あらすじ
【対象:小学校高学年以上】和真は有名進学校で落ちこぼれ、中三で公立中学に転校した。小五のときに父を亡くした樹希は、母と妹と三人、生活保護を受けて暮らしている。『カフェ・居場所』で顔を合わせながら、互いが互いの環境を理解できないものとして疎ましく思うふたりだったが、「貧しさゆえに機会を奪われる」ことの不条理に、できることを模索していく。立ちはだかるのは「貧困」という壁。中学生にも、為す術はある!
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Posted by ブクログ
Audibleにて。
これも一つのタワマン文学と言えるのだろうか?
生活保護受給家庭で母親と妹の世話に忙殺され将来に希望を持てない女の子。
熾烈な中学受験を突破し、難関私立中学に入学したものの、ついていけずに転校した男の子。
まったく環境の異なる二人が、ぶつかり合いながらもお互いの悩みを理解し、尊重しあっていく様が心に沁みる。
Posted by ブクログ
登場人物皆それぞれ思い出したくないような過去を持っていてそれが自分以外に当てはまってしまってたから敵対視していたため、なかなかお互い理解し合えなくてもどかしかった。だけど、居場所が共通してたおかげでだんだんと互いのことを知ろうとしていた様子は今までの勘違いや偏見を見直すきっかけになっていたのでお互いのためになったなと思った。人それぞれ悩みがあってそれを当の本人ではない他者が理解するのは難しい。だけど問題を理解しようとする姿勢が一番大切なんだなと考えさせられる作品だった。読みやすさも込んで素晴らしい小説だと思った。
Posted by ブクログ
経済的には裕福な家庭ではあるが勉強を親から強要され家庭不和寸前の和真と、父親が不慮の事故で亡くなり母親も精神的な病気のため生活保護を受けながら幼い妹を抱えヤングケアラーと言う状況に追い込まれ未来に希望を持てなくなっている樹希。中学3年生の2人の邂逅が織りなす希望の物語。国や市が制定したものを知っている人がどれだけいるのか、実際自分が本当にその状況にならないとそういう制定された物があると言うこと自体知らないことが多いのではないか。多分にそういう実態を突きつけられたような物語でした。
Posted by ブクログ
一気に読んだ。ひりつくような現実に子供の頃からさらされて育った樹希には金持ちで私立中から転校してきた和真の甘ちゃんさが鼻につく。和真も、生活保護を受けている家庭の子という樹希に対して恐れや苦手意識があり、避けていた。しかし、お互いの事を少しづつ知るようになって、相手の事を理解しようとし始める。
生活保護というキーワードだけで中学生にはハードルが高い。大人だって知らない事だらけだ。
知ることで身を守ることが出来る。それが知れるだけでこの本のメッセージの半分は伝わっていると思う。生きるために必要な事をやるだけなんだよね。
Posted by ブクログ
オビにある通りイッキ読み
だいぶ心を動かされた
自分が登場人物のどの立ち位置にもなり得る
ような読み方ができる
誰にとっても
なくせない優越感とか優位性とか
人間社会で生きていく限りゼロにはできないような感情
社会のいろんな人の立場から見た風景
主人公が中学生であるところで
まだ、希望を持ててよかった
法律の美しさを見る山之内がすばらしい
彼は法律家になるだろうと思いました
(知らんけど)
Posted by ブクログ
難関中学についていけずに退学した和真は、生活保護をもらっている樹希と人種差別を受け学力にも問題があるアベルと出会う。
和真はアベルに勉強を教えることになるが、アベルから先生と感謝されることによって、自分の存在価値を認められるようになる。樹希の生活保護に関しても、調べていくと、進学の道もあることがわかってくる。
冷たい目で見る大人たちが多い中、中学生が、このような状態に立ち向かって、可能性を見出す姿が、彼らの明るい未来を予感させてよかった。
生活保護の制度の詳細を知らないと何もできないで可能性をつぶしてしまうが、何かできないか他人の助けも借りながら、動いていくと道はないわけではないことがわかる。
Posted by ブクログ
衝撃がもうね。
「生活保護受けてるやつは、生活保護って書いたTシャツ着ればいいんじゃね?」
それに「そうだね」と返し、自分の体操服に油性ペンで「生活保護」、背中側に「ありがとう」と書きなぐり着用する樹希。
フィクションだとわかってても心が抉られます。
樹希ほどインパクトのあるリアクションができる子はなかなかいないでしょうが、こういう言葉を簡単に吐いている性根腐れ少年少女はザラにいる。そしてそういう子たちはそれなりのオヤに育てられている。
斎藤くんの母親の感じもすごくリアルで。樹希をあんな目に合わせた元凶ではある。普通は、拾ったカード持つ意味や誰のものかなんて子どもには言わない。でも、アベルをかばう正義感も持っている。100%のクズってほんとはなかなかいないんですよね。
そんなオヤも子も樹希にとっては「むこう岸」。
そして脳内実写化のび太くんこと山之内くんだって「むこう岸」。
貧富の差がある以上、両者を隔てる川は流れているわけで、生活保護という制度があろうがなかろうが、やはり彼らは「むこう」と「こっち」なんでしょう。
ただ、この物語の何が刺さるって、やっぱり「生活保護」っていう制度の「概念」について。
本来はエマちゃん叔父さんの言っていることが軸であり、そういう性質の制度なんですよ。
条文を知って、山之内くんが感じた美しさを持つ制度。
なのに叔父さんの解説を読んだときに少なからずハッとした私も、生活保護受給者を「ナマポ」と呼ぶ匿名ネット民たちの概念に染まっていたんだろうなと引き攣りました。「施し」のにおいがするものだと思っていたんでしょうね。
ただ、これは「生活保護」に限らずあらゆることに言えちゃうことなんでしょうが、同等以上の罪が、その枠に入りながら不正をはたらく者たちにも多分にあるのではないかなと。
やはり人の目はそこに注視されるもので。
制度を利用しているはずなのに高級車に乗り、毎日パチンコに通っている人。
制度を利用できず、ギリギリの暮らしをしている家庭の子どもに、どう見ても不正受給をしている家庭の子どもが「おまえ服も頭もいつも汚くて臭いぞ!近寄るな!菌がうつる!」とイジメる。
受給者のイメージを彼らが背負っちゃってるところもあるんですよね。
かといってケースワーカーさんたちの過酷さはもう周知のとおりで、無理に不正受給を減らそうとすることが、本当に必要な人弾いてしまったりもする。
この制度の実態が100%その性質通りになることなんて多分なくて。
それでもやっぱり支える側も支えられる側もその美しさを持つ努力はしていかなきゃだよなあと考えさせられた1冊でした。