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「あたしの家、幸せにしてくれる?」お稲荷さんがあるために「こんこんさま」と呼ばれる屋敷に、末娘が連れてきた占い師。あやしい闖入者により、ばらばらだった家族が一転して――家族再生のものがたり。
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Posted by ブクログ
思っていたのとかなり違いました。表紙とタイトルの印象から、座敷童のような超現実的な何かによって再生される家族の物語だと思ったのです。 読み進めていると詐欺師の占い師が出てきて家族に取り込みます。この占い師の言動によって家族が変わっていく物語なのかなと思ったらそれもまた違いました。でもこの「思っていた...続きを読むのと違う」ということが、この作品の根幹にあるのではないかとも思えたのです。 家族であっても親子であっても長い間寝食を共にしていても、気付かない一面があります。この人はこんなことを言うんだ、こんなことをするんだ、こんな顔をするんだ。新たに気付くことにより変わることもあるのでしょう。 視点がスルスルと変わり、登場人物それぞれの思いの錯綜が見て取れます。思い込みによりズレていた思いが、修正されることでぶつかり合う。ぶつかることで初めてお互いを見ることになる。バラバラだった家族が最後同じ部屋でくつろぐ。それが象徴するように。 結局家族が抱えた問題は現実的には何も解決していないのですけどね。それどころか問題は大きくなっているのかも。でも、それでもホッと安堵の息をつくことのできる終わり方が素敵でした。 さて、どうでもいいことですが、詐欺師の占い師が読んでいるうちに「おそ松くん」のイヤミになってきたんですよ。見た目の描写など全く違うのざんすけどね。
酒井さんの表紙の絵に惹かれて購入。 あとから著者がこりゃまてまての人だと知った。 児童文学の人だと知って納得。優しくて不思議な文体だった。 酒井さんの絵がとても合う雰囲気。 近所からこんこんさまと呼ばれる大きくて古いお屋敷に住む歪な家族のお話。
9歳の「さち」という少女。 家族から疎まれている少女だ。 さちは、自分が疎まれていることに気付いていて、北鎌倉の古い自宅で、こっそり身を潜めるように暮らしている。 さちなりに、自分の家族、家をよくしたい、幸せにしてほしいと純粋に思っていたんだろうなぁ。 旭山の登場からドロン!までのお話は、まるで落...続きを読む語のようだった。 騙されたことで付き物が落ちたのか、同じ経験を共有したことで気が緩んだのか、最後は家族みんなが笑い合えてほっとした。 さちの名前の由来。愛らしくとか美しくとか、そんな大それたことでなくて良い、ただ幸せであるように、という都のささやかな願い。 親が考える幸せはなくても、押し入れの中で寝ていても、さちはさちなりに幸せなのではないかと私は思った。たっくんと夜中ふらふら散歩したり、そういうちょっとしたことで幸せを感じていたのではないかな。 家が居心地悪くても、外で楽しみをみつけてくる、子どものそういう逞しさを、さちから感じた。 中脇初枝さんのお話の、小さな子どもに対する視点がとても好きだ。
少し昔の北鎌倉のお屋敷が舞台。 バラバラだった家族の再生?の物語。 もう少し掘り下げて人物描写してほしかったし 詐欺師とのあたりがもう少しあっても良かったと思う 中編という感じで せっかくなら長編でしっかり書かれていたら もっとよかったけど… もつれてた家族の毛糸は そんな簡単にほどけないと思うか...続きを読むら…
さらりと読める短めの物語だった。始まりと終わりが印象的。 終わりは、このあと結局どうなったんだろう?と、それぞれの登場人物について思いを巡らせるけれど、それがまた良いのだろう。 食卓のシーンが、物語の進展とともに家族が再統合されていく様子をきちんと描写しているあたりがとてもいいなと思った。甲子が自室...続きを読むから今に出てきて、皆で高枝切りばさみの宣伝を見ながら買おうかという最後の情景が、これからの幸せをほんのり予感させるのに、ラストの一文が「寒が過ぎ、暖かくなるにつれて、森はますます深くなっていくだろう」なのは何でだろう?
よく行く北鎌倉が舞台ということと、 表紙が酒井駒子さんだったので、 興味を引かれて読むことに。 基本は、家族の繋がりを結びなおす物語。 鎌倉の景色を求めて読むと、物足りないことになります。 読後感は悪くないです。
家族の気持ちがバラバラになってしまった三河家。 まだ9歳のさちは家族の目につかないように身を隠すことを覚え、お母さんに当たられても無表情で姿を消し1人で声を殺して泣いていた。 自分の部屋のないさちが、どこで寝ているのかを誰も知らないという状況だった。 そんな三河家を再生させるには何が必要だったのか...続きを読む? 物語の中ではいろんなことが起きるけど、全てを動かしたのはお正月の朝だった。 さちが着物を着たその瞬間、お母さんはまっさらな気持ちでさちを見たんだと思う。 さちを疎ましく思っていた理由を抜きにして1人の娘として。もしかしたら初めて。 親子に限らないけれど、この子はこういう子だという印象はなかなか消えないものだと思う。 一度「こういう人」とインプットしてしまうとその前提から全ての解釈がスタートする。 だから同じ言葉でも言った人によって受け取る側の印象は全く変わってしまう。 誰かとの関係を改善したいと思うなら、それまで構築してきた人物像を全て消去して白紙の状態で相手を見るしかない。きっと。 それは簡単なことではないし、何も変わらないかもしれないけれど、自分の目を変えなければそこに映る相手の姿は永遠に変わらないのではないか。 さちが家族の前で笑えるようになったことが嬉しい。 三河家が本当に小さなきっかけから再生したように、形だけの笑顔を作らなきゃいけない日々はいつの間にか終わっているのかもしれない。 ある日唐突に心から笑っている自分に気付く。 そんな瞬間が訪れますように。
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