皆川博子のレビュー一覧
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ネタバレ「トマト・ゲーム」
真っ赤なトマトになっちゃいな式のバイク乗り。
「アルカディアの夏」
「獣舎のスキャット」
姉が弟を見る眼の異様さを裏打ちするのは、何か。
弟からの意趣返しが凄まじい。
「蜜の犬」
強者と弱者の関係が引っくり返る、しかも比較的ピュアな少年によって。
「アイデースの館」
アングラ演劇崩れの青年が作ったポルノムービーの、男たちが仮面をつけている。
仮面の製作者は誰か。
過去にぐいっとズームがずれる感覚。
「遠い炎」
家政婦が旧知の人物だったことで座が奪われていく。
ちょっと似た話を映画で見たことがある。
「花冠と氷の剣」
これまたロマンチックな題名。
贅指の青年に惹かれる、精神病棟入院経験のある女。
幼児への嗜虐。
「漕げよマイケル」
受験戦争。同性愛。親子。 -
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10人による、怖い話。
題名通り、夢で見たり、白昼夢だったり。
うっかり思い出してしまわないためにも
日が高いうちに読んだ方がいいかもしれません。
いや、思い出すような読み方をしなければ大丈夫?
ぎょっとする終わりなのは、そらみみ。
これが現実なのか、あちらが現実なのか、と
思わせるような最後の一言。
非常に混乱させられます。
目的だった、辻村さんは…子供のせいか
やたら無邪気に怖い。
世の中、知らない方が…気がつかない方が
幸せ、という選択もあると思われます!
言ったら相手に移る夢、かと思っていたのは、琥珀。
さすがにそれはない内容でしたが
とり憑かれたと表現するのがぴったりな感じでした。
どれもこれも、読んだのを忘れた方がよい話。 -
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終戦間際の時代、ミッションスクールの図書室に置かれていた『倒立する塔の殺人』と書かれたノート。そのノートには手記と終わりのない小説が書かれている。その手記とノートが書き継がれていくうちに徐々にそのノートに秘められた企みが明らかになっていく。
濃い世界観の小説はいろいろありますが、この作品の世界観はただ単に濃いだけでなく、甘く妖しい芳醇な他の作家さんではなかなか出せない独特の濃さがあるように思います。
それは戦時下から終戦直後という時代設定や、キリスト教系で女子学生だけのミッションスクールという舞台設定に加えて、
女子だけの世界だからこそ起こりうる愛憎を雰囲気たっぷりに描いているからだと思います。勝手なイメージですが読んでいて宝塚音楽学校ってこんな感じなんじゃないかな、という印象を持ちました。
特に印象的だった場面はⅥのピアノの場面。本当に美しい文章で、それでいて彼女の心理を痛々しく描いていて、読んでいてドキドキしてしまいました。
こんな濃い話と文章の作品なのですが、これをヤングアダルト向けのレーベルから出されているというのがまた驚き。出版社の方もよく皆川さんにお願いしようなんて考えたよなあ…。
きっと出版社の方は皆川さんのこの妖しい魅力を若い層に伝えたかったんだろうな、と勝手に妄想してしまいます。 -
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ネタバレ「少女外道」というタイトルとあらすじに惹かれて読みました。7話からなる短編集です。
順番に感想を書きます。
「少女外道」
表題作です。
あらすじには『(割愛)久緒は、あるとき怪我を負って苦悶する植木職人・葉次の姿を見て、自分が苦しみや傷に惹かれる「外道」であることを知る―。』とあります。
期待して読んだのですが、わたしの想像していた「外道」とは少し違ったので、この本、ちょっとわたしの好みとずれてるんじゃないだろうか、大丈夫かなあと思いました。
うまく言えませんが、本当に怪我をしてしまった人には不憫で惹かれないのです。
そういう意味では主人公は本当に「外道」ですね(笑)
「巻鶴トサカの一週間」
これはけっこう気に入りました。
特に最後の二人で車に乗っているところ。
数か月前にわたしもお葬式に参列したので、火葬場の様子がよく描写されているなと思いました(どこのお家でもいっしょなんですね、きっと)
「隠り沼の」
時系列と登場人物が覚えきれず、何度か読み返しました。
兎、焼いたからという言葉は冒頭の集会での話にリンクしているのでしょうか。
「有翼日輪」
最初のお話が想像と違ったことと、その後の2話も好みとちょっと違うなあと思っていたのですが、ここらへんからお?と思い直し始めました。
とにかく結末がぞっとします。
彼の中では足場から落ちてもギイは死なないことになっていたのでしょうか。
憧れとそれを自分だけのものにしたい、という気持ちは女性的なイメージがあるように思います。
でも金閣寺(三島由紀夫)も男性だったので、男女関係なく、そういう気持ちを持つと悲惨ですね。
モールス信号に覚え方があるとは知りませんでした。
思わずハーモニカと口に出してみました。
「標本箱」
これは気に入りました。
しかし他のお話もそうですが、時代と一人称がころころ変わるので、頭を切り替えるのが大変です。
「アンティゴネ」
戦犯になった兄の遺骨を拾いにマニラに行く、というのが"アンティゴネ"のストーリーにリンクしているということでしょうか。
それと梓と江美子のこともリンクしているのかもしれません。
バレエの一件のあと、梓は江美子に声をかけなかったけれども。
「祝祭」
手鞠の中に指を入れるってどういう気持ちなんでしょうか。
身代わりになりますように、ということなのか、いつでも傍に置いてほしいということなのか。
針で刺したくらいで包帯なんて巻くかなあと思っていたのですが、伯母は見抜いていたのかもしれません。
最後の1ページの文章がとても美しく、気に入りました。
表紙にさんごの写真が小さく載っています。
加工されたものは別として、さんごそのものの形は血管や骨に見えてあまり美しく思えないのですが、一枝ウン千万を欲しがる人がいるのですよね・・・。
どこに飾るのでしょうか。玄関の棚の上とかですか。
夜見たらまさに骨みたいで怖そうです。 -
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ネタバレプロットそのものがかなり入り組み、相当複雑な構造になっているのだが、それを齟齬なくまとめ上げているのはさすがだと思う。
ただ、通読して感じるのが、なんだかこれまでの皆川作品とは少し違う、という漠とした心地。
二昔前のロールプレイングゲームのように、極めて限定的な細い筋の上を、辻褄を合わせるために辿らされているかのような、とでも表現すればいいのだろうか。
登場人物のことごとくがストーリーにバチッとリンクしていく様に、いつものような気持ちよさの代わりにちょっとした強引さというか、お仕着せのご都合主義に近いものを感じてしまった。
「開かせていただき光栄です」の世界が再び展開されていることについては素直にワクワクするし、何より前作で感じた"ナイジェルのバックグラウンドが結局明かされなかったな…"という私の疑問を氷解させてくれ、おそらくは「開かせて…」を書く時に既に続編の構想も存在していたであろうことが窺える。
年月を経て、バートン先生の弟子たちがそれぞれ進むべき道に分かれていくことには、一抹の寂しさを覚える。
いずれにせよ、もう少し紙幅を費やせばさらに収まりのよい作品になったのではないだろうか。
若干収斂を急いでいるように感じられたのも、雑な印象を受けた一因だと思う。
これまで皆川博子氏の作品にはおしなべて高評価の私だが、泣いて馬謖を斬る心境で、星3つ。 -
Posted by ブクログ
現実と幻想と、夢と記憶と、彼岸と此岸と、それらのあわいをふわふわと漂っているみたいな感覚。
そこに血の匂いが立ち込め、死の気配が漂い、すべてを見下ろしている「神」的なものの存在を感じさせる。
やっぱり皆川博子さんの短編はすごい。
「戦時中」の「少女」という視点が、すでに大きな仕掛けになっているのだと思う。
慎ましく生きることを望まれ、純真無垢であることが当たり前だった少女の中に、芽生えてしまった「外道」性。それが少女たちの心の中に隠されて、沼の奥深くに沈められているうちに、ここまで大きな幻想に成長したのだろうか。
それでいて語り手が、その「少女」自身ではなく、(神的な)第三者であったり、成長したその後の少女の視点だったりする。だから読み手が物語全体を俯瞰しているような、さらに言うと戦中から現代までの時空さえも飛び越えてしまっているような感覚にもなるのだろう。
あちら側とこちら側のあわいを漂う、というよりも、現実も幻想も、夢も記憶も、彼岸も此岸も、寧ろそれらすべてを超越している感覚、という方が正確なのかもしれない。