小沼丹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小沼丹の描いたエッセイです
知己にあたる人々が登場する知己エピソードがチラホラと出て、落語のような滑稽さがどれもあるのですが、既に故人であるオチが多々あります
冗談の言う間柄だった方が、いつの間にか流行り病で倒れていたり、数日前まで元気だったのにポックリ逝っていたり、サラリと訃報を流してエピソードを切っています
表現したいものをテーマのエッセイで、カラリと喪に服したような小説が描きたい、といったようなことを述べていました
「大寺さん」という軸になるキャラを産み出したことで、喪失を客観的に表現できるようになったそうです
湿度を除くことが出来たと、除湿機のようなキャラだそうです
おそらく小沼 -
Posted by ブクログ
大好きな小沼丹。
途中まで読んで数年放置、最後までやっと読めた。
毎日寝る前に少しずつ読んで、不思議な気分になった。
突然奥さんが亡くなる大寺さんシリーズが含まれており、全体にほのかに死の匂いが漂う。
でも淡々と時間と生活を描いていて、ここにしかない境地なんだなと思う。
明るくはない、湿っぽくもない。
本人の後書きによれば、このころ、なにを書くかではなく、何を書かないか、を考えて書いていたらしい。
エヂプトの涙壺、影絵あたりが好み。
小沼ワールドに浸ると接続詞まで漢字で書きたくなる。
真逆はマサカ、フトは不図。
これが母語で読める幸せ。
もっと読みたいけど、講談社文藝文庫は高いんだよね。
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Posted by ブクログ
「黒と白の猫」からの四編は、いわゆる大寺さんもの。
妻の突然の死。しかし声高に悲しみが描かれることはない。
ー兎も角、死ぬにしてもちゃんと順序を踏んで死んで呉れりゃいいんだけれど、突然で、事務引継も何もありやしない。うちのなかのことが、さっぱり判らない。
ここだけ読むと、奥さんの死を悼んでいないように取られかねないが、一見淡々とした言葉の連なりの中に作者の悲哀や喪失感が感じ取れる。
「エヂプトの涙壺」「断崖」「砂丘」の三編は、男女関係にまつわるサスペンス味豊かな作品。本書の中ではかなり異色な感じ。
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