里見清一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレとても面白かった。日本の医療は、人間は死ぬという前提を忘れて、諦めるということをしない。この年齢なのだから癌を治療しなくてもそうそう長くはない、みたいなことは、たしかに言ったら叩かれそうだし年齢差別だと言われてしまうのだろうが前提としてはあって、全ての人を平等に扱おうとすると有限なはずの医療資源や医療費が、大きな効果もない患者に使われてしまうというのはあると思う。効果があって安い薬は儲からないから、効果はそんなに変わらないのに新しい高い薬を製薬会社は売りたがるし、患者も新しいものの方が効きそうな気がするからそちらを希望する、そうすると、効果は変わらないのに医療費ばかり増えていって社会保険を圧迫する。高額医療費の上限を一律に引き上げるのは私は反対だけど、医療費の負担が少ないということはそれだけ公費を圧迫するということで、収入によって負担金が変わるとしてもそれは現役世代にばかりのしかかり、収入は少ないが貯金の多い高齢者には負担は少ない。そして高額医療費の対象者は高齢者が多い。じゃあどうすればよいのか、難しいと思う。誰もが安心して医療を受けられるのは絶対良いことだと思うけど。意味のない治療や検査でどんどんお金が使われる現状はよくない、けれど、自分の家族だったらできる限りの医療を受けさせたいって思うのは自然なことで、素人の患者家族には実際の病気の実態が分からないからなぁ…お医者さんに、もう歳なんで治療しても無駄ですよ、って正直に言ってもらえて、それがみんな受け入れられるならよいのかもしれないけど、お医者さんも安心してそんなこと言えないよなぁいろんな意味で。
最後に筆者が言っていた通り、医療費が財政を圧迫して国が破綻したら、きっと生活保護の人など弱者を糾弾する日本人が今の時代多いと思うし、最近ネットやら何やらで他人の批判や揚げ足取りばっかりだから、素人な批判家は嫌になっちゃうね。誰もが自分は無実で被害者だと思いたいんだろうけど、何にせよ自分も構造的な暴力に加担していることは自覚しておかないといけないと思う、我々みんな。 -
Posted by ブクログ
「偽善の医療」の里見清一先生の新刊。
この本も面白い。
まるで落語を聴いているかのような感覚で、今の医療についてのアレコレをズバリと(特には逡巡しながら)描いてくれている。
放送禁止用語的なコードも気にしないかの弁舌で、面白かった。
確かに、現代医療は、というか社会は、人は死なないかのごとく医療を考え、廊下も病気として捉えるようになっている。
釈迦のといた「生老病死」という逃れられないものにたいして、医師がどう向き合っているのか、そして、社会がどう向き合うべきなのか考えさせられる。
本の中には多数の引用がなされていて、そのいくつかは医学論文として発表されたものもある。
引用元も示されているので、これらも引いて 読んでみたいと思った。
「死」について、考えることを放棄するのではなく、目の前にして考えなければならないなと思った。
最終章に、小説(医療ドキュメントノベル)「約束」が収められているが、これは、すこし涙してしまった。
優しく、非情な等身大の医療が語られている。
----------------
【内容(「BOOK」データベースより)
医学の進歩で、なかなか死ねない社会が到来した。しかし90歳過ぎの老衰患者に点滴をし、抗生物質を投与し、透析を行いペースメーカーまで入れて、なんのために「救う」のだ。数多くの死に立ち会ってきた著者は、今どきの「タテマエ」「良識」を嘲笑う。「命に上下は存在する」「患者の自己決定を信じない」「現代の医者は『死神』の仕事を担う」…現代人である「あなた」の死に方についての、辛辣かつ深遠な思索。
———————
【著者略歴「BOOK著者紹介情報」より】
里見/清一
1961(昭和36)年鳥取県生まれ。日本赤十字社医療センター化学療法科部長。86年東京大学医学部卒業。国立がんセンター中央病院内科などを経て現職。日本癌学会・日本臨床腫瘍学会・日本肺癌学会評議員
———————
【目次】
1 褒めたら人は伸びるのか
2 ストレスはなくせない
3 自己決定の呪縛について
4 「自己決定尊重」の裏側
5 なかなか死ねない社会
6 がんのメリット
7 生身の医者は絶滅寸前
8 命に上下は存在する
9 引導を渡す役目を担う
10 あなたの臨終の枕元に立つ
11 気分の問題
12 二番煎じの価値
13 ピークのあとは下るだけ
医療ドキュメントノベル 約束 -
Posted by ブクログ
里見清一(國頭英夫さんのペンネーム)の最近の医療に対する問題提起の本。
インフォームドコンセントやセカンドオピニオンなど、患者との関係が劇的に変化する昨今の医療について警鐘を鳴らしている、という感じでした。
すごく辛口で独善的な印象のある文体なのですが、著者の主観的な意見と客観的な情報を上手に織り交ぜてなかなか説得力のある内容でした。パターナリズムについては僕自身もどう扱うべきか迷うところもありますが、医療の専門家として責任をもって患者と接すべしという著者の意見には賛成します。勿論これはバランスが難しいんですけどね(汗)自分の意見を書きたい放題の本なんだろうな、と斜に構えて読み始めてみると、ちょこちょことエビデンスを持ってきてうまいこと文章をまとめる文章力には「やるな」と思って読んでいました。
歯科の病気(主に虫歯と歯周病)は生涯の友とも言えるほど、歯があるかぎりリスクがゼロにならないという特徴もあって、著者が力説する「患者と医者の信頼関係」(学校ではラポールなんて言葉で習います)については重要だなーと再確認しました。訴訟の時の言い訳に使う説明文書ではないインフォームドコンセントの在り方。だいじ。
ちょっと前に読んだ「統計学は最強の学問である」も同じく統計と自分の意見ゴリ押しの本だったのに、こっちの本の方が説得力があるのはなんでなんだろう。 -
Posted by ブクログ
医者にかかることは、マックにハンバーガーを買いに行くのと同じではないし、
合理化を目指して平均値にならしたデータから、
誰にでも出来る仕事を増やすことが良いこととは思えない。
著者が「人情」という言葉を使うように、対応は個々によって異なるものだ。
お互いの傲慢さ、怠惰さやせっかちさが絡み合って
信頼を持ちにくい関係が作られている。
いざという時に迷わないように、この本は手元に置いてまた読みたいと思う本。
3年後に再読
最初に読んだ時「何かあった時の為に読んでおいてよかった」と思ったが
何かあってしまったので、読み直した。
データをいかに使うか、数字の後ろの背景をどれだけ知るか、
ランキング一つ、パーセント一つも、
表に出てしまうとそれだけで勝手に独り歩きしてしまうもの。
中に潜むバイアスに気づくこと、
結果に至るまでには膨大な時間と手間がかかることを知っておくこと、
自分が迷わないように、だまされないように気をつけるために。