白川紺子の作品一覧
「白川紺子」の「後宮の烏」「花菱夫妻の退魔帖」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
物語はいよいよ“結び”に差し掛かっていく。
(念の為――ネタバレではないものの、概要含め核心部に触れる記述もあり。前回同様ご容赦を)
それにしても今巻、シリーズ中最も緩急の激しい回であったかのように思える。いわばジェットコースターのような感覚。一気に空気が張り詰めたかと思えば、不意に弛緩と共に感泣を誘うような場面へと展開もする。
これがクライマックスへの序章かと言葉もない。
これまで「烏妃」として関わるべくもなかった者たちの存在――かつて禁忌と断じられていた他者との“つながり”。それらが一連の騒動(これが緩急を生むのだが)の狭間にあってより意味を深め、予期せぬ感泣を誘う。
寿雪を愛おしく想う者たちとの“つながり”。それが“日常”の尊さ、その価値をより高めていく。
それは無論、当の寿雪の心にもそれ以上のものとして宿りゆくのかもしれない。それを思うからこそ感慨もより深まっていくのだろう。
「烏妃」である寿雪が予てより強いられてきた禁忌。それを葛藤の中で破りながらも、培ってきた――寿雪当人としては“図らずも”と言わざるを得ないところもあるのだが……――人々との“つながり”。その“つながり”が、今此処で“寿雪を必死に救い守るため”にと人々を動かす源泉になっている。
「因果応報」――寿雪の心根がもたらし撒かれた種。それらが芽吹き様々な形をもって花を咲かせ、その豊潤な色香を伴って寿雪の元に還るさま。それを見て心が波立たぬは嘘であろう。
例を挙げればキリはないが、とりわけ“束の間の日常を取り戻した”寿雪に対しての「花娘」の振る舞い(心遣い)には、殊の外鳥肌が立つほどの感情に“身悶え”もした。
更にはそれらの様を綴る筆致だ。こと更押し売るでもなく“さらり”としているあたり、品と共に妙を感じさせるのだが、この品と妙がいわばこの巻での肝にもなるようだ。
また“結実”という意味では、一貫して物語の隅々に至るまで丁寧かつ緻密に描くことを徹してきた手法が、ここにきてより功を奏し“効いて”いると感じさせる。
物語が大きく動き出す中にあって、登場人物の人柄/為人、そして心情の機微などを子細に描いてきたことが、各々の“行動原理”を読みやすくしている。つまり、彼らが寿雪のために『なぜ』“動く”のか。その『なぜ』、行動を促す“背景”=根源/原動力が明確に見えてくるからだ。
手に取るようにその“なぜ”が分かるからこそ、感情移入もしやすくなるし、感慨深さも一層増す。
まさに描写の緻密さが生む功績だ。
いよいよ物語は最終局面を迎えていく。
Posted by ブクログ
遂に5巻だ。
軽重にかかわらず、此処まで悲喜交交の経験/経緯を経て、「烏妃」を背負う寿雪、そして彼女に関わる人々の命運が、いよいよ佳境へと誘われていく。
物語は最終局面へと。大きなうねりを伴って動き出す。
『取捨択一』――何かを選ぶということは何かを捨てるということ。全てをもっては征けぬ。その覚悟を持たなければならない、と……。
ひとりであること――人と関わらぬことを余儀なくされてきた「烏妃」としての寿雪ではあったが、否応なく人との関わりを知ることになる。それによりこれまで“ひとり”であった頃には有りもしなかった類の「苦悩」「不安」「喜び」「慈しみ」「憤り」「悲しみ」「淋しさ」「嫉妬」そして「愛」を知ることになる。ただそれらの感情は「烏妃」としてではなく彼女自身の内面と向き合うことに他ならない。それはつまり芽生えゆく“自我”を意味する。
更にはそれが“世”に変化をもたらすトリガー(銃爪)にもなること(それは懸念/憂慮でもあった)を、いよいよこの5巻では語っていく。
彼女の中に生まれた「感情」や「想い」。それらは蓄積された“経験”の中で育まれたものだ。
ただし、そのことが「寿雪」だけに関わる事柄ではないのもこの物語の要。世の激動をも意味している。
とりわけ寿雪、そして彼女を“想う”高峻――「冬の王」と「夏の王」であるふたり――に課せられた宿命(もしくは“責務”とも言えるのかもしれない)に係るからこその“えにし”である。
作者の筆致はなおも丁寧で、ともすれば“細かい”。ただそれこそがこの“ファンタジー”――中華幻想譚――をより確かな、リアルなものにしている。
作者が懐き、事の始まりより秘めるべく“理”が、物語に生きる一人ひとりの意志を介してより明白なものに、そして物語をより肌身に触れる感覚で震撼させていく。
さて物語は遂に終焉に向かっていく。楽しみと淋しさを、今、私は心の中に宿している。
Posted by ブクログ
これまで鈴子さんに執着してきた鴻夫人が殺され、問題は解決…と思いきや、明石の君を巡る謎は、まだまだ尾を引きそうです。
そして、孝冬さんの兄の恋人・薗部らく淡路島で鴻夫人と会っていた情報も。果たして彼女は事件に関係しているのか。
そして、どうやら鈴子さんのルーツは淡路島にあるらしいのです。
最近では「お祓い」を強制される花菱夫妻。刑事からは「木枯らしとともに現れる老婆の霊」を、宮内省の穂積からは「妹に恋する老人の霊」などを始末するよう頼まれます。
すっかり上流階級のゴーストバスターズとして使われているなあ…。と、思ったら、しかし孝冬さんもタダでは動きません。
相手から有益な情報を引き出したりもしています。鈴子さんなんて、穂積を論破してやり込めてしまいますし。
まだ新婚ですが、二人とも 本当に息のあったご様子。最初の出会いは最悪だったというのに…。
そして毎回、鈴子さんと孝冬さんのお召し物もすてきで読むのが楽しみです。冬なので別珍に雪華紋のコートに、半襟も雪。帯留めとタイピンのリンクコーデもすてき。