穂高明のレビュー一覧
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西條八十の童謡『かなりや』をタイトルにした四編からなる連作。四編全てが人間が生きて行く上で背負う重圧や悩み、そういう悩める人を救おうとする人々の連鎖が温かく描かれた大傑作である。最初は四編が独立した物語かと思うのだが、全てを読むと一つの物語として成立していることが解る。
実は単行本で読んでいるのだが、文庫化されたので再び手に取った。分かっているのに読みながら、じわじわと涙がにじんだ。
主人公はお寺の長男・広海。彼はどの話でも脇役のような立ち位置なのだが、非常に重要な役割を果たしている。小さな船に乗って現れる広海…
途中に童謡『かなりや』の…象牙の船に 銀の櫂…という歌詞が紹介されているが -
Posted by ブクログ
穂高明さん初読みでした。生年・出身・経歴等のプロフィールを見る限り、本作の主人公にご自身が濃く投影されているのだろうと感じました。フィクションなのですが、震災を経験した者にしか描き得ない苦悩が、リアルに表現されていました。
主人公は、仙台を離れ東京で暮らす30代後半で独身の悠子。売れない作家でバイトを掛け持ちしています。7章構成で、章ごとに悠子→母親→妹と順に視点が変わり、あの日とその後の様々な人の生活や悠子への想いも描かれ、最後は悠子へ集約されます。作家として書き続けようと決意するまでを丁寧に綴っています。
震災直後、多くの作家の皆さんが感じ吐露していた「無力感」‥。穂高さんも主人 -
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新興宗教にのめり込み、孫は男の子で私立に通わせることを必須とする義母。そして、母親のいいなりにしか行動できない無責任な夫。妻の真知子に対する二人の行動や発言は、これはひどいなと思うことばかりでした。こんな状況のなかで、息子の怜くんの気持ちを尊重しながら対話を続けた真知子を応援しながらの読書でした。
こちらの気持ちまで晴れやかになったのは、夏休みに真知子と怜くんが野辺山宇宙電波観測所を訪れた時でした。星空の描写が、とても印象的でした。こと座のダブル・ダブルスターは、初めて知りました。
この小説では、息子の怜くんがとても聡明でしっかりしているのが救いでした。どうなるのかが気になって、あっという -
Posted by ブクログ
「月のうた」「かなりや」に続き。
とても久しぶりの穂高さんの作品読みました。
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バス事故で、
たった一人助かった少女。
人知れぬ心の痛みを抱えて生きる、
その先に――
彼女が成長して大人になった時、
悲しを享受して
素敵に笑う姿を想像してみる。
祈るように想像してみる。
小泉今日子さん推薦!
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2011年に刊行された作品なんですね。
忘れもしない東日本大震災のなか、
このテーマは当時の私では読めなかったかもです。
なので、このタイミングで出会えたことに感謝。
バス事故で唯一の生き残りの千春は