倉橋由美子の作品一覧
「倉橋由美子」の「蛇 愛の陰画」「P+D BOOKS アマノン国往還記」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
「倉橋由美子」の「蛇 愛の陰画」「P+D BOOKS アマノン国往還記」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
ビジネス・実用
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
Posted by ブクログ
面白かった。変な小説なので、変な小説がすきな人にはおすすめです。
まず頭でっかちの少年みたいな文体が印象的。たとえば主人公Qが自慰をする場面はこんな感じ。
>> ただ、密室内の一動物としてのQの行動をまったく外面的に観察すれば、それは単調にくりかえされるこっけいな動作からなっていて、生理学的には、興奮とそれにともなう脈拍増加、血圧上昇、発汗、局部の膨張と充血、脳波の奇妙な変化、などが観察されたはずである。(p.99)
これが小説内の出来事に薄皮を一枚かぶせたような効果を与え、読んでいるとぼくは大事なところに直接は触れられていないかのような不安を抱く。そんななかときおりあらわれる「部屋には新鮮な酸味を持った果汁のような光があふれていた (p.52)」のようなフレッシュな比喩。ぼくはこれがすきだ。
こんな文体で物語はどっかの島に主人公Qがたどり着くところからはじまり、島の住民の不思議な生態が語られる。キャラクターの心理よりも妖怪めいた外見的特徴や行動が記憶に残る。
会話も不自然でテーマを直接語りあっているかのよう。この小説のテーマと思われるものは(作者本人は否定しているが)主人公Qの持つスミヤキズムというマルクス主義のパロディーじみた思想に基づいた階級闘争である。
しかし、テーマを直接語りあっているかのよう会話のなかで、打倒すべき権力側にいる人達の言葉のほうが真実を捉えているかのように読めてしまう。Qの敗北がひしひしと予感されてぼくはさらに不安になる。
不安になる真実というのは、人類の歴史を階級闘争の歴史と捉えるQの思想の単なる敗北ではない。
そもそも歴史に意味なんてないんじゃないか。ただ生きているだけで、生きていることに意味なんかなくて、人を殺して煮て食おうが焼いて食おうが、本当はすべて許されるんじゃないかという不安である。
川村湊氏は解説の中で、ドン・キホーテは騎士道物語のパロディーだったが現代ではパロディーだけが生き残っているというようなことを述べている。
ぼくはドン・キホーテを読んだことないけど、今となっては勇敢で美しい騎士よりもドン・キホーテのほうが感情移入しやすいキャラクターなんじゃないだろうか。
60〜70年代の若者はこれを読んで「マルクス主義を愚弄している!」と憤慨したかもしれない。
その後の内ゲバやカウンター・カルチャーの敗北を知っている世代の若者はテロリズムの敗北を笑ったかもしれない。
いまの若者はおそらくそうした文脈から離れてこの小説を楽しめるだろう。
ぼくはQの革命の惨憺たる成功を見て、意味のない世界に意味を塗りつけようとするQの希望を、皮肉ぬきでこれがまさしく希望そのものだと思った。
Posted by ブクログ
よかった。なんだかなめるように読んでしまった。(ちょっと下品かしら)
それほど私の趣味にあっていたのである。というよりこの私の年齢にしてわかる本なのかもしれない。
しかし、文学が好きな方には是非お薦めしたいと思う一冊に間違いない。私が太鼓判を押す。
*****
倉橋由美子といえば昔1975年、横浜に住んでいた頃に取っていた朝日新聞の連載記事のひとつが忘れられない。
「神奈川50年 文学の風景」として神奈川を舞台にした文学作品、住み付いた作家が与えてくれたもの、感じたものの意味を探る、というコラムだった。沢山の作品、作家の中で倉橋由美子の記事に私は瞠目した。
伊勢原市大山のふもとに移り住んだ倉橋さんは、筆を絶っていたのだ。
1960年「パルタイ」でデビュー、61年「女流文学賞」62年「第四回田村俊子賞」などの文学賞を取り、絶頂だったろう、なのに「夢の浮橋」を書いた後「私にとっては育児も小説をかくことも片手間には出来ない」と休筆。
「パルタイ」の読者が「議論をしたい」と訪ねてきて、子育てに夢中な倉橋さんに「堕落だ」と言ったそうな。
違う違う、今にして思えばそれも倉橋由美子流の信念なのだ。
そのコラムが印象的だったのは、文学作品が読めなかった私の育児期間とだぶっていたく共鳴したからだ。(私は単に読者たり得なかっただけだから、次元が違うが)
「交歓」はその後の作品である。もう少し前に読みたかった。亡くなってしまったではないか!
桂子さんというのは「夢の浮橋」「城の中の城」「シュンボシオン」「ポポイ」というシリーズの主人公である。