山口博のレビュー一覧
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人間関係に関する古典。
有名な本なので存在は知っていたけど、何となく胡散臭い感じがして、今まで手を出していなかった。『スーパーエンジニアへの道』で紹介されていたので読んでみたが、意外と良かった。
内容としては、最初に
「凶悪犯でさえ、自分が正しく世間が間違っていて、自分は被害者だと思っている。ましてや、普通の人なら尚更だ。その現実を認めるところから始めないといけない」
とか書いてあって、これを最初に持ってくる著者の洞察力の高さに唸る。これが認識できていない人同士で、どれだけのトラブルが起きていることか。
その他、人を動かすためのTIPSが数多く書かれているけど、言ってることは一貫して「北風と太陽」の説話でいうと太陽。
「相手が間違っていると思っても、まずは相手を立てる。話はそれからだ」
ということが、しつこく繰り返し説かれている。全く間違ってはいないと思う反面、これを認めることが地獄に思える場面もあるよなあ、と思いながら読んだ。 -
Posted by ブクログ
読むのにはハードルの高かった万葉集ですが、この本で万葉集の歌の詠み手たちをかなり身近に感じました。歌の背景にある彼らの悲喜こもごもは時代は違えど、普遍的なものだったのだな、と思います。
本の中で紹介される歌は、男女関係や防人に関するもの、酒の席の歌や仕事に関するものなど、それぞれのテーマごとに紹介されています。
呑兵衛が歌った短歌も、男女の営みを露骨ににおわせる短歌も、古語になり、5・7・5・7・7のリズムに乗るとあら不思議。高尚で雅なものに見えてくる。そのギャップが面白いし、改めて古の日本語の美しさ、短歌のリズムの素晴らしさみたいなものも感じます。
不謹慎だったり、人間臭い歌も面白いけど、恋の歌だったり、防人の任務のため引き裂かれる夫妻や親子を読んだ歌は、逆に古語の美しさ、短歌のリズムが作用してより悲哀をもって伝わってくるような気もします。そうした短歌の背景にある様々なドラマに思いめぐらすことができたのが良かったです。
最も印象的な歌は
庭に立つ麻手刈り干し布さらす 東女を忘れたまふな
というもの。
田舎に住む女性が都に帰る男に宛てた歌で、背の高い麻束を抱える姿が男女の抱擁と似ていることから、その姿を歌に入れることで男を思っていることを伝えたもの。挿絵もついていたのですが、それを見ていると、確かに男女の抱擁のようで、女性の切ない思いがより伝わってきます。
小説以外の文学になかなか触れることができないのですが、短歌や俳句がなぜ人の心の琴線に触れるのか、なんとなく感じられた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ奈良、平安、鎌倉、室町・戦国、江戸の5つの時代の人々の収入が紹介されている。現物支給だったものについては、当時の物価価値で換算した額が出されていて、なかなか面白い。
分量的には平安時代の貴族に関する記載が最も充実しており、その次に江戸時代。奈良、鎌倉室町・戦国はけっこう薄い。現存している史料によって調査の濃淡が異なるということか。
個人的には江戸時代の庶民の生活水準や金銭感覚を知りたいと思って読んでみたのだが、そのへんの記述はほとんどなく、ちょっと期待外れ。というか、どの時代をとってもいわゆる「一般人」の懐事情の記載はほぼ無く、これも信頼できる史料がないためなのだろう。平安時代の章など、貴族のとてつもないレベルの収入と、それを得られる地位を買うための策謀やら政略やらが目立って辟易してしまう。
先に書いた通り、平安時代の記述が最も濃いので、この時代の貴族の生活について知りたいなら良書。また、それ以外の時代についても「エリート層」の生活を見てみたいなら得られるところは多いだろう。