【感想・ネタバレ】むこう岸のレビュー

あらすじ

【対象:小学校高学年以上】和真は有名進学校で落ちこぼれ、中三で公立中学に転校した。小五のときに父を亡くした樹希は、母と妹と三人、生活保護を受けて暮らしている。『カフェ・居場所』で顔を合わせながら、互いが互いの環境を理解できないものとして疎ましく思うふたりだったが、「貧しさゆえに機会を奪われる」ことの不条理に、できることを模索していく。立ちはだかるのは「貧困」という壁。中学生にも、為す術はある!

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ネタバレ

Audibleにて。
これも一つのタワマン文学と言えるのだろうか?
生活保護受給家庭で母親と妹の世話に忙殺され将来に希望を持てない女の子。
熾烈な中学受験を突破し、難関私立中学に入学したものの、ついていけずに転校した男の子。
まったく環境の異なる二人が、ぶつかり合いながらもお互いの悩みを理解し、尊重しあっていく様が心に沁みる。

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2025年09月23日

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ネタバレ

登場人物皆それぞれ思い出したくないような過去を持っていてそれが自分以外に当てはまってしまってたから敵対視していたため、なかなかお互い理解し合えなくてもどかしかった。だけど、居場所が共通してたおかげでだんだんと互いのことを知ろうとしていた様子は今までの勘違いや偏見を見直すきっかけになっていたのでお互いのためになったなと思った。人それぞれ悩みがあってそれを当の本人ではない他者が理解するのは難しい。だけど問題を理解しようとする姿勢が一番大切なんだなと考えさせられる作品だった。読みやすさも込んで素晴らしい小説だと思った。

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2025年07月13日

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フォロワーさんの感想を読んで、読みたいと思った本。読んでいくうち、この話、知ってる!となったので、調べてみたら何のことはない、ドラマで見てた

ヤングケアラー、生活保護受給家庭、受験の親ハラ?、外国人‥。一冊に社会問題を詰め込んでいる。が、二人の目線で書いているため、わかりやすかった。

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2025年07月03日

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第59回日本児童文学者協会賞
貧困ジャーナリズム大賞2019特別賞

厳しい貧困生活の中にも希望が感じられる作品だった。
生活保護に限らず、複雑でわかりにくい制度は多すぎる。
知識がないことで損をするのが当たり前なことには納得がいかない。
ヤングケアラーや学べる環境がなく学力が低い人にはより不利なのに、頼りになるはずのケースワーカーは不勉強で多忙で真摯な対応をしてくれない。
憤りを感じる話だったけど、樹希が生活保護や支援を「施しではなく、社会からの投資」と知るところがとてもよかった。
また、中学生の和真が「生活保護は権利なんだ」と樹希に言ってあげたのにも胸が熱くなった。
和真の母親が生活保護について興味をもつ息子を肯定したところは泣けたけど、自分の息子が貧困の家庭の子と付き合うことは受け入れられないところがリアルで複雑な気持ちになった。
胸に刺さる、人にもお勧めしたい作品。
星4.5

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2025年03月02日

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超難関校で挫折した中学生の男の子と、ヤングケアラーの女の子の話。
昨年NHKでドラマ化し、そのドラマが最近とある賞を受賞したそうで、読んでみた。
とても、とてもよかった。静かで強い勇気をもらえた気がする。

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2025年02月20日

購入済み

美しい国

新自由主義が跋扈し、自己責任という言葉が国民の首を絞め始めて久しい。
しかし、そろそろ限界か
格差が分断を生み、今後は益々の治安悪化は否めない。
苦難を抱える人が暮らしやすい社会は誰もが暮らしやすい。
自分の分け前だけに執着する数%の人間から舵を取り戻すべきだ。

#泣ける #感動する #深い

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2024年11月03日

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生きる力をもらえる本だと思う。
私も行政の仕事をしていたので、制度を利用するのは難しいし、知らないと損するというのは本当にそうだとわかる。

助けが必要な人にどう届けるか、どうやったら適切に助けを求めることができるのか、いろいろと考えさせられるのに、読みやすく続きが気になるとてもよい本だと思う。

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2024年09月05日

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2024/08/21
むこうぎしが何をさすのか。
読んでみて、想像したこともない人たちの立場の人が実際にいる、ってこと。
中学受験して私立に行った人には学習がわからず、教えてもらえもしない、学びたいのに学べない人のきもちはわからない。その逆も。
しかし、話すことで関わることでその人の立場も知るようになる。知ることで考えるようになる。知りもしない世界ではなくなる。
知ることの大切さを感じたように思う。

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2024年08月21日

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初めて安田作品に触れた
きっかけはNHKのドラマ
誰にでもむこう岸はあるような気がする
ドラマも素晴らしかったが、小説も素晴らしかった

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2024年05月15日

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生活保護制度に対する現状や課題を問題提起してくれた本
二人の中学生男女(山之内和真と佐野端希)が軸となって、親からの学歴に対する過度な期待とプレッシャー、ヤングケアラー問題、家庭内暴力、外国人に対する日本人の偏見、社会的弱者への周囲の対応等とても考えさせられる内容でした。
感情移入したわけではありませんが、読んでいて自然と涙が出ました。

文中にもありましたが、様々な制度というものは非常に分かりにくく、それを必要としている人達が理解困難なものが多い。しかし損をしたくなかったら、ちゃんと理解して利用しないといけないという話は妙に腑に落ちました。

扱っている内容は少し重いものですが、非常に読みやすく一気読みさせられたのは、ひとえに筆者の表現力の高さがなせる技だと思います。
大満足の一冊でした。

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2024年05月14日

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ネタバレ

経済的には裕福な家庭ではあるが勉強を親から強要され家庭不和寸前の和真と、父親が不慮の事故で亡くなり母親も精神的な病気のため生活保護を受けながら幼い妹を抱えヤングケアラーと言う状況に追い込まれ未来に希望を持てなくなっている樹希。中学3年生の2人の邂逅が織りなす希望の物語。国や市が制定したものを知っている人がどれだけいるのか、実際自分が本当にその状況にならないとそういう制定された物があると言うこと自体知らないことが多いのではないか。多分にそういう実態を突きつけられたような物語でした。

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2024年05月11日

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児童文学ではあるが、生活保護やヤングケアラー、人種差別、毒親問題などをうまくまとめている。読後感は爽やか。
中高生に薦めたい本。

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2023年07月01日

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ネタバレ

一気に読んだ。ひりつくような現実に子供の頃からさらされて育った樹希には金持ちで私立中から転校してきた和真の甘ちゃんさが鼻につく。和真も、生活保護を受けている家庭の子という樹希に対して恐れや苦手意識があり、避けていた。しかし、お互いの事を少しづつ知るようになって、相手の事を理解しようとし始める。
生活保護というキーワードだけで中学生にはハードルが高い。大人だって知らない事だらけだ。
知ることで身を守ることが出来る。それが知れるだけでこの本のメッセージの半分は伝わっていると思う。生きるために必要な事をやるだけなんだよね。

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2023年06月25日

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ネタバレ

オビにある通りイッキ読み

だいぶ心を動かされた

自分が登場人物のどの立ち位置にもなり得る
ような読み方ができる

誰にとっても
なくせない優越感とか優位性とか
人間社会で生きていく限りゼロにはできないような感情
社会のいろんな人の立場から見た風景

主人公が中学生であるところで
まだ、希望を持ててよかった

法律の美しさを見る山之内がすばらしい
彼は法律家になるだろうと思いました
(知らんけど)

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2023年06月22日

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『むこう岸』というタイトルに惹かれて手に取った本。
難関私立中で落ちこぼれ公立中に転向してきた和真と、生活保護を受けながら母と妹の三人で暮らす樹希が、出会うことからこの物語は始まる。

広くて深い川の向こう側とこちら側。
「貧しい生活レベルの人」「恵まれた家で育ってきたくせに」と反発する二人がどうなっていくのかとハラハラしながらページをめくった。
二人を繋げる「カフェ・居場所」があって良かったと思う。世話焼きなマスターがいて、先生と呼んでくれるアベルくんにも出会えた。樹希にとっても唯一安らげる居場所がここ。穏やかに時間が流れる空間にいると、人は落ち着いた気持ちになり心を開いていくように思う。

「生活保護家庭の子は、大学に行っちゃいけないの!」不条理な制度に納得がいかず自分で調べ始めた和真を応援したくなった。
「生活保護制度には例外や裏技がある、理解しづらい制度も知らなければ損をする、生活保護法は無差別平等」だと和真から教えて貰い、樹希は家族と将来の自分のために動き始める。

生活保護だけでなく、ヤングケアラー、いじめ、人種差別、格差などの問題を抱える本作だが、児童書なのでわかりやすい。光が見える終わり方にも好感が持てた。
「生活保護法 第一章 第二条『すべての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる』」これを読んだとき、ぼくは人間を信じてもいい気がしたんだ。
和真の言葉が心に響いた。

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2023年04月08日

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生活保護、貧困、ヤングケアラー、現代の色々な問題を詰め込んだ児童文学。
生活保護を受けている側がなぜ、そういう状況になったのかもしっかりと描写されていて分かりやすい。

貧困のループって身近にいないと分からないし考えないですよね。
そういう人を見下してはいけない、いつも娘に言い聞かせています。
弱き人を助ける、主人公のかずまくんは立派です。
勉強が出来ることは素晴らしい、でも弱き人に手を差し伸べられるそんな人はもっと素晴らしいです。

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2023年03月08日

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生活保護を受けて暮らす樹希の家庭環境・苦悩を知り、生活保護についての見方が変わった。

こどもの力だけでは貧困生活から抜け出すことも大学に行く事も夢を抱くことも容易ではない。そんな不自由な生活の状況下でも、クラスメイトからは、「生活保護って書いたTシャツ着ればいいんじゃね?みんなに養ってもらってるんだから、それくらいしないと不公平じゃん」と心無い言葉を浴びせられたりする。

生活レベル・学歴・容姿・出身地など似た者同士に対しては仲間意識を持ち、相反する者には敵対意識を持つ。そういう線引きを無意識に誰もがした事があると思う。心当たりのある人は、樹希と和真の言葉が心に刺ささったり、胸を締め付けたりすると思う。
特に印象に残った言葉は、
・哀れんでいるものは、自分の放つ匂いに気づかない。哀れまれているのもだけが、その匂いに気づくのだ。
・みんな、高い月謝の受験塾に通わせてもらって、夜の弁当なんか作ってもらって、塾が終わると車で迎えに来てもらって、合格してバンザイバンザイと喜ばれて、また私立中学の高い月謝を払ってもらえるんだろ?ーー中略ーーおもしろくないんだ。ものすごくお腹がすいている横で、美味しそうなパンをまずそうに食べてるようなやつらが。

当たり前と思っている事がそうではない事を改めて痛感させられた。全体を通してとても考えさせられる一冊だった。

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2022年12月02日

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YAコーナーで見つけた一冊。

とても読み易くて、2人の中学生の気持ちが溢れてそのまま文章になっている。
穢れなき2人の思いは、ひしひしと伝わってきて思いのほか感動し、涙する。

私立中学へ入学したものの、そこから落ちこぼれて中学3年で公立中学へ転校した山之内和真。
父を亡くし、鬱病で働けない母と3歳の妹の世話をして生活保護を受けている佐野樹希。

2人が唯一、共有できる「カフェ・居場所」
そこで得られるのは自由な時間だけではなくて、お互いのことや自分のことを見つめ直すとても大切なものだった。

生活保護法について必要にならなければわからないことも知ることができた。
だが、みんなが知っているわけではなく深く追究しないと知らずに苦労している人もいるだろうと思った。

中学生から読めるので、ぜひ多くの人に読んでほしい本である。

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2022年08月19日

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児童書とは思えない濃い内容だった。無知や分断って、とてもこわい。子は親を選べないし、逆もまた然り。気がつかないだけで、「むこう岸」は自分の周りにもたくさんあるのかもしれない。

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2022年08月13日

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中学生なのに偉いなあ…という感想をもつ自分が情けない。率直に、もっとしっかり生きていかなければと思った。知らないことがいけないのであって、知っていれば何とかできることができる世の中にはたくさんある。

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2022年01月03日

Posted by ブクログ

置かれる立場が違っても、お互いを知りたいと思い、助けになりたいと思いやることができれば、きっと社会はよくなっていくんじゃないかと思った。
和真の心が強くしなやかに成長していく様は、見事だった。悩んでもがいて、自分の答えを見つけ出す姿に引き込まれた。

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2021年08月11日

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和真の成長がいい。
いい成長の仕方。
親との関係も中3として、親離れ、親に対する見方もしっかりしてきて、ああ、こんな風に育ったらなあと思わせられる。
樹希の強さ、弱さ、よく伝わってくる。
居場所の大切さとか、いい話だ。

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2021年07月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

難関中学についていけずに退学した和真は、生活保護をもらっている樹希と人種差別を受け学力にも問題があるアベルと出会う。
和真はアベルに勉強を教えることになるが、アベルから先生と感謝されることによって、自分の存在価値を認められるようになる。樹希の生活保護に関しても、調べていくと、進学の道もあることがわかってくる。
冷たい目で見る大人たちが多い中、中学生が、このような状態に立ち向かって、可能性を見出す姿が、彼らの明るい未来を予感させてよかった。
生活保護の制度の詳細を知らないと何もできないで可能性をつぶしてしまうが、何かできないか他人の助けも借りながら、動いていくと道はないわけではないことがわかる。

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2025年08月23日

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子ども向けやからこそわかりやすく書かれてて、子供のときに読みたかったな〜と。
山ノ内くんがどうなるのかきになる

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2025年03月08日

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うつ病の母と幼い妹と生活保護にてやりくりする中学生女子
有名中学に入学するも成績不振で公立に編入し勉強づけの中学生男子

正しい制度とはいつどこで得れる情報なのだろう
と考えさせられた

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2025年02月17日

Posted by ブクログ

むこう岸と言うタイトルと中身を読んで、「橋のない川」を思い出してしまった。あちらは部落差別のお話だが、あちら岸こちら岸は、深くて大きな川に阻まれていて、渡れる橋もない状態が、主人公たちの苦しすぎる生活を物語ってる気がする。
普通なら混じることもなさそうな、私立中学校からの転校生和真と、生活保護世帯で育つ樹希が、むこう岸とこちら岸の川を越えようとする、胸の熱くなるお話。もがいて、手足をばたつかせ、なんとか岸に辿り着こうとする、切ないお話。


生活保護法
第一章第二条
全ての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。

主人公の一人、和真が、美しいと感じた法律の条項だ。

「制度というものは、知らなければ確実に損をするってことだね」これも和真の言葉だ。

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2024年09月10日

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ネタバレ

衝撃がもうね。

「生活保護受けてるやつは、生活保護って書いたTシャツ着ればいいんじゃね?」
それに「そうだね」と返し、自分の体操服に油性ペンで「生活保護」、背中側に「ありがとう」と書きなぐり着用する樹希。

フィクションだとわかってても心が抉られます。

樹希ほどインパクトのあるリアクションができる子はなかなかいないでしょうが、こういう言葉を簡単に吐いている性根腐れ少年少女はザラにいる。そしてそういう子たちはそれなりのオヤに育てられている。
斎藤くんの母親の感じもすごくリアルで。樹希をあんな目に合わせた元凶ではある。普通は、拾ったカード持つ意味や誰のものかなんて子どもには言わない。でも、アベルをかばう正義感も持っている。100%のクズってほんとはなかなかいないんですよね。

そんなオヤも子も樹希にとっては「むこう岸」。
そして脳内実写化のび太くんこと山之内くんだって「むこう岸」。

貧富の差がある以上、両者を隔てる川は流れているわけで、生活保護という制度があろうがなかろうが、やはり彼らは「むこう」と「こっち」なんでしょう。

ただ、この物語の何が刺さるって、やっぱり「生活保護」っていう制度の「概念」について。
本来はエマちゃん叔父さんの言っていることが軸であり、そういう性質の制度なんですよ。
条文を知って、山之内くんが感じた美しさを持つ制度。

なのに叔父さんの解説を読んだときに少なからずハッとした私も、生活保護受給者を「ナマポ」と呼ぶ匿名ネット民たちの概念に染まっていたんだろうなと引き攣りました。「施し」のにおいがするものだと思っていたんでしょうね。

ただ、これは「生活保護」に限らずあらゆることに言えちゃうことなんでしょうが、同等以上の罪が、その枠に入りながら不正をはたらく者たちにも多分にあるのではないかなと。
やはり人の目はそこに注視されるもので。

制度を利用しているはずなのに高級車に乗り、毎日パチンコに通っている人。

制度を利用できず、ギリギリの暮らしをしている家庭の子どもに、どう見ても不正受給をしている家庭の子どもが「おまえ服も頭もいつも汚くて臭いぞ!近寄るな!菌がうつる!」とイジメる。

受給者のイメージを彼らが背負っちゃってるところもあるんですよね。

かといってケースワーカーさんたちの過酷さはもう周知のとおりで、無理に不正受給を減らそうとすることが、本当に必要な人弾いてしまったりもする。

この制度の実態が100%その性質通りになることなんて多分なくて。
それでもやっぱり支える側も支えられる側もその美しさを持つ努力はしていかなきゃだよなあと考えさせられた1冊でした。

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2022年10月24日

Posted by ブクログ

生活保護過程でお先真っ暗な樹希と難関中学で落ちこぼれた和真.同級生として出会った二人の化学反応,中学生のたくさんの悩みが散りばめられ,大人はこんなふうに関わったらいいのかというヒントもある.
そして喫茶店の居場所という名前もマスターも素敵だ.

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2022年05月28日

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いろんな環境でいろんな悩みを抱えながら、人は成長するんだなあと感じます。と、こんな高みからのコメントをする立場に自分はいるのか?恵まれていることに感謝です。

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2022年01月17日

Posted by ブクログ

生活保護家庭の樹希と裕福な家庭の和真。
出会わなければ、お互い知り得ることのなかった異なる境遇と悩み。
知らなかった世界を知ることは、自分の世界を振り返ってみることになる。
和真が父親に言い返した場面は、やっと言えたねの母親の気持ちと重なる。けれど次の母親の言葉はリアルで悲しい。
登場する大人たちの中に、少しづつ自分の姿をみては心が抉られる。
「人間って捨てたもんじゃないかも」か…
子どもたちがそう思える大人でありたい。

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2019年11月06日

Posted by ブクログ

オーディブルで聴読

同じ「生活保護」を題材とする小説であれば、中山七里の「護れなかった者たちへ」がダントツである。

この本は、子どもの目線から生活保護を見た作品で興味深かった。

虐待の連鎖、貧困の連鎖...
親から子へ連鎖されると言われるものは多くある。
「貧困」は誰のせいか?

親のせいである。
その責任を未来ある子どもたちが背負うべきではない。
義務教育の中でも、もっともっと社会福祉について早くから勉強させるべきだし、救いを求める人たちの窓口は日本は多いかもしれないが、必要な人に必要な情報は行き渡っているだろうか?
その制度からこぼれ落ちる人がいる。もしそれが子どもならば、学校教育が間違っていると思う。
いじめや差別について学ぶ道徳も大切だし、LGBTについて理解を深めるのも大切だろう。
しかし、生きていく上で基本となる、日本の法律(自分のために、誰かのために)をなぜ知らない子どもがいるのか?
税金は何のためにあって、どのように使われ、どう社会を回し、自分を含める国民を支えていてくれるか。
これを知らないから、本書の中に出るような生活保護世帯を「ズルい」と揶揄する者がでる。

気付かされた本だった。
子どもたちの課題図書に、こういう本を挙げるべきだと強く思う。

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2025年02月22日

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