中脇初枝の作品一覧
「中脇初枝」の「愛子さん」「かしこく・やさしく・たくましい心をはぐくむ 世界のむかしばなし」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
横浜空襲と大阪空襲が描かれる。
著者の筆力に圧倒された二篇目。
愛子さんの壮絶な人生に息を詰めるしかなかった。
「穴の中の戦争」
白楽二丁目に掘られた防空壕に集まる隣組の5家族。隣組魂を説く組長。防空演習に出てこない白井さん。その息子の優介さんにお姉ちゃんは恋している…。「わたし」美智子の視点で、穴の中の人間模様が語られていく。
「愛子さん」
あれは、なんやったんやろうな…
防空頭巾とモンペ姿で穴の中に逃げる。
1945年6月1日、大阪に焼夷弾が降る。
家を焼かれ両親を亡くし、私の足は…。
もう失うものはないと思っていた。
親戚の家に厄介になり女学校を退学。
「ばけもんのくせに」夫の吐く一言が忘れられない。逃げ出した愛子さんは住み込みの家政婦になり、坊ちゃんと過ごす時間に安らぎを覚えていたが…。
わたしかてきれいやったのに
あんなにきらきらしとったのに
戦争で失われへんかった人生を
いつも見とる
わたしはもうすぐ80歳
戦争は終わったはずやけど
わたしの戦後は続いとる
若さも夢も希望も
全て奪われ耐えてきた
声を上げればたたかれる
何でわたしだけ
人の心はばけもんになる
羽化した白い蝉は
あっというまに黒くなる
溢れかえる人の波
行くあてもない
これで一人 あと六人…
わたしを見つけて
わたしを早う捕まえて
Posted by ブクログ
新聞の書評で知った本。
数年経ってるから、どんな本でしたっけ?と思いながら読み始めた。
面白い。とても。
1回目読んで、すぐにまた再読。
人名が変わるから、登場人物のそれぞれの関わりや生まれ等を意識的に読む。
武士の中でも士格と軽格で著しい差があり、町方も含め、社会の上下構造と日々の暮らし、人との付き合いにまで影響を及ぼす大きさ。
士格が故に苦しんだ、猪之助、板垣退助。
学校で学ぶ歴史は、やはり勝者の歴史なのだと実感する。知らなかったことが多い。
それは維新後の政治の世界もだけど、女性の参政権、傍聴権も。権利や自由が、なぜこの字を使われるようになったか。本来の意味であれば、権理であり、自在だと。ずっと、男性も女性も別々の苗字だったのに、大正になってから同性、女性は夫の姓にすることになったことを、嘆く喜多。
喜多は退助の羅針盤であり、良心であり、女性の先駆者・燈である。もともとの素質に加え、おなごだからと決めつけない家族、幼少期からの教育、手習いでの様々な出合いと、實と猪之助とのやり取り、全てが関係して結実している。
学問のすゝめに対する違和感。
喜多の、随所で出てくる考えに、心震える。
登場人物皆が生きている。通りすがりはいない。
志。
『今の政治家は、できることをするがが政治やと思うちゅう。できんことを政治の力でできるようにせんといかん。理想と希望を失わず、できんことをできるようにするががほんまの政治じゃ。』
何も変わっとらん…。
Posted by ブクログ
素晴らしい作品だ。
本書は、戦時中の満州で、全く異なる境涯の3人の女の子たちが出会うところから始まる物語。
戦争の過酷さ、無慈悲さが彼女たちを翻弄する。
しかし、それでも本作は、生きる希望の物語だ。
高知の貧村から、「分村」政策により開拓移民として家族と共に満州に渡った珠子。
皇民化政策により日本の教育を受け、満州に移住した美子。
横浜の裕福な貿易商の家庭に生まれ、ほんの少し満州を視察旅行しただけの茉莉。
この3人が一緒にいたのは、少女の頃の本当にいっときだけ。
だが、その時の記憶が、彼女たちのその後の過酷な人生を生きていくともづなとなる。
本書には、幾度となく「記憶」が出てくる。
私が生まれてくることを喜んでくれた人たちの記憶、幼い頃に一緒に暮らした記憶、愛してくれた記憶、懐かしみ、再会を待ち望んでくれていた記憶…
どんなに人生が過酷でも、誰かを想う気持ちや、誰がに想われていることが、生きていくよすがになる。
人は、人に想われることで、その人の記憶の中に刻まれることで、生かされる。生きてきて良かったと思える。生きていこうと思える。
本書の特徴の一つは、徹底的なリアリズムにある。
筆致は抑制の効いた文体で、読者の感情を煽ることはない。淡々と、出来事が記されていく。
また、満州や、そこで生きた人たちの戦時中や戦後の生活についても徹底的に調べ抜いたのであろうと感じさせる、自然かつ詳細な描写が全編にわたる。
本書の登場人物の人生が、単なる作り話とは思わせない力がある。
だから、読んでいて辛い箇所も多い。
でもだからこそ、本書に満ちる希望のこともまた、信じることができる。
人生で読むべき一冊を読んだと、素直にそう思う。