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滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。
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Posted by ブクログ
史劇。 リチャード三世の悪役っぷりがはまり役。 イアーゴーを思わせる。 マキャべリさえ俺の弟子というだけのことはある。よく口が回る。不敵。 最後の独白はきわめて興味深い。
リチャード、あっぱれなヒール。前巻までは、頭が切れて行動力もあるニヒルな二枚目(中身)然としていたのに、主人公になるや否や冒頭からの悪人宣言、お見事!最後は小物になるところまで含めて、与えられた役を演じきった。 マーガレット、ランカスターの生霊。最年長のかなしみを纏う者。呪詛が紙面を埋め尽くすこの巻...続きを読むにあって、なお並ぶ者のいない呪いの名手! リチャードに殺された者たちが亡霊となって現れ、リチャードに対して口々に「絶望して死ね!」と絶叫し、リッチモンド伯ヘンリーには「生きて栄えよ!」と祝福の言葉を贈る。この場面は舞台で観たらさぞや圧巻だろう。 かくてテューダー朝は開かれる。
2012年にイングランドの駐車場の下で発見された遺骨が、つい先日リチャード三世のものと断定された。DNA鑑定の結果「疑いを差し挟む余地がない」とのこと。すごいなぁ。遺骨の写真を見て初めて知ったのだが、リチャード三世の背骨には湾曲が見られる。彼は今で言う脊柱側湾症だった。親近感を覚え、読んでみることに...続きを読むした。 見どころはやはり、リチャード三世の人物像。”I am determined to prove a villain.”と、冒頭で自ら悪役宣言。「せむし」のリチャードには人並みの幸せは望むべくもない。となれば、取るべき道は一つ。この世を憎んでやる、呪ってやる!この怨嗟の凄まじさたるや。 邪魔な人間は全員殺す。新潮文庫版表紙の面構えから予感はしていたものの、まったく惚れ惚れするような悪党である。きらいじゃないよ。 そんなこんなで、死ぬわ死ぬわ。とにかくリチャードの周りで人がいっぱい死にます。複雑な血縁関係を整理するため系図を書きながら読んでいたのだが、次々とバツ印がついていく。これはもう、クリスティ『そして誰もいなくなった』に匹敵する死にっぷり。ロンドン塔の二王子のくだりは、漱石の『倫敦塔』やミレーの『塔の中の王子たち』を思い起こしつつ。 『リチャード三世』は言葉、もっと言えば、呪詛の劇。極悪非道なリチャードの台詞はもちろんのこと、マーガレットの予言やラストの「絶望して死ね!」など、舞台上で吐かれる言葉は悪意に満ち満ちている。そういえば、こんなにも殺伐とした物語でありながら、血なまぐさい場面はほとんど見当たらないのも印象的だ。ここでは言葉が人を殺すのだ。
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