小沼丹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きな小沼丹。
梅田の巨大書店で遊んだときに、ふとこの装丁が気になり買った一冊。
※外側はツルツル加工でカバーなし、中はペーパーバックなのでぴらぴらしている。
収録されている短編のうち、半分以上はすでに別の本で知っていたのだけど、この本自体が欲しくなり購入。
7本ほどの短編が含まれ、700円というお買い得な一冊だ。
ペテルブルクの漂民のほか、表題作(作者と娘さんののんびりイギリス滞在記)と、戦後すぐの銀座で米兵らしい若者たちとの出会いを描いたエッグカップがよかったです。
女雛は中盤までムカつきながら読み、ラストにはほっとさせられたものの、何故か山岸凉子タッチで情景が浮かんでしまった。(こ -
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Posted by ブクログ
読んだ作品も多かったが、江戸時代、遭難した漁師が日本語学校の教師としてロシアで暮らす様子を描いた「ペテルブルグの漂民」、なぜか古びた女雛に特別の愛着を示す少女が不思議な「女雛」、イギリスでの行楽を楽し気に描いた表題作「緑色のバス」、学生時代に出会った、ドガの画の女に似ているという喫茶店で働く娘と、その回りにいた人間を思い出す「ドビン嬢」、終戦間もない時期に銀座の楽器店で出会った、サロオヤンをわれわれの誇りと言うアルメニア人兵士とのやり取りを描く「エツグ・カップ」、井伏鱒二など先輩、友人との東北旅行の思い出を記す「片栗の花」、これらは初めて読んだ。
アンソロジーにも良く選ばれる、書痴の恐ろ -
Posted by ブクログ
これも数年の積読だったもの。
大好きな小沼丹、ゆっくり楽しんで読んだ。
先日読み終わった「懐中時計」と異なり、こちらは初期作品。
この中では白孔雀と、紅い花、汽船だけは既読だった。
ニコデモ、登仙譚、バルセロナの書盗、などの時代場所の異なる作品を除いて、いずれも戦前、戦中の空気が漂い、ふわふわと詩的で、不穏な世界にのらりくらりとしたユーモアと仄暗いペーソスがある。
読んでいて巧みだと思ったのは、白い機影。
怖いし、気味が悪かったが、鮮烈な印象を残す。
好きなのは汽船、白孔雀、ニコデモ。
次に読み返すのはきっと上記3作だろう。
頗る、尠し、最后迄、悉皆、怕い、而も、こういう表記が目に賑やか。 -
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Posted by ブクログ
小柄で感じの良い女性。美人とは言えぬが愛嬌のある可愛い顔。でもなぜか太い赤い縁のロイド眼鏡をかけて台無しにしている。
そんなニシ・アズマが観察眼を生かして数々の謎を解く。
女学校時代の女子のワイワイした様子が楽しい。
でも風景も日本のようでいて、クリスティの本の舞台のような気持ちにもなる。なんだか不思議。
日常のちょっとした事件から殺人事件までニヤリとしたりヒヤリとしたり。
殺人事件のお話はけっこう人の汚なさがガッツリ出ていてギョッとするくらい。
独断で犯人を逃がしてしまうお話があり、これはスッキリしないなあ。
ニシ・アズマがビブリアの彼女たちに重なって、これを読んでからもう一度あのシーンを -
Posted by ブクログ
英文学者・小沼丹による「日常の謎」系、短編連作ミステリだが、たまに殺人も起きる。
愛らしい女性教諭ニシ・アズマ先生が赤い丸縁眼鏡を掛けると、
灰色の脳細胞が活性化し、名推理を披露、事件を解決。
但し、ニシ・アズマ先生には悪や犯罪を憎むといった強い意志は感じられないし、
犯人の動機にも、あまり関心はないらしい。
彼女にとっては、ふとした違和感の正体を解明するのが第一義で、
疑問が氷解すれば興味を失ってしまうアッサリした態度が、
受け止めようによっては、何だかちょっと怖い。
それから、学園内のドラマなのかと思って読んだが、
事件はほぼ学校の外で起きていた(笑)