ましくもキラキラしい中学生活が紡がれる。ミヤマカミキリ、カナヘビ、ワラジムシ、ハエトリグモ、ボウフラ、アカスジキンカメムシ、ミジンコ。だらだらとコンピューターの前で時間を潰していた科学部に生物班をつくり、活動をみとめてもらうために、研究発表することになる。
この山口さんにとっても共感を覚えますねぇ。とても素晴らしい。
刺さったところはといいますと
私の大好きなジャンピングスパイダーを生物班で飼育しはじめて、電脳班の生徒が見にきた時
>”奈々花が平尾先輩からルーペをひったくった。
「相手はクモですよ。そんなものキモいに決まっ・・・、えっ?」
目を見はっている。
「なにこれ・・・。かわいい・・・」”
可愛さとか、可愛いと感じるか感じないとかって、
実は、どうってない理由やったりしたり、
外部からの刷り込みや、
同調圧力だったりするもんですし、
最近よくいわれるのは、親が異常に昆虫を差別する子供は
昆虫をみようともせずに、嫌う傾向にある、というのがよく言われますな。
最近、自然科学系の蟲屋なんかが、よく両親や近しい大人が子供の興味の対象を問答無用で否定しないようにという、啓発を行っているのを目にします。
あとは、たくさんでてくるミハイルのロシアのことわざが面白かった。
”猫はいつもバター祭りなわけではない。”
人間万事塞翁が馬、
バターでヒャッハーな猫も、明日はどうなるか、、
ていうか、バター祭りて、、(あはは)
ちx〜る祭りみたいな感じか(あはは)
みんな悩んで大きくなるんですわ。
そして、大人になる前に、
いろんな耐性を身につけるわけですな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおはなしSDGsというシリーズで、17目標のうちのひとつめ「貧困をなくそう」を題材に描かれたストーリー。
父は失踪し、体を壊している母が介護のパートで小学6年生の陸と3年生の美波を養っています。
物語は陸が郵便受けから給食費滞納のお知らせを見つけるところから始まりました。つぶやくことばは「またかよ」。今日食べた給食が思い浮かび「ただ食い」という言葉が頭をよぎり、うしろめたくなる陸。
そこを皮切りに、払えない学童のお金、3年生になるのに絵本しか読めない妹、3日間変えないバスタブの水、少なく栄養の偏った晩御飯のおかずなどなど、小学生の子どもにはキツい現実が次々と明かされます。
買い物の帰りに、よその子どもがレストランで誕生日を祝ってもらうのを無言で見つめる妹。美波の誕生日はあさってなんです。最初、葛藤を抱える兄と違って、妹はまだ家庭の経済状況は理解していないのかなと思って読んでいましたが、こういう所からいろいろ感じ取っていることがわかります。それを察している陸は、予算の500円と努力で可能な限り豪華な晩御飯を用意します。喜ぶ美波ですが、せっかくのごちそうをほとんど食べることができません。原因は虫歯。歯医者に行くのにも治療費がかかる。日々晩御飯用の500円しかないのにどうするの?
という流れ。
挿絵が多めで、文体もストーリーもとても読みやすいため、暮らしの厳しさやつらい現実は理解しやすいと思います。
ただ、外国の貧困と飢餓にあえぐ子どもを見て「うちは貧乏じゃない」という妹に兄が抱く複雑な思い。「みんながアイスクリームをなめているのに自分だけ胃薬をなめている」ということばの持つ意味。挿絵と同じように挿入されているグラフから得られる情報。物語の希望であり、SDGsシリーズとしてのこの本のテーマ「貧困家庭を支えるための制度」。これらに関してはある程度の読解と共感と知識が必要かなと感じます。