山口博のレビュー一覧
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万葉集、読んだことがなかったので、この本なら読みやすいかと思って手に取った。
貴族の雅やかな歌ばかりではなく、東国の田舎の無名な人の歌も多い。宮仕えの窮屈さや不倫、貧しさ、老い。万葉の名に恥じぬ色んな和歌が載っている。
訳文を本文の前に記載するあたり、作者の自己顕示欲を感じる。歌の作者がわかる限りで良いので署名して欲しかった。
咳を「しわぶき」というのは万葉集のころから使われているのか。そりゃ古い言葉だわ。
古女房が色黒で煤けた顔なのは、葦を年中焚いている家の中で、料理、機織りなどで家に籠りがちだから。花嫁が真っ白な衣装と化粧をするのと対称的だなと思う。 -
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『王朝貴族物語』『平安貴族のシルクロード』以来、この人の著作に触れる。
懐かしい友達に街角で思いがけず出会ったような気分で。
米を基準に、山上憶良の年収から、源内、南畝の懐事情まで、記録を精査して換算する。
「貧窮問答歌」は中国の詩の理念(民の窮状を描いて政治を慷慨する)の移入だった、という指摘にハッとする。
平安時代の売位、売官の状況も、初めて知って面白かった。
ますます山口ファンになってしまう。
一つ一つの費目を記録から拾い、換算している作業は大変だったろうなあ、と想像する。
表などでそうしたデータがふんだんにまとめられており、重宝しそう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ元祖自己啓発本(?)なだけあって、濃い。
自己啓発あるあるの「こんなの当たり前じゃん。できたら苦労しないんだけど」現象がほとんど無かった。
↓印象に残った文
・悪い人間ほど自分のことは棚に上げて、人のことを言いたがる。
・人を動かす秘訣
●自ら動きたくなる気持ちを起こさせる。
●どんな履歴がもたらされるか伝える。
●その人が好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやる。
・相手の、他人に認められることを渇望する気持ち⇒(自分が)正しく満たしてやる⇒相手の心を手中に収められる
例:相手の長所を伸ばすために褒める、励ます
・人間は、何か問題があってそれに心を奪われているとき以外は -
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人間関係に関する古典。
有名な本なので存在は知っていたけど、何となく胡散臭い感じがして、今まで手を出していなかった。『スーパーエンジニアへの道』で紹介されていたので読んでみたが、意外と良かった。
内容としては、最初に
「凶悪犯でさえ、自分が正しく世間が間違っていて、自分は被害者だと思っている。ましてや、普通の人なら尚更だ。その現実を認めるところから始めないといけない」
とか書いてあって、これを最初に持ってくる著者の洞察力の高さに唸る。これが認識できていない人同士で、どれだけのトラブルが起きていることか。
その他、人を動かすためのTIPSが数多く書かれているけど、言ってることは一貫して「北風 -
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人との円滑なコミュニケーションを取るための方法が、様々な実例で短く具体的に紹介されていた。一章が短いため読みやすく、淡々と語られているため、くどい感じがしなかった。
ただ、コミュニケーションというのは時と場合によって変わってくるため、参考にはできるだろうが「絶対こう」と決めつけると良くなさそうだった。
要は、相手に対して誠実で穏やかに接することが重要なのだと感じた。
良くも悪くも共感できる部分があり、納得できる内容が多かった。
文章は少し硬く、「相手に〜してやるのだ」というように少し上から目線な印象を受けた。著者が海外の人であるため、土地や人名などカタカナが大量だった。
このよ -
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読むのにはハードルの高かった万葉集ですが、この本で万葉集の歌の詠み手たちをかなり身近に感じました。歌の背景にある彼らの悲喜こもごもは時代は違えど、普遍的なものだったのだな、と思います。
本の中で紹介される歌は、男女関係や防人に関するもの、酒の席の歌や仕事に関するものなど、それぞれのテーマごとに紹介されています。
呑兵衛が歌った短歌も、男女の営みを露骨ににおわせる短歌も、古語になり、5・7・5・7・7のリズムに乗るとあら不思議。高尚で雅なものに見えてくる。そのギャップが面白いし、改めて古の日本語の美しさ、短歌のリズムの素晴らしさみたいなものも感じます。
不謹慎だったり、人間臭い歌も面白いけ -
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ネタバレ奈良、平安、鎌倉、室町・戦国、江戸の5つの時代の人々の収入が紹介されている。現物支給だったものについては、当時の物価価値で換算した額が出されていて、なかなか面白い。
分量的には平安時代の貴族に関する記載が最も充実しており、その次に江戸時代。奈良、鎌倉室町・戦国はけっこう薄い。現存している史料によって調査の濃淡が異なるということか。
個人的には江戸時代の庶民の生活水準や金銭感覚を知りたいと思って読んでみたのだが、そのへんの記述はほとんどなく、ちょっと期待外れ。というか、どの時代をとってもいわゆる「一般人」の懐事情の記載はほぼ無く、これも信頼できる史料がないためなのだろう。平安時代の章など、貴