【感想・ネタバレ】青と白とのレビュー

あらすじ

30代後半の悠は、アルバイトをしながら空き時間に原稿を書く駆け出しの作家。仙台を出て東京で一人暮らしを続けるが、ぎりぎりの
生活を送る。そんな悠の日常は、震災を境に激変した。非常時だとはしゃぐ同僚、思わぬ人からの気遣い、そして、故郷の家族の変化。
「私は、なぜこんなにもちっぽけなんだろう」
過去と未来を見つめた、悠の変化と決断は。

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Posted by ブクログ

東北大震災をめぐり、東京に住む小説家の姉、仙台で不動産会社に勤める妹、津波で死んっだ叔母、など震災で傷ついた心や絆を取り戻していく内容だが、とても心に響く文体で、今年最後に良い本に出会えてよかった。

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2021年12月25日

Posted by ブクログ

穂高明『青と白と』中公文庫。

これまでの穂高明のほっこりした作品とは作風が大きく異なることに驚いたのだが、仙台市出身の穂高明だからこそ、このようなリアリティあふれる震災小説を描くことが出来たのだろう。登場人物のそれぞれが胸に抱く生き残ったことへの自責の念と、再生への想い、深い悲しみ、怒りを強く感じた作品であった。

仙台市出身で東京在住の悠子は作家の傍らアルバイトをこなしていたが、あの東日本大震災で津波により破壊された故郷を目にし、同時に大切な故郷の親戚や知人を喪う……

タイトルの『青と白と』は浅葱幕のことだったのか……

作中のリアルな描写に、あの時の哀しい記憶が呼び起こされた。余震の続く真っ暗な部屋でラジオが伝えた信じられないニュース……「仙台市若林区荒浜で二百から三百体の遺体」、「陸前高田市は壊滅した模様」……一体、誰がこんな悲惨な現実が起きると想像しただろう。

また、これも作中に描かれているのだが、東北地方が大地震と大津波、原発事故で苦しんでいる最中に、一部の心無い輩が信じられない発言をしたり、笑ったり……悲しかった。岩手県産の米を『怪しいお米 セシウムさん』と放送したのは確か東海テレビ。所詮、震災なんぞは格好の報道ネタに過ぎず、他人の不幸は蜜の味ということなのだろう。

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2019年02月25日

Posted by ブクログ

 穂高明さん初読みでした。生年・出身・経歴等のプロフィールを見る限り、本作の主人公にご自身が濃く投影されているのだろうと感じました。フィクションなのですが、震災を経験した者にしか描き得ない苦悩が、リアルに表現されていました。

 主人公は、仙台を離れ東京で暮らす30代後半で独身の悠子。売れない作家でバイトを掛け持ちしています。7章構成で、章ごとに悠子→母親→妹と順に視点が変わり、あの日とその後の様々な人の生活や悠子への想いも描かれ、最後は悠子へ集約されます。作家として書き続けようと決意するまでを丁寧に綴っています。

 震災直後、多くの作家の皆さんが感じ吐露していた「無力感」‥。穂高さんも主人公の心情を語らせていました。でも、被災地を中心に「物語を必要としている」人がたくさんいたのも事実でした。書き手も読み手も、どんなに救われたでしょう。

 自分の不甲斐なさを嘆き、苛立ち、呆れ果てながらも、何ができるのか自問する悠子が、日の当たらない道を歩く人の細やかな人生を、そっと掬い上げる静かで深い物語を書くべく再出発するのでした。

 紅白幕や(黒白の)鯨幕の他に、青白の浅葱幕もあるんですね。弔事に限らず神聖な場で使われるのだそう。空・海・浅葱幕の青の深さ、雲・雪・波・白鳥の白の眩しさの対比が、様々な境目を象徴しているのかのような、味わい深い余韻に浸りました。

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2025年03月13日

Posted by ブクログ

災害は数字で語り継がれることが多いけど、そこにはその数だけの人生、人脈、遺したものがあることを忘れてはならない

数字で単純化しないように

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2025年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

震災、震災後について、もちろん見聞きはしてきたけれど、こんなに嗅覚、触覚、心の襞に働きかけられたのは初めてだった。

涙が出そうになるところもたくさんあるのだが、それ以上に心を抉られるような感覚で読んだ。

『戸田悠』の書くものは心に染みるものだろう…

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2021年12月22日

Posted by ブクログ

2019.05.08~05.09

きっと、被災地の方々の本音なんだろうと思う。
遠くから「絆」だ「復興支援」だと言っても、何の役にも立たない。本当に必要なものって、なんだろう。2020オリンピックでないことは確かだな。

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2019年10月13日

Posted by ブクログ

震災が絡む小説は読まないようにしてきた。被災地の外からの、自己満足とか押し付け感満載の「絆」とか音楽の力で元気にするみたいな胡散臭さが嫌いだし、逆に、被災した側からの「どうせわかりっこない」「所詮他人事でしょう」的な言われようにも抵抗があるから。

だからこの作品を読みながら終始モヤモヤしていた。何かをしようとしても、逆に何もしなくても彼らは被災してない外側にいるの私たちを冷めた目で断罪するのだと思うと、もう何もできないし、何をすることも思うことも許されないのだなと思う。

そうやって他人を切り捨てて、内にこもって、自分を責めて、そんな姿ばかり描かれても、経験していない人間の想像力は現実に遥かに及ばず、両者の距離は広がるばかり。

ということで、この作品は私には響かなかったけど、作者の柔らかく心に触れてくるような文章が好きだし心地いいので、次は震災以外の作品を読んでみたいと思います。

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2022年08月29日

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