古野まほろのレビュー一覧
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警察官としての生活、官僚としての生活、ともに垣間見ることができて面白い。警察官僚として生きた読み物は佐々淳行さんのものが有名と思うが、平成時代の官僚が綴ったものににはなかなか巡り会えなかったので、非常に興味深く読むことができた。
改めて、「なぜ私はこういった警察ものに魅かれるのか」を考えてみたが、やはり現場がある職場であることに親近感を覚えるからなのではないかと思う。本書にも『常在戦場』『指揮官先頭』『一歩前へ』『人の嫌がることをやる』『みずぼらしい神輿は誰も担がない』『指揮官の辞書に困難はない/指揮官に難しいもヘチマもない/そんな覚悟で事件ができると思っているのか‼︎』を始め、現場で困難な業務に仲間とともに向かわざるをえない人にとって含蓄のある言葉が多く散りばめられている。
また、「実質的に課をうごかしているのは課長補佐+係長レベル」「キャリアが現場に出たときに、出来の悪いキャリアはナチュラルに軽蔑され、共に戦うに値すると認められたときは自ずと慕われる」「地方への出向時に親会社と対立する場面があり、その際はともに親会社と闘ったり共犯関係に入ったりしなければならない」という点は、生き方を考える上で非常に参考になった。
警察などの危機管理を生業にする職業は結果に対する誤魔化しが効かないので、その分しっかりと中堅どころまでも結果にコミットする文化が出来上がるのだろうと思う。
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Posted by ブクログ
「知っているようで何も知らない」というような事柄、「特殊なようでいて、一般的な様々な事柄に通じる」という内容は、この種の新書の特長ということになると思う。そんな特長が感じられる良書であったと思う。
本書とは無関係ながら、少し前に永く刑事として活躍された方が綴った本を興味深く読んだ。その中に、警察官として活動し始めた頃に所謂“駅前交番”で勤務した際の経験談が在った。一定の頻度で見掛け、見掛ける都度にコインロッカーを利用していた人物が気に掛かり、声を掛けると件の人物の持物の中には「侵入盗」に使う道具が詰まっていて、常習犯である旨が判明したというのだ。
本書で扱う「職務質問」の、実際に在り得る事例として思い出したのが上記の、別な本に出ていた話しであるが、正しくそういう「交番勤務のような“地域”という担当部門の警察官」が主に行う活動で、犯罪等を明らかにするという意図も在って行うのがこの「職務質問」なのだという。
制服姿で勤務中の警察官と言葉を交わした経験が皆無ということではないが、然程頻繁な訳ではない。そしてこの「職務質問」というようなことで声を掛けられた経験も無い。が、実際に如何いう訳か何度も「職務質問」を受ける人も在れば、「そう言えば、そういうことは無い」という人も多い。
本書もそういう辺りから入り、所謂「警察官の職務質問」とは「何?」ということに関して様々な角度で説く内容となっている。著者は所謂“キャリア警察官”という経験も有している作家で、この種の事柄の綴り手としては、これ以上の適任者は見当たらないのかもしれない。
職務質問の結果として、犯罪を強く示唆するモノでも出て来るなら、色々な強制措置を講じる、逮捕するということになって行く訳だが、職務質問そのものは「“御願い”ベース」な営為だ。そこでその「“御願い”ベース」なモノに、声を掛けられた側が如何対処するというようなことにも本書では随分と紙幅が割かれている。が、結果的には「“御願い”ベース」で色々と出来る仕組みということに思い至らざるを得ない…
そんな話しの他方、巷では「クレーム対応に関して」というようなテーマで話されていそうな事柄が、警察部内で職務質問を巡って考えられているらしいという辺りは少し興味深かった。更に、職務質問で犯罪者を明らかにするに至った“成功”の事例に関して、「如何いう訳か巧く事が運んだ?」という場合こそ「何故?」を顧みるべきだという話しが在るのだという。
という具合に、なかなかに面白い話題が多い一冊だったと思う。 -
Posted by ブクログ
題名の「女警」とは「女性警察官」を略した語である。自身で使用中のパソコンでは「じょけい」と打ち込んでも変換漢字として「女警」は出て来なかったが…
本作は、事件が発生して警察官達が登場する物語ではあるが、何か「一味違う」という感じに仕上がっている。『女警』という題が示すように、女性警察官の物語ではあるが。
とある県警の監察官室長を務める女性のキャリアである姫川理代警視が主要視点人物となる。物語の中心となる事件は、警察内部の事件だ。
或る夜、交番で現場のリーダーたる警部補が銃弾を受けて死亡していたのが発見された。一緒に勤務していた女性巡査の姿が無かった。そして女性巡査は拳銃自殺を遂げたと見受けられる状態の遺体で発見された。
50歳代の警部補が、年が相当離れた23歳で新人である女性巡査にハラスメントを重ねていて、思い詰めた巡査が警部補を射殺して自殺を遂げたというようなことが推定された。
「そういうことで…」というように事件の始末をするような流れとなったが、姫川理代警視は腑に落ちない。そこで色々な人達の話しを聴くことを試みる。
本作はそうやって姫川理代警視が、「若い女性巡査が上司の警部補を射殺して、更に自殺を遂げた?」という衝撃的な出来事の真相に迫るという内容だ。現場で何が如何なっていたのか?それが丁寧な“事情聴取”の結果として明らかになって行く訳だ。
何か、独特な味わいが在る物語だと思う。“警察”という独特な社会に生きる女性達という存在に関して、色々な角度で掘り下げる等している。そして、事件は実はかなり意外な内容を帯びている。
これは一寸御薦めな小説だ… -
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警察官の99%以上を占める地元採用のノンキャリア警察官を対象に、出世と人事について、階級・職制・専務の切り口で解説。警察内部での人事・組織構造が極めて分かりやすい語り口で書かれている良書。
特に面白かったのは、以下の点。
・無試験昇任のキャリアと違って警視までは基本的には試験を通らなければ昇進できない。警視正以上で普通の人事の中で選考される。
・現場実務は警部補まで、警部以上は内勤や管理業務が多い管理職
・警部補をハコ長とする交番と、警部補をトップとする警察署の係は同格同構造。警部をトップとする警察署の課と警部をトップとする県警本部の係は同格。警視をトップとする県警本部の課長と警視である警察署長は同格、というように組織の上下関係が極めて整然と整えられている
・どの会社でも職能は専門分化しているが、大抵採用区分や採用後に振り分けている。警察は入口は一緒で、交番勤務を経た後に、生活安全・刑事・交通・警備の現業4専務が、それぞれギルドのように存在し、当該専務に入るための試験もある。これで専門を分けている。地域部門は、非専務で下に見られている。検挙が目的の刑事と泳がせて情報を集める警備はとりわけ相性が悪い。
・専務の中で、例えば、警備の中の警備、公安、外事、生活安全の中の薬物、少年のようにサブカテゴリーがある。
・現業4専務に、総務・警務(総警務)を加えれば6専務だが、人事・予算・組織を握る最強の総警務は、各専務からの人出しで成り立っており、良いポストを自らの専務で確保するためのしのぎが削られている。
・従って、昇任試験をパスし、専務入りして専務の中で地位を上げていかないと偉くなれない構造。
・県警本部における各専務の部長(キャリアに召し上げられる場合は、その下の◯◯部参事官)が専務のラスボス。大規模県で警視長、小規模県で警視正でこれが地元エリートの最終ポスト。
・専務間では「人事交流」制度が存在するなど、最早、他官庁の如き距離感。 -
Posted by ブクログ
結末にビックリです。
途中までは、完全に、新任巡査のお仕事のお話なんですよ。ですが、残り250ページくらいから話は変わり始めます。いや、変わり始めた時点では、話が変わったという事はわからないんですよねぇ。ただ、警察官の職務の危険性を示しただけなのかなぁと思っていたんですが、全然違いました。
そういえば、この作品の最初、なぜだか公安課長が新任巡査の人選を行っているかのような描写があるんですが、それがここにつながってくるのかと。「すべては地続き」の通りですね。
って言うか、ここに至るまでの話全てが地続き。伏線。それが、結末に向けて、明らかになっていきます。そして結末かぁ。
いやぁ、しかし、最後に明らかになる犯罪はえぐい・・・ -
Posted by ブクログ
ー どうして逃げなかったの、どうして救いを求めなかったの。警察官をやっていると、どうしても被害者に、そう訊きたくなる瞬間がある。
(けれど、ヒトがヒトを奴隷にするというのは…そんな解りやすいものでもなければ、そんななまやさしいものでもない)
その学習と依存と恐怖のメカニズムは、人類が約一世紀を掛けてもまだ、アウシュヴィッツから学び尽くせていないものだ。ヒトが抵抗の気概を、だから性根と覚悟を奪われてしまうのは、直接的な暴力によるところも大きいが、それよりも何よりも、誇りの否定によるところ大である。
(誇りの否定とは、すなわち恥辱の日常化)
そして、それはどんどん内在化する。 ー
人身売買をテーマにしているので、人を選ぶ作品。
古野まほろ節は止まらない。
そして、混乱した社会秩序の治安再建のためのシステム構築に必要不可欠な必要悪の構想。続編はそれに挑む感じなので楽しみだ。