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Posted by ブクログ
数学教育の復活を目指すテロ組織「黒い三角定規」と闘う中学2年生浜村渚の活躍を描くシリーズ5さつめ(第6弾)です。
今回は第log10000章(つまり第5章)で浜村渚が修学旅行で京都に来ました。
オビに「京都の町は碁盤の目。二次関数の舞台になっちゃうんです♪」とありますので、やや展開が読めてしまうキライもありますが、京都の通り名に詳しくない方には、楽しめるかもしれません(詳しい方は、途中でだいたい想像つくかも)。
今回特に楽しめたのは、第log100章(つまり第2章)『鳩の巣が足りなくても』でした。
ここでは、「黒い三角定規」のメンバとして、中高一貫校の数学教師を解雇されたぽっぽ・ザ・ディリクレが登場します。
ディリクレと鳩の巣と言えば……、そう、「鳩の巣原理」ですね!
「鳩の巣原理」とは、
「n個の鳩の巣にn+1羽以上の鳩が入ろうとすれば、少なくとも1つの巣には鳩が2羽以上入らなければならない」
という原理です。
言ってみれば、「当たり前」となってしまう(だからこそ“原理”)話なのですが、これが数学では強力な論法として登場します。これを初めて用いた数学者がディリクレなのです。
本書では、この原理の証明は載っていませんでしたが、あえて証明してみましょう。
このような当たり前と思える事柄の証明に力を発揮するのは、「背理法」です。
そのために結論の「少なくとも1つの巣には鳩が2羽以上入る」を否定してみましょう。「すべての巣には鳩が1羽以下しか入らない」となります。
すなわち、n個の鳩の巣のそれぞれには、鳩が1羽いるか全くいないかになりますので、鳩の総数を考えるとそれはn羽以下になります。
ところが、問題の設定では鳩はn+1羽以上いることになっていますので、これは矛盾です。
よって、結論を否定した「すべての巣には鳩が1羽以下しか入らない」とした仮定が誤りであったことになりますので、「少なくとも1つの巣には鳩が2羽以上入る」が成り立つことになります。
この「鳩の巣原理」を使うと
「座標平面上にA~Eまでの5つの格子点(x座標,y座標が共に整数である点)が存在するとき、A~Eの中に中点も格子点になるようなペアが少なくとも1つは存在する」(P.145)
というような結構難しい問題も解決できちゃいます。ぜひ、考えてみてくださいね。
なお、浜村渚はこの「鳩の巣原理」の中にある一種の“やさしさ”で事件を解決してしまいます。
「そもそもディリクレは『鳩の巣原理』とは言わず、『部屋割り論法』と言っていたんだけどなぁ」というゲスな突っ込みを入れていた私は、この数学愛にやられてしまいました。
確かに気がつかなかったなぁ。
他には、難関中学入試では押さえておきたい「パップス・ギュルダンの定理」なども登場しますが、個人的に気に入った小ネタは、
「バナッハさんとタルスキさんに頼んだら、もう1個(バランスボールを)増やしてもらえるかもしれません」
という渚のセリフ(P.53)です。バナッハ・タルスキの定理が現実世界で実現できたら、スゴイでしょうねぇ。
ややネタバレになりますが、物語としてはキューティ・オイラーがいよいよ「黒い三角定規」と袂を分かつ展開になっていることも気になります。もともとキューティ・オイラーはテロ組織に似つかわしくなかったのですが、これからは「黒い三角定規」から独立したキューティ・オイラーと渚の絡みも楽しみです。
さらに、今回の解説はなんと、あの結城浩さんです。結城さんの「浜村渚の数学ノート」への見方もわかって面白いです。
ミルカさんと浜村渚の「夢のコラボ♪」が見られる日も近い?
Posted by ブクログ
数学を愛する中学二年生の少女、浜村渚が(警察と共に)数学テロリストに立ち向かう、シリーズ第六弾です。前の巻の終わりに、テロリスト集団「黒い三角定規」を率いていたドクター・ピタゴラスの死が知らされます。ドクター・ピタゴラス亡きあと、組織は新たな代表をたて、さらに数学テロを推し進めていくのですが、新たな代表となった人物は、なんと武藤刑事のかつての知り合いだった…。というところから始まり、浜村渚の数学愛があふれた内容となっています。
数学は相変わらずまったく分からないし、数式を見てもちんぷんかんぷんなのですが(笑)、図や表に助けられ、各章での言いたいことは何となく分かりました。黒い三角定規と関係なく数学を愛する人も登場し、数学を愛する人=テロリスト、ではないことが明示されます。当たり前ですが、大事なことですよね。
ドクター・ピタゴラスに従っていた人々が、全員新しい指導者に忠誠を誓ったわけではありません。黒い三角定規の組織は今後どうなるのでしょう。続きが気になる六巻めでした。
Posted by ブクログ
後書きを読むと、数学ガールの結城先生は、まだ本音では、このシリーズを認めてないのかな?
丁度、イチローの日米通算安打記録を認めないピートローズのように。
確かに大学レベル以上の高等な数学も扱う数学ガールに対して、浜村渚の扱う数学は、少し数学をかじった者にとっては常識で初歩的なものばかり。
しかし、数学ガールが淡い青春物語を絡めた「数学解説書」なのに対し、浜村渚は数学を使った「ミステリー小説」だ。分野も違えば読者ターゲットも違う。
この作品の妙味は、毎回、事件に数学がどんな風に関わってくるのかという奇想天外なアイデアの斬新さと、結城先生も指摘した鳩の巣原理のオチのように、テロリストをも改心させる浜村渚の数学愛に溢れた解釈の面白さにある。
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