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この人は日本の医学部卒業したあと、アーユルヴェーダ資格の大学行って日本でアーユルヴェーダ医療を普及活動してるらしい。日本でアーユルヴェーダやるならこういう人の所行きたいけど本当は現地でやった方が良いんだと思う。観光客じゃなくて現地の人しか行かない場所教えてもらったし。
蓮村誠
1961年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業、医学博士。医療法人社団邦友理至会理事長。マハリシ南青山プライムクリニック院長。オランダマハリシ・ヴェーダ大学、マハリシ・アーユルヴェーダ認定医。特定非営利活動法人ヴェーダ平和協会理事長。東京慈恵会医科大学病理学教室および神経病理研究室勤務後、1992年オランダマハリシ・ヴェーダ大学、マハリシ・アーユルヴェーダ医師養成コースに参加。現在、診療にあたる傍ら、マハリシ・ヴェーダ医療医師養成教育、全国各地での講演活動、書籍執筆など、マハリシ・ヴェーダ医療の普及に努める
ヴァータ【風】 性質 軽い、動く、冷たい、乾燥している、澄んでいるなど、「風」から連想できる性質 人の特徴 こころが軽い、快活、気分や思考が変わりやすい、好奇心旺盛、浅く早い理解力、知識や体験を広く浅く求める傾向、素早い動作、からだが軽い、乾きやすい、冷えやすい、全身の臓器や器官の動き 乱れやすい時間 2~6時と 14 ~ 18 時 乱れやすい季節 晩秋から冬、雨季、台風 乱れやすい年齢 60 歳以上の老年期 からだ ・すらっと背が高いか、小柄で細身 ・顔の彫りは浅く、皮膚は冷たく乾燥肌 ・髪もパサつきがち ・スタミナがあまりなく、便秘気味 ・寒さに弱く冷え性。脳卒中、高血圧になりやすい 性格 ・明るくて快活 ・順応性があり理解も早く、いつも前向きで想像力豊か ・興奮しやすく気分が変わりやすい ・ストレスを受けて緊張しやすく、不安、心配になることも多い 行動 ・動作が素早く、歩くのも速い ・熱中しやすく衝動的で、食事や睡眠も不規則になりがち ・新しいことをすぐに自分のものにするが、持続力はあまりない 適している職業 接客業、デザイナー、写真家、教育者。
そんなとき、佳子さんが アーユルヴェーダ の評判を友達から聞き、早速サチさんを連れて来院したのです。 「先生、私の症状は老化ですから、どうしようもないですよね……」 理至先生は、サチさんの 寂しそうな顔を少し見ていましたが、にっこりと 微笑みながらこう言いました。 「意外と簡単に治る老化かもしれませんよ」 そして理至先生は、 アーユルヴェーダの脈診 を行ないました。 サチさんの左手首に一分間ぐらい触れていた理至先生は、ゆっくりと指を離しました。 「サチさんは、これまで随分長い間頑張ってこられたんですね。そのためにからだがとても疲れていますよ。とくに一番疲れているのは肝臓です。それは、サチさんが油を使った料理の残りものを長い間食べ続けてきたからではないでしょうか。その食事のせいで肝臓が疲れて、からだに必要な栄養素やエネルギーがつくれなくなっています。あと、きちんと消化できなかった揚げものの食事が、 未 消化のまま肝臓にたまってしまい、それが原因で脂肪肝になりかかっています。そのために軽い貧血もあります。
アーユルヴェーダは、中医学、チベット医学と並ぶ三大東洋医学の一つとされ、数千年以上前からインドに伝承する医学体系です。 生命を意味する「アーユス」と、知識あるいは科学を意味する「ヴェーダ」を合わせた言葉で、生命の知識または生命科学と訳されます。 アーユルヴェーダの守備範囲は大変広く、単に病気を治すことだけを目的とせず、人がほんとうに健康でいきいきと幸福に暮らすための知恵にあふれています。
次の表で示すように、西洋医学が提示する健康観では、人は健康か病気かに大きく二分されますが、アーユルヴェーダでは、完全な健康をステージ0とした場合に、健康レベルはステージ1~6に分けることができます。両者を比較すると、西洋医学の健康観で見る健康は、アーユルヴェーダでいうステージ1~3に相当するため、ほんとうの意味での健康とはいえません。サチさんの場合は、ステージ3に相当する状態だったために、西洋医学では健康であり、アーユルヴェーダでは、低い健康状態と判断されたのです。中医学などでは、ステージ3の状態を、未病という概念で表現します。
そんなサチさんの様子を見て、好奇心旺盛な娘の佳子さんは、とうとう我慢ができなくなって理至先生のクリニックに行くことにしたのです。 「ねえ、お母さん。理至先生のところって、お母さんみたいに病気じゃない人も来ているの?」 「うーん、そうみたいよ」 このとき、サチさんはしめたと思いました。なぜなら、自分の経験から、一度佳子さんも理至先生に診てもらってほしいと思っていたからです。 「でも、どうして病気じゃないのに行くの?」 「そうね……、あなたは自分がほんとうに健康だと思う? なんとなくどこか具合が悪いとか、もっと元気になりたいと思うことはない?」 「うーん、ないことはないけど……、でも、だからってお医者さんにいくほどじゃないわ。どこも悪くないのに行ったら変じゃない?」 「そんなことないと思うわよ。きっと何か素敵なアドバイスをしてくれるんじゃない?」 「そうか、じゃあ行ってみようかな」 というわけで、サチさんの 思惑 通り、佳子さんは早速次の土曜日に、理至先生のクリニックに出かけたのです。
「いま、“〝 どうして? どうして?”〟 って思っているのね。好奇心旺盛な佳子さんだから当然よね。脈を診るだけで、どうしてこんなふうにいろいろと分かるか知りたいかしら?」 佳子さんは「もちろん」と答えます。 「人のからだは、さまざまな信号を出しているの。その信号を三本の指で感じて読み取るの。ちょうど、テレビのアンテナが電波をキャッチして、それをテレビが映像にして映し出すみたいです。
「いまは、佳子さんの体質と、こころとからだの弱いところ。つまり、病気になりやすいところを見たのよ」 佳子さんは細かな理屈は得意ではありませんが、なんとく直感的に理解することは得意です。 「私にもできますか?」 「もちろんよ。指の使い方さえきちんと習えば、あとは自然に分かるようになってくるのよ」 「不思議だわ。どういうことかしら?」 「つまり、誰でも正しい指の使い方をすれば、きちんとこころとからだの信号をキャッチして、それを脳に伝えるから、あとはどんな信号が何を意味するかを勉強すれば、だんだんと分かるようになる。
「ところで佳子さん。話を便秘と生理不順に戻しますね。夜更かしを続けたまま、便秘と生理不順を治すことはとても難しいの。もちろん、薬を使えば一時的にはよくなるけど、それはむりやり薬で排泄と生理を促しているだけで、からだが自然に排泄や生理を迎えているわけじゃないの。でも、たぶん佳子さんの 夜 更かしは簡単には治らない かもしれない。なぜなら、佳子さんは、自分ではよくないと分かっていても、気がつくと一時、二時になってしまうから。だから、一つだけ続けてほしいことがあるの。たった一つ、とても簡単なことよ。
佳子さんは、三つのドーシャのうちの一つである「ヴァータ」を多くもつ体質です。ヴァータは、こころやからだに動きを生み出す力です。軽い、動く、冷たい、乾燥している、澄んでいるなどの「風」から連想できる性質があり、そのためヴァータ体質の佳子さんは、こころが軽やかに動き、快活で、好奇心旺盛です。ものごとを素早く理解し、行動も速い傾向がありますが、反面忘れやすくもあり、また、気分や考えが変わりやすいです。からだつきは細く、体力があまりないため、動きすぎるとすぐに疲れてしまいます。
ヴァータ体質の人は、次のようなことで体調を崩しやすい傾向があります。 ・睡眠不足、とくに床につく時間が遅いとき ・日常生活が不規則なとき、とくに食事時間や睡眠のサイクルがバラバラなとき ・活動のしすぎで、疲労が激しいとき ・就職、結婚、進学、転勤などで、人間関係や生活環境が変化したとき ・タバコ、煙、ほこりなどをたくさん吸ったとき ・外出、出張、旅行などが多いとき ・うるさい音、テレビ、ヘッドホンステレオなどを連続して聴いたとき ・スピーチ、カラオケなどをしすぎたとき ・風に当たってからだが冷えたとき ・排尿や排便、 喉 の渇きなどの生理的な欲求を我慢したとき ・長時間、空腹でいたとき ・唐辛子やタバスコのような辛いものを食べすぎたとき
これらの項目は、すべてヴァータを乱すものです。ヴァータ体質の方は、できるだけ避けるようにしましょう。ヴァータが乱れると、次のような症状が出始めます。 ・朝起きたときに、疲れがとれていないと感じる ・首や肩がこる ・漠然とした不安や心配がある ・考えごとが多く、こころが落ち着かない ・集中して考えることができず、散漫である ・食欲が不規則で、たくさん食べたり、食べなかったりする ・甘いものが衝動的に欲しくなって食べてしまう ・排泄物が硬くて出にくい ・寝つきが悪い、いつまでも床につこうとします。
ヴァータの乱れによって発症する病気には次のようなものがあります。 高血圧、不眠症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、不整脈、緊張性頭痛、不安神経症、双極性障害、 気胸、子宮内膜症、更年期障害、 骨粗鬆症、 網膜色素変性症、パーキンソン病。
「人は誰でも三つの質を合わせ持っているの。一つは風の質。二つ目が熱の質。これは火の質ともいうわ。そして三つ目が水の質。この 三つの質の割合によって、その人の性格や肉体的な特徴が決まってくる の。たとえば、純子さんのように火の質が強い人は、とても知性的で緻密なところがあり、努力家で、頑張り屋さんで、正義感が強いわね。それから負けん気が強くて 勇敢 だわ。からだは温かくて、消化力が強くて、食事はきちんととりたい人。あまりお腹が空くとイライラすることもあるの。髪は全体に柔らかくて、肌は少し薄くて輝いている。
甘いラッシーは、とくにピッタを整える効果があります。 なお、アーユルヴェーダでは、精白された砂糖よりも、きび砂糖のような未精製の砂糖をとることをすすめています。
乱れたピッタを整える基本はまず食事からです。食材、味、食べ方などを少し変えるだけで、ピッタを整えることができます。 ちなみに、ヴァータを整える基本は睡眠からです。十分な睡眠で休息を取ることが大切です。 また、カパを整える基本は運動です。毎日、適度に運動するとカパの乱れを防ぐことができます。
ピッタ体質の人は、次のようなことで体調を崩しやすい傾向があります。 ・過剰な努力や無理をして 力んでいるとき ・何かと闘っているとき ・討論やけんかなどでイライラしているとき ・時間に追われていたり、 焦っているとき ・正確さや緻密さにとわられて行動しているとき ・律儀 になりすぎているとき ・細かいことを気にしすぎているとき ・刺激的なこと( 賭博、競争、口論など)や否定的なもの(暴力、犯罪、批判的な本やテレビ番組)を観たり、触れたりしたとき ・衣類の着すぎや部屋の温度が高すぎるなどで、からだが熱いとき ・長時間日光浴をしたり、火の近くに長くいたとき ・火傷 をしたとき ・食後すぐに活動したとき ・夜遅く食事をすることが習慣になっているとき ・熱いものや辛いものの食べすぎや、塩分をとりすぎたとき ・アルコールをたくさん飲んだ
これらの項目は、すべてピッタを乱すものです。ピッタ体質の方は、できるだけ避けるようにしましょう。ピッタが乱れると、次のような症状が出始めます。 ・朝起きたときに、とてもお腹が空いている ・尿や便の色がとても黄色い ・イライラしやすく、攻撃的になったり、批判的になる ・何をしても満足感がなく、 虚しい ・汗をかきやすく、体臭がきつい ・常に時間が気になり、何かに追われている気がする ・ガツガツと勢いよく食べてしまう ・酸っぱいものが嫌い。食べると胸やけがする
カパ体質の人は、次のようなことでカパを乱してしまう傾向があります。 ・頑固に人の意見を受け入れようとしない、またはすべてを受け入れてしまうとき ・朝寝坊をしたときや、昼寝をしたとき ・日中、活動をしないでごろごろしているとき ・生活に変化がなく毎日がマンネリ化しているとき ・家や部屋がものであふれているとき(たとえば、冷蔵庫やタンスの中など) ・自分の気持ちや考えを表に出さずにためているとき ・隠しごとをしているとき ・過保護にしている、過保護にされているとき ・甘いもの、揚げもの、脂肪分を食べすぎているとき ・過食をしているとき ・朝食と夕食を食べすぎているとき ・体重が増加している、あるいはそれを気にしている。
これらの項目は、すべてカパを乱すものです。カパ体質の方は、できるだけ避けるようにしましょう。そして、もしカパが乱れると、次のような症状が出始めます。 ・朝起きたときに、からだが重く感じたり、眠気が取れない ・日中、眠気が取れない。とくに昼食後に眠くなる ・昼間は眠いが、夜遅くなると目が覚めて活動的になる ・考えや行動が 緩慢 になりがちになる ・気持ちが内向的で、暗くなりやすくなる ・自分に自信がもてない。どうせ自分はダメだと思う ・口の中が 粘ついて不快に感じる ・食べたものがいつまでも消化されていないと感じる ・食欲があまりない。空腹感を感じます。
カパを乱してしまうと、次のような病気になってしまいます。 花粉症、 慢性 副鼻腔炎、気管支喘息、糖尿病、痛風、肥満、心筋梗塞、脳梗塞、うつ病、白内障。
その他、乱れたカパを整える方法には、次のようなものがあります(付録1「〈どれくらい毒素がたまっているかが分かる〉アーマ蓄積度チェック」参照)。 ・毎日、規則的に運動をしましょう。運動は乱れたカパを整えてくれます ・朝は六時までに起床して、シャワーを浴びる習慣をつけましょう。六時を過ぎても寝ていると、カパが乱れてしまいます ・髪を洗ったら、できるだけ早く乾かしましょう。 濡れたままでいるとカパが乱れてしまいます ・日中は、できるだけからだを動かすようにして、ごろごろしないようにします ・いつも、からだを温かく保つようにしましょう ・生活に変化をつけるようにして、マンネリ化しないようにしましょう ・過度にものをためこまないようにしましょう。言葉、洋服、書籍、冷蔵庫の中身、あるいはお金など、なんでもためるばかりで使わないとカパが乱れやすくなります ・孤独にならないように気をつけて、親しい友人に優しくしてもらいましょう ・昼寝をしないようにしましょう。昼寝はカパを乱します。
「実はな、一カ月ぐらい前にここに来たときに、飯田からアーユルヴェーダというインド医学の話を聞いたんだが、君は聞いたことがある。
「三年ぐらい前から、梅雨になると具合が悪くなります。頭が痛くなったり、風邪をすぐ引いてしまいます。それに咳が止まらなくなります。あと生理が重くて、会社にも行けなくなるんです。病院で調べてもらいましたが、血圧が少し低いだけで、とくに悪いところはないと言われました。
美佐子さんの朝は、 全身のオイルマッサージ から始まります。この新しい習慣は、美佐子さんにとって、大きな楽しみとなっています。先日、理至先生の診察を受け、食事や生活の指導をしてもらったときに教わったのです。頭、顔、首、肩、腕、胴体、そして足と、全身にゆっくりと温かく、香りのよいオイルを塗っていきます。香りとオイルと温かさにゆるやかに包まれていく時間は、とても幸せな時間で、これまでの 慌しい朝とは比較にならないほどリラックスできます。
カパ体質の人は、からだが冷えやすい傾向があります。また、冷えはヴァータも乱します。つまり、美佐子さんはヴァータとカパの両方を乱しやすい傾向があるのです。風邪はヴァータを乱したときにかかる病気です。咳、生理不順、生理痛もヴァータが乱れて生じる症状です。これらは、とくにヴァータを乱しやすい梅雨に起こる傾向があります。
脈診では、現在のドーシャのバランスの乱れが、どのくらい過去に遡って存在するかを診ることができます。
アーユルヴェーダでは、朝の習慣のなかに、自分で行なう全身のオイルマッサージをすすめています。 オイルマッサージを日々の生活に取り入れると、ドーシャのバランスが自然に整い、こころのストレスが浄化されて、体力や免疫力が上がってきます。また、老化防止、美容・若返りにも効果があります。 巻末付録2でオイルマッサージの方法を紹介します(付録2「オイルマッサージの方法」参照)。ぜひ、試してみましょう。
「理想的な日々の過ごし方」 【朝】 早朝に起床する(理想は六時前まで) よく沸かした白湯をカップ一杯すする 排尿、排便を済ませる 体力の五〇%以下の運動をする(付録2「ドーシャ別の適切な運動」参照) 舌を掃除し、歯を磨く オイルマッサージをする 爪を切り、男性は 髭 をそる オイルでうがいをする(「Episode 10 理至先生からのワンポイントアドバイス」アーユルヴェーダのうがい法の項参照) 入浴またはシャワーを浴びる 瞑想をする(付録2「簡単リラックス法」参照) 清潔で季節や活動にふさわしい快適な服装を着る 食欲に応じて、温かい野菜のスープや穀物を軽く食べる 仕事や勉強をする 【昼】 昼食を季節や体調に合わせて食べる 昼食後、五~十分の食休みをとり、その後十~二十分の散歩をする 仕事や勉強をする 夕方はゆっくり過ごす、あるいは二度目の瞑想をする 【夜】 夕食を昼食より軽めに食べる 十~十五分の散歩をする 心地よくくつろげる活動をする 早めに就寝する
ごま油 ごま油には、製法によって 焙煎 式と冷圧式の二種類があります。通常よく見かけるのは、焙煎式の茶色のもので、冷圧式のものは色も薄く香りもあまりありません。どちらも甘く、やや苦く、熱の質をもち、ヴァータとカパを下げ、ピッタを上げます。ごま独特の風味が食欲をそそり、炒めものや揚げものによく使われますが、ごま油(とくに焙煎式のもの)はピッタを上げる質が強いため、毎日とっていると、目や皮膚の病気になりやすくなります。ピッタを乱しやすい(乱れている)方や、すでに目や皮膚の病気(結膜炎、眼底出血、じんましん、アトピー性皮膚炎など)にかかっている方はやめるか、冷圧式のものを少量とるようにしたほうがよいでしょう。
ひまわり油 ひまわり油は、甘く、熱く、軽い質をもち、ヴァータとカパを下げ、ピッタを上げます。ヴァータやカパが乱れ、からだが冷えやすい方、消化力が落ちている方にはとても合っている油です。しかし、ピッタを乱しやすい(乱している)方には向いていません。とくに夏や秋に使うときは気をつけています。
オリーブ油 オリーブ油は、甘く、苦く、やや冷たく、重い質をもち、ヴァータとピッタを下げ、カパを上げます。ピッタが乱れやすい
なたね油 なたね油は、甘く、熱く、やや重い質をもち、ヴァータを下げ、ピッタとカパを上げます。ヴァータが乱れやすい(乱れている)方やからだが冷えている方に合っています。
アーモンド油 アーモンド油は、甘く、やや熱く、重い質をもち、ヴァータを下げ、目によいとされます。眼精疲労でお悩みの方は使うとよいでしょう。
グレープシード油 グレープシード油は、甘く、苦く、やや渋く、重い質をもち、ヴァータとカパを下げ、ピッタを上げます。
ココナッツ油 ココナッツ油は、甘く、冷たく、重い質をもち、ピッタを下げ、ヴァータとカパを上げます。ピッタを乱しやすい。
ギーは、無塩バターを精製した純粋な油です。不純物をまったく含まず、オージャス(「アーユルヴェーダ 9つのキーワード」参照)にあふれています。ギーは甘く、重い質をもち、ヴァータとピッタを下げ、カパを上げ、消化力(アグニ)を強めます。ギーを毎日の調理に用いると、安定した強い消化力が維持され、免疫力が上がり病気にかかりにくくなります。また、ギーはこころの満足感や穏やかさにもつながります。ただし、肥満傾向の方や、コレステロールが高めの方は、あまりとりすぎないほうが良いでしょう。
その他の油 ピーナッツ油は、ラジャスの質を強くもち、ヴァータとピッタを乱します。また重く、カパも乱しやすい油です。いずれのドーシャの方もとらないほうが良いでしょう。
● まとめ ● 【ヴァータ】 適切な油……… ギー、ひまわり油、オリーブ油、グレープシード油、なたね油、アーモンド油 不適切な油…… ココナッツ油、ごま油、ピーナッツ油、紅花油、亜麻仁油 【ピッタ】 適切な油……… ギー、オリーブ油、ココナッツ油 不適切な油…… ごま油、ひまわり油、グレープシード油、なたね油、アーモンド油、ピーナッツ油、紅花油、亜麻仁油 【カパ】 適切な油……… ギー(少量)、ひまわり油。
月光浴は乱れたピッタを整える (Episode 6 ※4解説) 月は、太陽と反対で、冷たい質をもっています。つまり、月光浴は適度にからだを冷やす効果があるため、ピッタが悪化しているときにはとてもよい方法です。
ピッタを整える生活上の注意点(詳しくは付録1「〈どれくらい毒素がたまっているかが分かる〉アーマ蓄積度チェック」参照) 美しい自然に多く触れる。とくに湖や川などの水があるとよい テレビやパソコンは夜の九時以降つけない 夜に入るお風呂はできるだけぬるめにする 夕陽を眺める
「たぶん、今年の冬もそうだったと思うんですが、悦子さんは カパをためてしまう食事 をしていると思うんです」 「カパをためる食事ですか?」 「ええ、そうです。カパは、重くて、冷たくて、甘くて、油っぽいという質をもっています。悦子さんは、それらの質を多くもった食事を好んで食べ、それでカパをかなりためてしまったようなんです」 「あの、先生?」 「はい?」 「どうして、そんなことが分かるんですか?」 悦子さんは理至先生の話がとても不思議に感じられたのです。 「カパがたまっている、というのが脈に出ていましたから」 「だいぶたまっていますか?」 「ええ、かなりたまってますよ。小麦製品はお好きじゃありませんか? パンやパスタ、ケーキやクッキーなど」 「ええ、よく食べます。ダメなんですか?」 「それらはとてもカパが強い食品ですから、好んで食べているとカパがたまってしまいます。あと、アイスクリーム、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、揚げものや炒めものなどの油を多く使った食品、冷たい飲みもの、魚や貝などの魚介類などもカパをためる食品です。果物だとバナナやメロン、それからピーナッツなどのナッツ類、卵などもそう
「そうですね、夜遅くに食べてお腹が重いまま寝るとカパが増えますよ。だから、できるだけ少ないほうがいいですね」 「たしかに朝、お腹がもたれてるときが多いんです」 「そういうときは、鼻も詰まってませんか?」 「はい、そうだと思います。どうしたらいいですか?」 「夜はできるだけ、温かい野菜のスープや、にゅうめん、おじや、お 粥 のような消化によいものにしてください」 「なんだか病人食みたいですね」 「でも、実際、花粉症を治すためにするんですから」
花粉症のほんとうの原因は、カパの悪化です。本来カパは重い質であるため、急激に乱れることはなく、時間をかけてゆっくりたまっていきます。ですから、悦子さんの場合にも、カパは数年かけて徐々に乱れていったのです。ただ、症状として出始めたのが、突然だったというわけです。
カパをためてしまう食事 (Episode 7 ※3解説) 日本人がカパを悪化させる原因の大半は食事です。具体的には次のようなものがあります。 油の多い食事 例:‥ 天ぷら、唐揚げ、串カツ、中華炒め 牛肉、豚肉の料理 例:‥ ステーキ、とんかつ 魚、とくに赤身、青身 例:‥ まぐろ、かつお、さば 乳製品 例:‥ ヨーグルト、チーズ、クリーム ネバネバした食品 例:‥ 長芋、里芋、納豆、餅、オクラ、モロヘイヤ、メカブ 砂糖を使った甘いお菓子 例:‥ プリン、シュークリーム、チョコレート、ケーキ 精白小麦製品 例:‥ パスタ、うどん、パン、クッキー、ケーキ 果物の一部 例:‥ バナナ、アボカド、メロン、杏 根菜類の一部
カパの乱れを整える朝食 (Episode 7 ※4解説) 朝六時から十時まではカパが優勢になる時間帯ですから(「Episode 5 理至先生からのワンポイントアドバイス」ヴァータを整える「理想的な日々の過ごし方」の項参照)、からだは冷えやすく、消化力もあまり強くありません。ですから、花粉症がある方(つまり、カパがすでに乱れている方)は、次のことに注意して朝食を食べるようにしましょう。 午前八時までにからだが温まる食事を軽めに食べます。米やパンはカパの質が多く、朝食には適していません。また、ハム、チーズ、卵などもカパの質が多いので、食べないほうがいいでしょう 食事の量や質は、一日のうちで一番軽く、少なめにします 温かくて軽いスープを飲むのが理想的です 例1:‥ 押し麦と緑の野菜(とくに葉物)のスープ 例2:‥ ハーブティー
カパ体質の人が、冬に気をつけること (Episode 7 ※5解説) 乱れたカパを整える方法についてはすでに述べましたが(「Episode 4 理至先生からのワンポイントアドバイス」乱れたカパを整える方法の項参照)、ここではとくに冬の間に気をつけることをまとめます。 朝遅くまで寝ていないようにしましょう。冬は寒いのでどうしても寝坊しがちになります。遅い時間に起きるとカパが乱れます できるだけ、朝、五分でも十分でも結構ですから運動をしましょう。毎日行なう規則的な運動は、乱れたカパを整えてくれます 運動のあとは、シャワーまたは入浴をしましょう。からだを温めるとカパを減らすことができます 日中の移動は、できるだけ歩きましょう。近い距離の移動は歩くようにして、交通手段は使いません。エレベーターやエスカレーターの使用も控え、階段を使うようにします 昼寝をしないようにしましょう。昼寝はカパを乱します。昼寝がしたくなったら、歩いて目を覚ましています。
上半身の洗浄法 (Episode 7 ※6解説) ナスィアは、“〝 パンチャカルマ”〟 と呼ばれる、アーユルヴェーダの身体浄化法のうちの一つです。 上半身にたまったカパを体外に排出させるとても優れた方法で、アーユルヴェーダの専門医療機関で行なわれています。ナスィアが有効な症状や病気には次のようなものがあります。 鼻炎、鼻づまり、慢性副鼻腔炎、気管支喘息、花粉症、頭重感、脳梗塞、白内障、肺がん、抑うつ症、耳鳴り、耳閉塞感、メニエール病、慢性中耳炎など。 これらはみな、カパの悪化が原因で起こる病気です。冬に入る前、つまり秋にナスィアを受けるようにしておくと、これらの病気を予防することができます。
五感とドーシャの関係 (Episode 7 ※10 解説) 味覚は、ドーシャではカパに関係がある感覚です。カパのバランスが整ったので、より味覚がはっきりとしたのです。五感とドーシャとは次のような関係があります。 ・聴覚、触覚…… ヴァータ ・視覚…… ピッタ ・味覚、嗅覚…… カパ たとえば、ヴァータ体質の人は音に敏感です。あるいは騒音や大きな音楽を長時間聴いているとヴァータが乱れます。ピッタ体質の人は、美しい景色やきれいな装飾品を眺めたり、観たりするのが好きです。そして、カパ体質の人は、美食家が多く、また匂いにも敏感です。 仮に、それぞれの体質の人が、海水浴に行ったとします。
それは、「なぜ自分たち二人は、機能的にも、構造的にも問題がないのに、自然妊娠ができず、またようやく妊娠しても流産するのだろう?」ということでした。医師はとくに原因はないと言いましたが、ほんとうに原因はないのだろうか? 雄二さんは、とても不思議に感じていたのです。 雄二さんは再び里子さんが妊娠するときのことも考え、これからどうしたらいいかを考えました。そして、インターネットで不妊症に関するさまざまな情報を仕入れていきました。 すると、ある夫婦が自分たちの経験を元につくっているホームページを見つけました。 その夫婦は自分たちの健康状態を知り、整えていくのにアーユルヴェーダがとても役に立ったそうです。ご主人の受精能力が半分以下しかなく、自然妊娠はまず無理だと言われ、人工授精を五回行ないましたが、結局妊娠することができず、諦めかけていたときにアーユルヴェーダに出合い、診察を受けたのです。 診察の結果、たしかに夫の受精能力の低下が認められたけれども、食事や生活を整えたり、さまざまな種類の薬草製剤などで強めることに成功し、なんと 数カ月後に妊娠した、と紹介されていました。 雄二さんは、これまで西洋医学以外の医療にかかったことはなく、にわかには信じがたい内容でしたが、一度そのアーユルヴェーダという医療を受けてみるのはよいかもしれないと、直感的に思いました。
「まず、お二人になかなかお子さんができなかった理由ですが、お二人の生殖能力に若干の原因があります。西洋医学的に見た場合、雄二さんの精子数や運動率、また里子さんの排卵や卵管などの内生殖器の状態などには問題がないように思われますが、実際には精子と卵子の受精能力に少し弱さがあるようです」 「それは、どういうことでしょうか?」 雄二さんが不思議そうな 面持ちで聞きます。 「はい、アーユルヴェーダでは、生殖器のことをシュクラといいますが、お二人ともそのシュクラの力がやや弱くなっています。シュクラの力とは、精巣や卵巣において強くて丈夫な精子や卵子をつくりだす代謝能力のことを指しますが、それらが若干弱くなっているために、十分な受精能力をもった精子や卵子をつくりだしにくくなっている可能性がある。
それからというもの、理至先生は毎日のように家政婦さんに、足に油を塗ってもらってから寝るようにしました。そして二週間も経った頃には、もうすっかり寝つきもよくなり、途中で目が覚めることもなくなりました。
ヴァータは、人間関係や環境の変化などによって乱れます(「Episode 2 理至先生からのワンポイントアドバイス」ヴァータ(風)体質の人の注意点の項参照)。また、菜美恵ちゃんの場合、ヴァータがとくに神経の働きで乱れていたので、気持ちが不安定になったり、頭痛がするのでないか、と理至先生は言ったのです。
痰 がからんでいるときや、鼻水が喉のほうに下りてしまう場合には、一カップのぬるめの白湯に、ティースプーン四分の一ほどの塩と、黒こしょうの粉を二つまみ入れたものでうがいをするとよいです。痰が切れやすくなり、また鼻水を上手に吐き出すことができます。
痰 がからんでいるときや、鼻水が喉のほうに下りてしまう場合には、一カップのぬるめの白湯に、ティースプーン四分の一ほどの塩と、黒こしょうの粉を二つまみ入れたものでうがいをするとよいです。痰が切れやすくなり、また鼻水を上手に吐き出すことができます。
こころとからだを強くする油「ギー」のつくり方 (Episode 10 ※4解説) ギーは、すべての油のなかでもっとも純粋な油とされています。ヴァータとピッタを整え、アグニを強め、オージャスを増やします。定期的にとることで、こころとからだを強くすることができます。ぜひ、家庭でもギーをつくってみましょう。 【用意するもの】 無塩バター二〇〇g/鍋/スプーン/ガーゼ/ガラス容器 【つくり方】 無塩バターを鍋に入れ、中火で熱する バターが溶けだして黄金色の油になり、表面に白いクリームが浮いてきたら、弱火にする 表面の白いクリームをすべてスプーンですくいとる。このとき、鍋をかき回さないように気をつける 色が透明になり、鍋の底がわずかに焦げ始めたところで、火を止める ギーが冷めるのを待ち、ガーゼで数回濾し、密閉性のあるガラス容器に移して保存する 【使い方】 ・食用油として、どんな料理にも使える ・眠れないとき、額に塗ると眠りやすくなる
からだのリズムを整えるインド音楽
「由美子さんは、 がんという病気が“〝 全身病”〟 である ということをご存じですか? 全身病というのは、からだ全身にかかわる病気という意味で、その意味ではがん細胞の塊があるところだけを切り取ってもがんを治したことにはなりません。その証拠に、多くのがんが手術後に再発します。それは、からだにがんを発生させてしまう状態が残されたままになっているからです。逆に言うと、からだ全体の状態を正常に戻すことができれば、がんの塊が小さくなったり、完全になくなってしまうこともあります。アーユルヴェーダは、常にからだ全体の機能を正常に整えていくことを考えて治療を行なっていきます。 食事療法によって消化や排泄の機能を整え、 免疫力を高める薬草製剤を服用 し、そして パンチャカルマと呼ばれるからだの浄化法 によって、体内に蓄積されたさまざまな不純物を排出していきます。がんは遺伝子の機能に異常が起こった結果、細胞が無秩序に増殖する状態となったものですが、体内における消化や排泄あるいは循環などのさまざまな生理機能が正常に戻されると、そのような遺伝子の異常も正常化されていくのです。
私はこの治療を通して、人のからだの限りない可能性を 直に見ることができ、そしてがん患者さんを治療する勇気をいただいたと感じています。由美子さんのがんはその方よりもやや小さく、幸いまだ転移もないようですから、アーユルヴェーダの治療を集中して行なうことで、手術をしないで治せるかもしれません。ただ、私はいわゆる現代西洋医学におけるがんの専門家ではありません。いまお話しした内容はすべて私の経験した事実ですが、がんという病気を 侮ってはいけないと思っています。病院の検査などをきちんと受け、その都度様子を確認しながら、アーユルヴェーダの治療を進めていくことが大切だと思います。
昭雄さんにはそのことがよく伝わっていました。目の前にいる、自分たちよりもずっと若い医師は、まだ日本ではあまり知られていないインドのアーユルヴェーダという、いわば未知の治療を手がけており、自分の経験からもがんが治る可能性もあるが、ただ 闇雲 に奇跡を求めるのではなく、冷静な判断と双方の理解を十分にしたうえで治療していこうとしているのです。
「見た目にも、明らかにがんの塊は小さくなっています。病院の先生方からすれば、これほどの短い時間に、放射線を当てることもなく、また化学療法をすることもなく小さくなったことは信じがたいことかもしれません。しかし、何よりも確信をもっていえることは、大きさが小さくなったことではなく、由美子さんがよりよい健康状態を取り戻したということです。そしてそのことは、由美子さん自身が一番よく分かっているはずです。からだが軽く、壮快さを感じ、食欲や排泄などの生理機能が正常に働き、そしてもはや自分ががん患者であることさえも忘れるほどにこころが元気になり、喜びと力強さに満ちているはずです。由美子さんのがんの塊はまだありますが、由美子さんは もはやがん患者ではありません。幸運にも、由美子さんのからだは二週間のパンチャカルマで大変素晴らしい浄化がなされ、すでにがんの発育を許さないほどに、バランスが整っています。この状態が維持されれば、がんが大きくなる心配はないはずです。
西洋医学的な乳がんの治療は、第一の選択が外科手術です。大きさによっては、化学療法や放射線療法を中心に行なわれる場合もあります。 また、手術後の再発予防として、適性があればホルモン療法も行なわれます。 最近では、まず化学療法を行ない、がんの大きさをできるだけ小さくしてから、外科手術を行ない、できるだけ切除範囲を小さくする傾向があります。また、切除後の乳房の再建術も進歩しています。 いずれにしても、西洋医学的な乳がんの治療は外科的な切除が中心に組み立てられます。
日本人は欧米人のように古くから乳製品を食べる習慣がなく、近年になって食べるようになったため、まだからだがそれらを十分に消化できるようになっていません。通常、新しい食事(たとえば、日本人にとっての乳製品や、欧米人にとっての豆腐料理など)は、三世代にわたって食べることで、きちんと消化できるようになるといわれます。これは食の地域性を表すもので、アーユルヴェーダでは“〝 オカサトミア”〟 と呼ばれています。 日本人にとって、同じ発酵食品では味噌や醤油などはオカサトミアですが、乳製品はまだオカサトミアではないため、あまり頻繁に食べないほうがいいのです。
五つの浄化法は、浄化( = 排出)したいドーシャによって使い分け、現在、日本では次の三つの浄化法が行なわれています。 ・ヴァータを浄化する…… 経直腸療法(バスティ) ・ピッタを浄化する…… 下剤療法(ビレチャナ) ・カパを浄化する…… 経鼻療法(ナスィア) 体内において、カパは胸から上、ピッタは腹部、ヴァータはヘソから太ももにたまりやすい傾向があり、集まった場所からもっとも近い場所から排出していきます。 具体的には、以下の三つの手順にしたがって浄化をしていきます。 食事療法(アーマパーチャナ) オイルの供給(アビヤンガ)
瞑想がこころのストレスを取り除く (Episode 11 ※8解説) ここで紹介される瞑想は、TMと呼ばれるものです。 TMとはTranscendental Meditationの略で、超越瞑想と訳されています。これは、こころという枠を超越し、意識を純粋な自身への目覚めの状態、すなわち純粋意識の状態に導く技法です。TMは、四歳から始められる、とてもシンプルなテクニックです。こころを深くリラックスさせるとても優れた方法で、こころが受けたさまざまなストレスを取り除く助けとなります。