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推理小説はあまり得意じゃないけど、これは面白く読めた。解説でも述べられているように、それは私小説や随筆と地続きの表現だからだと思う。あまり人が死なないし、死んでも「殺されて当然」じゃないところがよかった。
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どこかユーモアの漂うのんびりとしたミステリー短編集。ロアルド・ダールっぽい。表題作が一番好み。架空の国が舞台の『王様』も、ちょっと捻った童話みたいな味があって良い。
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小沼丹。講談社文芸文庫で何冊か刊行されていて名前は知っているが、どちらかと言うと通好みの作家というイメージ。
『黒いハンカチ』が創元推理文庫で出たときに読んだくらい。
最近の中公文庫は、純推理作家ではない作家さんのミステリ的要素の強い短編作品を編集して刊行しているのが一つの特長だが、本作もそんな一冊。
とは言っても、雑誌「宝石」立て直しのために乱歩が編集責任者になったのは有名な話だが、乱歩の慫慂を受けて小沼が同誌に掲載した作品が五作もあるとは、ちょっとした驚きだった。
収録作の多くは、普通人がおかしな出来事に遭遇するという、いわゆる巻き込まれ型のもの。恐喝、窃盗、銀行強盗のような犯罪に絡むものもあれば、男女の出会い的なものなど様々だが、全体的にユーモアにくるんだ文章で、安心して展開を楽しむことができる。
AはBを殺したく、BはCを殺したく、CはAを殺したいと思っている『赤と黒と白』でも、この三すくみがどうなるのだろうとの期待を高めつつ、結末はあっさりと描いている。
ミステリー的要素が強いのは、表題作の『古い画の家』だろうか。カッパが棲むと言われる池の側にある古めかしい洋館。夏休みを利用して田舎の親戚に遊びにきた中学生だった語り手はその洋館に興味を持つ。そこに住んでいるのは、病人の男と手伝いの婆や。彼らは果たして何者なのだろう。好奇心に駆られた語り手は度々覗きに行く。そしてある時……。
文体、内容共に推理的要素が強い作品で、とても面白い。
『リャン王の明察』。似たような逸話があるようだが、リャン王と犯人?との知恵比べがこれまた面白い。
〈付記〉
解説にもあるが、妻を突然亡くした小沼は、作風を転換し、自らに準えた大寺さんシリーズを書き始めた(とのこと)。本書には単行本未収録の幻の第0作「花束
」が収録されており、編集の妙、文庫オリジナルの良さがある。