【感想・ネタバレ】P+D BOOKS 緑色のバスのレビュー

あらすじ

小説と随筆をシームレスにつなぐ小沼の世界。

「グリイン・コオチと云ふ緑色の長距離バスがあつて、それを利用して娘と小旅行した。このバスは倫敦を出ると田園風景のなかを走る。巨きな樹立の続く竝木路とか、緩かな起伏を持つ牧場、森蔭に覗く町の教会の尖塔……そんなものを見てゐるだけで愉しかつた。」
早稲田大学の在外研究員として半年間ロンドンに滞在した経験から書かれた表題作のほか、江戸時代にロシアに漂着したある日本人が、現地で日本語教師として活動し、ついには世界初の露日辞典まで編纂したという史実に基づいた「ペテルブルグの漂民」、師と仰ぐ井伏鱒二ら文学仲間との東北旅行を描いた「片栗の花」など、小説と随筆を取り混ぜて11篇収録。
旧仮名遣いながら、ユーモアを交えた流れるような文章で、読者を小沼ワールドに誘い込む。

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Posted by ブクログ

大好きな小沼丹。
梅田の巨大書店で遊んだときに、ふとこの装丁が気になり買った一冊。
※外側はツルツル加工でカバーなし、中はペーパーバックなのでぴらぴらしている。

収録されている短編のうち、半分以上はすでに別の本で知っていたのだけど、この本自体が欲しくなり購入。
7本ほどの短編が含まれ、700円というお買い得な一冊だ。

ペテルブルクの漂民のほか、表題作(作者と娘さんののんびりイギリス滞在記)と、戦後すぐの銀座で米兵らしい若者たちとの出会いを描いたエッグカップがよかったです。
女雛は中盤までムカつきながら読み、ラストにはほっとさせられたものの、何故か山岸凉子タッチで情景が浮かんでしまった。(これじゃホラーだろ。)

それにしても全体に貫かれる、古式ゆかしい綴りに感動してしまう。
だって明治文学ならいざ知らず、1977年とかの文ですよ。
くんくんといい匂いがしてきそうな小沼さんの文が、目でも耳でも大好きなのです。

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2024年11月12日

Posted by ブクログ

 読んだ作品も多かったが、江戸時代、遭難した漁師が日本語学校の教師としてロシアで暮らす様子を描いた「ペテルブルグの漂民」、なぜか古びた女雛に特別の愛着を示す少女が不思議な「女雛」、イギリスでの行楽を楽し気に描いた表題作「緑色のバス」、学生時代に出会った、ドガの画の女に似ているという喫茶店で働く娘と、その回りにいた人間を思い出す「ドビン嬢」、終戦間もない時期に銀座の楽器店で出会った、サロオヤンをわれわれの誇りと言うアルメニア人兵士とのやり取りを描く「エツグ・カップ」、井伏鱒二など先輩、友人との東北旅行の思い出を記す「片栗の花」、これらは初めて読んだ。

 アンソロジーにも良く選ばれる、書痴の恐ろしさを描いた「バルセロナの書盗」などの有名な作品を始め、ミステリー色の強いものや歴史もの、大寺さんものなど、良く言えばバラエティーに富んだ収録作品が並んでおり、小沼作品が好きな読者にとってはお買い得な一冊。

 

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2024年02月13日

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