小沼丹のレビュー一覧

  • 小沼丹推理短篇集 古い画の家
    推理小説はあまり得意じゃないけど、これは面白く読めた。解説でも述べられているように、それは私小説や随筆と地続きの表現だからだと思う。あまり人が死なないし、死んでも「殺されて当然」じゃないところがよかった。
  • 懐中時計
    前々から辺りの友人達が「面白い面白い」言うていたので気になっていたのだが「貸してくれ」の一言が言えず、若しくは言ったけれども機会に恵まれずだったか、読めていなかった。漸く。

    素晴らしい。

    もっとしっかり感想書きたいのに言葉が出てこない。ただ何度も心がキュッとなった。盛者必衰と言うのかな、皆んな死...続きを読む
  • 懐中時計
    なんとも言えずいいです。日常に死がやってきて、その中を日々静かに過ごしている大寺さん。ありそうでないです、こういう雰囲気をまとった小説は。
  • 黒いハンカチ
    「ビブリア古書堂の事件帖5」に出ていて。
    面白そうだと思ったので。

    なぜか懐かしさを感じた。
    昭和30年代に書かれたお話なので、
    年代的に実際に体験した懐かしさではない。

    実際に目で見たわけではなく、
    話で聞いたのか、本で読んだのか、
    その出処がわからない既視感が、
    何とも言えず心地よかった。
    ...続きを読む
  • 黒いハンカチ
    大好き♪
    A女学院の教師ニシ・アズマが活躍する連作短編集。
    さらりさらりと事件を解決していく。
    なかには殺人事件もあったりするのだが、解説の言葉を借りれば「殺害動機など、生臭い部分は巧妙に叙述が避けられている」おかげで、爽やかで品の良い作品になっている。

    このようなタイプの作品は、中にはもの足りな...続きを読む
  • 懐中時計
    地面にどっかりと腰をおろしている小説である。それは怠惰ということでなくて、地面に接する面積が多いという事、即ち生きている者の生活が誠実に描かれている。
    言うなれば四角錐なんだけれども、そこに何らかの死が通過していく。
    四角錐に落とされた雫のように、重力に逆らわず通過するのだ。

    どれも良いのだけれど...続きを読む
  • 小さな手袋
    何だろう、この圧倒的な感じ。普通のことをごく普通に書いているのに、とてもかなわないと思わせる文章。またひとり、平伏したくなる文筆家に出会ってしまったという快い敗北感。とことん読んでみたい。
  • 懐中時計
    サスペンスぎりぎりのところで平凡な日常に踏みとどまっているようなバランス感覚。昔の新聞の四コマに出てくる暢気な父さんのような人物造形。何だか好みだ。
  • 懐中時計
    2008年12月16日購入

    淡々として味わいのある作品である。

    何ということはない事を書いて面白い。
    事件は起きるがその事件とのかかわり具合が
    あっけらかんとしてなんだか清々しい。

    日記を書くなら
    このように書いてみたいものだと思う。
  • 黒いハンカチ
    少し古い感じがかなり魅力的でした。謎解きもおもしろかったです。主人公の飄々として観察力の鋭いところが気持ちいい!
    短編集風なので読みやすいです。
  • 黒いハンカチ
    今から見れば、このころって言うのはファンタジー世界のごとき様相を呈しているのかもしれません。

    屋根裏でお昼寝がしたくなる本です。
  • 栞子さんの本棚2 ビブリア古書堂セレクトブック
    ビブリア古書堂の事件手帖で扱われた作品の抜粋集。作品のいくつかはビブリア古書堂の事件手帖で扱われなければ再販すらされなかった作品もある。この巻は冒頭だけのものもあれば、丸ごと載っているのもある。ただどんな内容かを知りたいならば、いいだろう。
  • 懐中時計
    大好きな小沼丹。
    途中まで読んで数年放置、最後までやっと読めた。
    毎日寝る前に少しずつ読んで、不思議な気分になった。

    突然奥さんが亡くなる大寺さんシリーズが含まれており、全体にほのかに死の匂いが漂う。
    でも淡々と時間と生活を描いていて、ここにしかない境地なんだなと思う。
    明るくはない、湿っぽくもな...続きを読む
  • 藁屋根
    毎日食べても飽きないごはんのような小説。藁屋根の家から見える樹海も、先輩作家から理不尽な仕打ちを受けたことも、異国で食べた味のしないカレーも、同じくらいの「平熱」で覚えていること、語ること。

    そこそこ幸せに生きるためのヒントが、そこにはあるような気がする。
  • 懐中時計

    うぅん、洒脱。それとどこかアートの香り。
    庄野潤三の様な“静”の小説家には間違いないが、作中で登場する謎と、解明も無くプツンと終わる話の様式が心地良い。特に表題作、『黒と白の猫』辺りは格調高い名作。
    他作も確実に巧いんだろうなと、読者の信頼を引き出させる一冊だった。
  • 懐中時計
     「黒と白の猫」からの四編は、いわゆる大寺さんもの。
     妻の突然の死。しかし声高に悲しみが描かれることはない。
      ー兎も角、死ぬにしてもちゃんと順序を踏んで死んで呉れりゃいいんだけれど、突然で、事務引継も何もありやしない。うちのなかのことが、さっぱり判らない。
     ここだけ読むと、奥さんの死を悼んで...続きを読む
  • 栞子さんの本棚2 ビブリア古書堂セレクトブック
    『ビブリア古書堂の事件手帖』に登場する本の原文が集められていて、いろんな本の入り口として触れるにはとても良い本でした。

    普段詩を読まないので寺山修司や木津豊太郎の詩を読めたのと、意外と読まないシェイクスピアに触れられたのがよかったです。
  • 村のエトランジェ

    これは取っ付きの遅さを後悔した良作家。
    短編が得意なのか、作品ごとに柔軟で多面的な魅力がある。
    一貫しているのは上品さと小気味いいユーモア、読んでいて楽しいミニミステリ要素。
    このコント仕立てと純文学のバランス感は意外と新鮮かもしれない。
  • 小沼丹推理短篇集 古い画の家
     どこかユーモアの漂うのんびりとしたミステリー短編集。ロアルド・ダールっぽい。表題作が一番好み。架空の国が舞台の『王様』も、ちょっと捻った童話みたいな味があって良い。
  • 小沼丹推理短篇集 古い画の家
     小沼丹。講談社文芸文庫で何冊か刊行されていて名前は知っているが、どちらかと言うと通好みの作家というイメージ。
     『黒いハンカチ』が創元推理文庫で出たときに読んだくらい。
     最近の中公文庫は、純推理作家ではない作家さんのミステリ的要素の強い短編作品を編集して刊行しているのが一つの特長だが、本作もそん...続きを読む