売野機子のレビュー一覧
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今回はシオンが主人公。メガネ少年がメガネ少女と出逢います。ようはメガネが書きたかったんですねと。そんなわけでちょっと釣巻和の作品を思い出すところもありました。
相変わらず人物にしても舞台にしてもよく描かれていて、読みようによって色々意味を引き出せるようにできている一方で、ストーリーは淡々と進んでいきます。
彼を心配するレビはともかく当人(とデボラ)は僅かなシーンを除いて感情をまったく面に出さないように描かれています。そしてそれは彼らの「自然」な態度などではなくて彼らなりの選択に基づく意識的な振る舞いの結果であり……という葛藤を描ける(描かないことによって描くことができる)のも売野機子の魅力 -
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大好きな売野機子さんの単行本、遡って読んでいます。
どの短篇もたくさんの感情が詰まってて素敵でした。
むかーし、「ぶ〜け」というちょっと先鋭的な少女漫画誌があって、長年の愛読者だったのですが、売野さんの漫画のテイストは「ぶ〜け」を彷彿とさせます。懐かしくて新しい。
冒頭の表題作である、アスペルガー症候群(をモデルにしたと思われる)の幼妻と夫のすれ違いと愛の再興の話「薔薇だって書けるよ」からずっと胸をぎゅっと掴まれたまま最後の「晴田の犯行」まで一気に読んでしまいました。
どれも好きですが 一番を選べと言われたら、自殺してしまったバンドマンとファンの女の子が夢で逢う「日曜日に自殺」、タイ -
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「天使」となった者に与えられる周囲からの祝福。「天使」となれた者への憧れ。しこうしてその彼が召される瞬間の姿は、もっとも親しきものたちの目からは隠されていなくてはならない…。
最期のときにあって、当人は物質としての身体の死の痛ましさを一室のうちに閉じ込めて、信仰上の幸福をただただ個人的なよろこびとして抱え込んだまま逝く。去る者には去る者の、送る者には送る者の悲喜がある、というわけだ。
透明感のある画の妙とお話のうつくしさが相まってなんともかんとも…。ツアーの間中「マルタが、マルタが…」と浮ついてしまっている状態のガブリエルの描写が、実は沈鬱になりがちな本筋に対する中和剤のようなものとして、 -
Posted by ブクログ
この人の短編はやはりすごく魅力的だと思った。
詩のようなセリフまわしが一番生きるのかな。
「しあわせになりたい」はとくによかった!
願ったら時間をスキップして小学生→高校生になっちゃった、という現実感ののないお話だけど、違和感や矛盾をあまり感じさせずそういうものか、で読めてしまう。これってきっと少女漫画クオリティなんだろうな、と最近思う(少年漫画や青年漫画だとそれなりの科学的説明を必要とすることが多い)。
それ以外にも、すごく少女漫画的だなと感じる要素はたくさんあって、読んでいるだけで懐かしくなって胸がきゅうきゅうするのだけれど、こういう漫画をまだ読める自分であってよかった、とふしぎな安心の -
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裏表紙の作品紹介に「売野機子が描くのは『偽占い師』と『秘家族』(偽と秘には○がついてる)」とあるが、編集学校的に言えば「『秘占い師』と『偽家族』」とも。2作収録。どちらも秀作。そして、私にしてみれば久々のヒット。
どちらの作品も、人がエッジの上にいるような危うさで繋がっている。いつでも切れていていつでも繋がっているような。
その絶妙さがとても痛い。し、辛い。
ホントの自分を見て欲しい。でもホントの自分を見られたら、みんな逃げていくの。誰も信じてくれないの。
ただただ、シンプルに。人とつながりたい。つながっていたい。それだけなのに。
イケメンであるという特性を持つがゆえに、その部分に人が吸