売野機子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きな売野機子さんの単行本、遡って読んでいます。
どの短篇もたくさんの感情が詰まってて素敵でした。
むかーし、「ぶ〜け」というちょっと先鋭的な少女漫画誌があって、長年の愛読者だったのですが、売野さんの漫画のテイストは「ぶ〜け」を彷彿とさせます。懐かしくて新しい。
冒頭の表題作である、アスペルガー症候群(をモデルにしたと思われる)の幼妻と夫のすれ違いと愛の再興の話「薔薇だって書けるよ」からずっと胸をぎゅっと掴まれたまま最後の「晴田の犯行」まで一気に読んでしまいました。
どれも好きですが 一番を選べと言われたら、自殺してしまったバンドマンとファンの女の子が夢で逢う「日曜日に自殺」、タイトルと設定に反してなんといういじらしくて可愛いお話だろうか! -
Posted by ブクログ
「天使」となった者に与えられる周囲からの祝福。「天使」となれた者への憧れ。しこうしてその彼が召される瞬間の姿は、もっとも親しきものたちの目からは隠されていなくてはならない…。
最期のときにあって、当人は物質としての身体の死の痛ましさを一室のうちに閉じ込めて、信仰上の幸福をただただ個人的なよろこびとして抱え込んだまま逝く。去る者には去る者の、送る者には送る者の悲喜がある、というわけだ。
透明感のある画の妙とお話のうつくしさが相まってなんともかんとも…。ツアーの間中「マルタが、マルタが…」と浮ついてしまっている状態のガブリエルの描写が、実は沈鬱になりがちな本筋に対する中和剤のようなものとして、意図的に挿入されているらしいフシがある…。 -
Posted by ブクログ
この人の短編はやはりすごく魅力的だと思った。
詩のようなセリフまわしが一番生きるのかな。
「しあわせになりたい」はとくによかった!
願ったら時間をスキップして小学生→高校生になっちゃった、という現実感ののないお話だけど、違和感や矛盾をあまり感じさせずそういうものか、で読めてしまう。これってきっと少女漫画クオリティなんだろうな、と最近思う(少年漫画や青年漫画だとそれなりの科学的説明を必要とすることが多い)。
それ以外にも、すごく少女漫画的だなと感じる要素はたくさんあって、読んでいるだけで懐かしくなって胸がきゅうきゅうするのだけれど、こういう漫画をまだ読める自分であってよかった、とふしぎな安心の仕方をした。
それにしても、肇くんいいオトコ! -
Posted by ブクログ
裏表紙の作品紹介に「売野機子が描くのは『偽占い師』と『秘家族』(偽と秘には○がついてる)」とあるが、編集学校的に言えば「『秘占い師』と『偽家族』」とも。2作収録。どちらも秀作。そして、私にしてみれば久々のヒット。
どちらの作品も、人がエッジの上にいるような危うさで繋がっている。いつでも切れていていつでも繋がっているような。
その絶妙さがとても痛い。し、辛い。
ホントの自分を見て欲しい。でもホントの自分を見られたら、みんな逃げていくの。誰も信じてくれないの。
ただただ、シンプルに。人とつながりたい。つながっていたい。それだけなのに。
イケメンであるという特性を持つがゆえに、その部分に人が吸い寄せられ、「からっぽ」である真実の自分をさらけ出せない男。さらけ出せないところへたまたま「占い」というツールが自分にあって、それがフィルターとなって防御にもなり毒にもなり。
イケメンであれば嘘つきでもいい。占い、嘘つき。人はそこしか見ていない。しかも、嘘をつかれていると思っていない。そういう当世のお遊びのような約束事からはぐれざるを得ない男のロンリープラネット。
誘蛾灯のように吸い寄せられる者たちの孤独も痛い。「ホントの自分」は、さらけ出したらおしまい。どこかにそっと仕舞っておくようなものなのだ。おそらく。
だから、人は「出会い」に期待する。こんどこそ。こんどこそ。
それに応えられない己(相手)の辛さ。人が孤独を抱える構図。そこを絶妙に突いているのが本作。
初期の大島弓子をも思わせる作風。
FBでの付き合いにこの作品の世界観を置き換えるとさらに絶妙。
私はわりとおもしろがられる方です。そして、わりと勝手に去っていかれるんですよ。
だから、人との出会いは慎重になるんですよ。奇妙な期待もしませんねー。
相手も自分もできるだけ傷つけないよう、誠意を持ってやりますが、やっぱり未熟ですから。
化けの皮は剥がれます。その奇妙な気遣いが孤独を呼ぶのです。
そんなあらかじめ割れた卵のようなものを後生大事に抱いている者にとってはとても痛い、『ロンリープラネット』。
あと、血のつながりだけが家族ではないとはたまに言われることだけど、ここでの「家族」「夫婦」の形はほんっっっとに絶妙。
それぞれの抱える秘密と孤独という利害が瞬時折り重なったときが「本当の出会い」。それは「奇跡」にちかい。
それが巻末収録の『その子ください』。
「僕たち長らく戦友だった」。
いや、長らく、でなくともよい。
ほんの少しのあいだだけでもいい。
僕たちほんの少しのあいだ、戦友だった。
それぞれの「秘密」を抱えたまま、そのあいだあいだをつないでいくのが日々。人生か。
こんなふうに書くと重い作品に思えますが、少女漫画のコメディー風味だし、読後感はとてもいいところに落ちますよー。