小説 - シティブックス作品一覧
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-私立探偵の伊賀光二は、以前手がけた事件で殺し屋に両手の小指を落とされ、お尻までも犯されるという目に遭った。そのころ依頼人としてやってきた順子とともに、今は四谷にある事務所兼住居で暮らしながら仕事をこなしている。順子は助手であり愛人だ。 ある日、森元茂という男の依頼で女を捜すことになる。だが、それは伊賀にとって最悪の依頼だった。 捜査初日に何者かのグループの襲撃を受け、途方に暮れていると依頼人の森元が殺害されてしまう。 刻々と迫る危機に、私立探偵は自らに課したルールと行動力、推理力で困難と闘う。死と恐怖に立ち向かう、傑作長編ハードボイルド。
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-十年以上も前に終わったはずの男と女の不思議な関係。かつては売れっ子のライターだった男は鎌倉に住み、有閑の夫人や女医との付き合いに明け暮れる。酒に溺れ睡眠薬を多用するおとこを、かつての恋人だった「私」は優しく見守る(表題作「アダージョの恋」)。高校時代の女友達との久しぶりの邂逅で、遠い昔のことを思い出しながらも現状の生活を探り合ったり(「迷子が笑った」)、雄の飼い猫は飼い主の私に欲情する、訪れる男たちにも嫉妬し、彼らの服などにおしっこをする(「猫のヒゲ」)、若手俳優のベテラン役者への嫉妬に付き合う女優の気持ちの揺れ(「砂の花」)、甘味評論家の取材を通してその夫婦の生活のただなかに入ってしまうフリーライター怒りと困惑(「ようかん」)、など、様々な場面の男と女の嫉妬と愛情を描く5編を収録。
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-「いいかい、独りでやるの……。いっぱい、いくんだよ」 あてずっぽうにダイヤルを回してセックスを録音したテープを流し、電話に出た相手の反応を楽しんでいると、受話器からは女性の押し殺した息づかいと、「アア、アン」という声が──。 いたずら電話で知り合った美人OL片桐敏子とのセックスにいつしかおぼれていく英次。敏子のセックスは奔放だ。「舐めたい、英次のこれ……」「めちゃくちゃにされたいの」「ひびくわ、英次。とってもいい」「コレはわたしだけのもの」とベッドでは欲望が止まることなく色情を漏らし続けた。そして、ひさしぶりのテレホンセックスの最中に、敏子が突然はげしく喉を詰まらせたような声を出し、殺害されてしまう。現場に駆けつけた第一発見者の英次は容疑者となり警察の取り調べを受けることに。敏子のレコード盤コレクションを手掛かりに殺人犯を探す表題作のほか、女性たちが秘める奥深い性を赤裸々にしていく。 「新宿はぐれ地図」「笑え、デスマスク」「リップ・テクニック」「ディスカバー・ワイフ」「怨み肌」「真夏の夜の狂乱」「蜜のパートナー」「甘い夜のダミー」の9編を収録する勝目梓ワールド炸裂の傑作集。
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-風光明媚な熊本・天草の島々、休暇で訪れていた大鷹鬼平はバス乗り場で八尋雪枝と知り合いになる。 誘われて御所浦島の同じ旅館に泊まることになる。 雪枝は同じ島内に住む友人を訪ねる予定で、夕食後、友人の夫からの呼び出し電話で出かけていくが、その夜は戻らず、翌朝、溺死体としてフグの生け簀に引っかかっているのが発見された。 時間をおかず東京で、農林水産省の審議官という高級官僚が西銀座の地下駐車場で刺殺された。 まったく関係のない事件だと思われたのだが……鬼平は疑問を抱いた。 美しい海で、真珠貝とトラフグの二つの養殖事業を巡る問題が起きていたことが、どうやら事件にかかわっているらしいと鬼平は睨み、警察庁の宮之原警部に連絡を取る。 社会問題を含んだ壮大なスケールで描く宮之原シリーズの快作。
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4.0
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4.0高橋洋子の初期の作品集。デビュー作の「雨が好き」は中央公論新人賞受賞作。 列車の中で知り合った若い舞台女優と歳の離れた作家とのひと夏の恋愛を描く。知り合ってすぐに男は、鎌倉の家に来ないかと誘う。そこには四匹の猫がいるだけだという。秋になって別れた後、主人公の女優は、車の中で降る雨を見ながら「雨が好き」といった男を思い出し、逢いたいと思う。 「通りゃんせ」は芥川候補作になり注目された。 映画監督と若いカメラマン助手との間で揺れる女優を描く。強引で傲慢な映画監督と正反対の控え目なカメラマン助手に心は動いてゆく。 一本の映画の撮影の終了とともに監督との関係は終わり、同時にカメラマン助手との関係もばれてしまう。彼女は生まれ育った場所をおとずれ、自分を見つめなおそうとする。
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3.0好評、宮之原警部シリーズ。 松山駅近くの繁華街の駐車場でホームレスの他殺死体が発見された。 真っ黒に汚れた衣類、生ごみのような悪臭を放っていた。死体からは、トカレフ、胴巻きからはタレントの戸籍謄本が発見され、事件はセンセーショナルな様相を見せ始める。 半年ほど前に同じ管内の殺人事件を鮮やかな推理で解決に導いた、愛媛県警松山中央署留置所の看守、大鷹鬼平は、刑事の藤森とともに捜査を始める。 実は鬼平には頼る後ろ盾があった。 警視庁遊撃捜査係の宮之原警部だ。 捜査線上には、ホームレスの最後の目撃者、屋台のラーメン屋の親爺、専門学校の用務員、連れ込み旅館の仲居などが参考人として挙がる。 そこへクラブの美人ホステスから「ホームレスに尾けられた」という電話が入る。 鬼平は、ホームレスの身元が事件のカギと睨み、東京・代々木公園のホームレスの群れに潜入しようと試みる。
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-シティホテルの高層階の部屋の窓から夜景を眺める28歳の石野浩子。木村裕一には妻がいることを納得ずくで始まった関係も1年半になる。木村は罪悪感につきまとわれ関係を解消したいと考えていた。しかし今夜、浩子を後から抱きしめ「縛ってみたいんだ」と囁くと、彼女の全身が一瞬にして熱くなるのが伝わった。ふたりは単なる不倫の関係から別の関係になれるのか……(「色女」)。表題作をはじめ、最後の一線をめぐる最高の女友達との夜、マンションの管理組合で知り合った四十歳と三十七歳の既婚者同士など8組のスリリングな恋模様を描いた、切なく苦い、だけど最高に甘美な作品集。本書は、徳間書店より刊行された「横好き」を改題したものです。
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-札幌のホテル経営者の朋恵は経営のことで悩み、ひとり気持ちを整理するために襟裳岬を訪れた。 海霧が迫る岬で、朋恵は女性の殺人死体と遭遇する。 翌日、日高山脈を挟んで反対側の然別温泉で男の自殺と思われる死体が発見された。二人はともに郵政年金福祉事業団の企画課に勤務していた。 地元の目撃者や新聞記者の話から、単純な痴情のもつれによる殺人ではないと感じた朋恵は、大学の同級生の峡子に相談する。 峡子は警察庁に入庁し警視正というキャリアだ。そして紹介されたのは警視庁広域捜査官の宮之原だった。 宮之原の捜査で、事件は北海道と東京の二点を結び思いもかけないような広がりを見せ、複雑な人間関係が浮かび上がる。 著者の代表作「宮之原警部シリーズ」注目の一冊。
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-超一流の流行作家だった藤原審爾が放った動物小説集だ。 読み応え十分の中編が4作品。 狼が主人公で傑作との評価される「狼よ、はなやかに翔べ」、サーカスの目玉だった黒豹を描いた「黒豹よ、魔神のごとく襲え」、熊の哀しみと人間の無慈悲な凶悪ぶりを対比が見事な「赤い人喰熊」、そして、飼い犬として可愛がられた犬たちが野生化し、野犬となり、人間たちの憎悪の対象となっていく様に迫った「山犬たちが吠える雪夜」。 評論家の中島河太郎は、文庫版の解説でこうつづっている。「著者の動物小説の特色は、主役となった動物の側から描かれて、その心情と行動を見事に捉えている。人間との係わりもあるにしても、かれらの視点から人間の信頼と不信、ないし不可解さを導きだしたたしかさに驚嘆させられる」と。 必読である。
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-5月の長い連休が明けて、北アルプスに登った男が予定日を過ぎても戻らないという連絡が長野県警豊科署に入った。 県警から連絡を受けた山岳救助隊は、徳本峠小屋の近くで、絞殺された女と捜索願の出ていた男の転落死体を発見し、道原伝吉をはじめとした刑事たちが検死と現場検証に出向いた。 状況から推して、無理心中という見方があったが、道原は雪の荒れた跡の不自然さから他殺の疑いを持った。 関係者にあたるうちに、この事件の鍵は、ミズバショウで有名な尾瀬ヶ原にあると突き止め、19年前のある男の不審死にかかわっていることを見抜く。 複雑な人間関係を解きほぐし、意外な展開を見せる人情刑事・道原伝吉シリーズのスリリングな傑作。
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-夏の小樽運河に男の死体が浮かんでいるのが発見された。かつて小樽運河保存運動の中心的人物で、その後東京で画商として成功した男だった。 はじめは保存会の人間関係に原因事件のカギがあると思われていた。しかし絵画が異常な値上がりを続ける状態の中で、絵の売買にかかわることに捜査は広がっていく。 小樽の刑事は、東京の操作聞き込みに警察庁遊撃捜査係の宮之原に相談を持ち掛ける。そうしているうちに小樽に住む女性画家が殺害される。事件の魔手は一気に絵画流通の裏の世界へと伸びていく。 宮之原は殺害された画商の姪とともに核心に迫っていく。 大人気、広域捜査官・宮之原警部シリーズの社会派ミステリー!
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-重度の腎機能障害で苦しんでいる若い女性・麻也子は、幸運にも移植手術をすることができた。 麻也子は友人の弓子にその幸運について話すうちに、臓器提供者・ドナーが気になりはじめる。そのうちに、どうやら腎臓バンクから得られたものではなく、父親の財力による闇ルートによって得られた腎臓を使った生体移植ではないかと疑いを持つ。罪悪感も日増しに強くなる。 白馬の別荘で静養する麻也子は、弓子の勧めで、私立探偵を頼みドナー探しを始める。すると間もなく、探偵・出雲が鹿島槍ヶ岳で死体で発見され、その遺志を継いで調査を始めた探偵や病院スタッフも他殺遺体で発見される。 臓器移植を巡る異色の山岳ミステリー!
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-登山者の少ない北アルプス霞沢岳で、顔面を無惨に切り裂かれた死体が発見された。 ポケットにはコスモスの花びらが一枚入っていた。 八日後、遠く北海道警旭川東署から、旭岳で同じように顔面を刻まれて殺された死体が見つかったとの報告を、長野県警豊科署の道原伝吉刑事は受けた。 ポケットには同じようにコスモスの花びらがひとつ。 地道な捜査をつづけるが、連続殺人の輪郭を描けず、被害者に共通することは何も見つけられない。 捜査本部に行き詰まり感が漂いはじめた頃、第三の殺人の報が入った。 宿怨を抱く犯人とは誰か。 そして、殺された者たちに共通する行いとは何だったのか……。 刑事の鬼気迫る執念が、男たちの闇をあぶりだしていく。
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-上高地近くの、林道から外れた茂みの中で女の死体が見つかった。 10年ほど前に銀座でホステスをしていた女だった。その線から蕎麦屋の店主と娘を連れて駆け落ちをしていたことが判明する。当時2歳だった娘は中学生になっていた。長野県諏訪でひっそりと3人で暮らしていた。 同居していた元蕎麦屋店主の行方も知れなかった。 娘はいったんは殺された母親の福島の実家に預けられたが、出奔してしまう。 どうやら2人は行動を共にしているらしいと読んだ捜査員たちは行方を追い始める。 しばらくたって、女の新しい交際相手だと思われる諏訪の工場経営者が殺される。ますます元蕎麦屋店主への疑いを強くした道原たちは、長野から北海道への執念の追跡を始める。 大好評! 長野県警豊科署・道原伝吉刑事シリーズ。
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-手掛かりがなく、迷宮入りやむなしという、手掛かりのない3つの難事件に、豊科署の道原伝吉刑事が足を使い知力と執念で挑む。 表題となっている「仮面の雪山」。正月の北アルプスで遭難した大学後輩の救助に向かった中丸伊左男は、猛吹雪の中、捜索隊からはぐれ行方不明になってしまう。 二重遭難となったが、4日後、奇跡の生還を果たす。 しかし、そこには何かが隠されていた……。 「月の女神」は、大糸線穂高駅のホームで女性が倒れていたことが事件の発端。 おびただしい出血があり救急搬送されるが、病院に到着する前に亡くなった。検死の結果、銃弾による失血による死亡とされた。 数人しかいなかったホームでの銃撃だったが、銃声を耳にした者はいなかった……。 「絶頂の餓鬼」は、冬の北アルプスを山行していた4人パーティに悲劇が襲いかかった。 ストーブに使うホワイトガソリンが、水にすり替えられていた! 1人は生き残るが、3人が死亡。誰が何のためにそんなことをしたのか。 事件に潜む宿怨を、道原伝吉刑事が炙りだしていく。
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-長野県警の人情刑事・道原伝吉の山岳ミステリーの中から、「山脈」というタイトルを三作品集めた面白い企画の合本。 伝吉の執念の捜査手腕は、三作品いずれも嘆息するほど見事。 「地下山脈」 北アルプス・常念岳に登るといって出かけた豊科町に住む家具販売会社社長が行方不明になった。 翌日、稜線から大きくはずれた森林帯で、会社社長は遺体となって発見された。 凍死と思われたが、現場には複数の人間がいたことを示す足跡があり、遺体には殴られた跡なども見つかったことで、殺人事件となった。 捜査は難航したが、刑事・道原伝吉は、かつて銀座のクラブで働いていた実可子という女性の存在に辿り着く。絡み合った男と女の情念を、伝吉は丁寧にほぐしながら、捜査を進展させていく。 「崩壊山脈」 北アルプスから下山した岩佐は、都内の愛人宅に部屋のドアを開けたところで殺害された。 凶器は、ピッケルと思われ、登山経験者が疑われたが、手掛かりに乏しく、捜査は手詰まりになったあたりで、また登山用具を凶器とする殺人が起きた。 地道な捜査がつづけられたが、犯人どころか、犯人像さえ浮かばなかった……。 はたして、執念の捜査が実を結ぶのか。長野県警豊科署の道原伝吉刑事が、金と色の欲にまみれた犯行を暴く! 「死神山脈」 安曇野のホテルの一室で女性の遺体が発見された。 当然、部屋を予約し、チェックアウトして姿をくらませた日比野が容疑者とされた。 だが、刑事・道原伝吉は地道な捜査により、日比野をかたった真犯人がいることを突き止める。しかし、目的はわからなかった。 捜査がゆきづまりを見せはじめた頃、第二の事件が起きてしまう。 その事件も、日比野をかたった凶行だった。 捜査をすすめる道原は、穂高、安曇野、そして東京が、欲と保身によってつながっていることに気づいた。
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-短編集2冊、中編集1冊を合本にした読み応え版。 『白銀の暗黒』 読み応え十分の5つの中編ミステリーからなっている。 表題となった「白銀の暗黒」は、北アルプスの屏風岩で転落死した登山者のテントに別の登山者の凍死体が発見された事件が発端となった。 「潜伏」では、自分のミスから若い女性を死なせたこという思いから責任をとり辞職した元刑事が、数十年後、死の予感の中で、迷宮入りとなったその事件に、鋭い推理を働かせる。 『仮面の雪山』 手掛かりがなく、迷宮入りやむなしという、手掛かりのない3つの難事件に、豊科署の道原伝吉刑事が足を使い知力と執念で挑む。 表題となっている「仮面の雪山」。正月の北アルプスで遭難した大学後輩の救助に向かった中丸伊左男は、猛吹雪の中、捜索隊からはぐれ行方不明になってしまう。 二重遭難となったが、4日後、奇跡の生還を果たす。 しかし、そこには何かが隠されていた……。 「月の女神」は、大糸線穂高駅のホームで女性が倒れていたことが事件の発端。 おびただしい出血があり救急搬送されるが、病院に到着する前に亡くなった。検死の結果、銃弾による失血による死亡とされた。 数人しかいなかったホームでの銃撃だったが、銃声を耳にした者はいなかった……。 「絶頂の餓鬼」は、冬の北アルプスを山行していた4人パーティに悲劇が襲いかかった。 ストーブに使うホワイトガソリンが、水にすり替えられていた! 1人は生き残るが、3人が死亡。誰が何のためにそんなことをしたのか。 事件に潜む宿怨を、道原伝吉刑事が炙りだしていく。 『血の雪崩』 北アルプスの岳沢で、息子が雪崩に巻き込まれたとの報せを受け、冬山登山経験の豊富な父の中尾英助はただち救助に参加した。 夜になり、捜索はいったん打ち切りとなり、テントを張った。 翌朝、再開のはずだったが、中尾英助はテントの中で刺殺されていた。 捜索に参加した全員がシロとの判断が下される中、豊科署道原伝吉刑事は被害者のずさんな女関係に、事件の真相があるのではないのかと睨んだ……。 表題となっているこの「血の雪崩」のほか5つの短編からなる。 道原伝吉の、真実を見つけるための不断の努力、事件にひたむきに向き合う彼の姿に共感を覚えることだろう。
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-JR亀有駅北口交番に、「幼い頃、おもちゃ屋からダッコちゃん人形を盗んでしまった。二十数年経ったが、後悔は消えない。お詫びのしるしにお金を返したいが、かつてのおもち屋はないので探してほしい」との手紙と1万円が届いた。 心温まる美談として新聞記事になった途端、殺人が起きた。 作者によると、「この作品は、新聞に出ていた小さな記事がヒントになった」のだそうだ。 そして、次のようにつづける。 「私は毎朝、あるいは深夜、新聞を読んでいるが、ふと思考が、記事とはべつの方向へ流れてゆくことがある。映画を観ていても同じで、目はスクリーンを向いているが、脳は別の映像を映している。いずれも記事なり、映画の1シーンから起爆剤のようなショックを受けたためで、その一瞬が、長編小説の結末のヒントになる場合がある」。 いくつものどんでん返しがつづくが、驚きだけでなく、悲しくせつない想いにもさせらる超一級の作品だ。
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-長野県松本市で、ホテルの完成祝賀パーティーが開かれた。 国会議員、県会議員、市町村議員、そして長野県の財界人が集まる中、殺人事件が起きた。 被害者は、財界の重鎮。毒殺だった。 周囲には、秘書、役員、ホステスなどもいたが、誰ひとりとして、殺人が起きた瞬間を目撃していなかった。 誰がどんな殺意をもっての非道な行為をしたのか。 道原伝吉刑事は、被害者の過去を洗い出すチームに配され、地道に捜査に当たる。そして、被害者が裸一貫から財界人として成り上がってきたことがわかり、そこに何かがあると思いを巡らした。「偽装」より。 人情刑事道原伝吉が犯人の殺意を読み解く、全6篇を収めた短篇集。なお、収録の「避難命令」「弱味」は短編集『白銀の暗黒』にも収められています。
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-北八ヶ岳の山々の一つ、縞枯山は各地で桜の便りがきかれるようになった春先でも、まだ雪が舞っていた。 そんな中、行方の分からなくなった若い女性の捜索を始めた。 警察の捜索隊を中心に、登山パーティや山小屋の主人も加わった大規模な捜索にもかかわらず、行方不明の女性の発見には至らなかった。 かわりに右目を錐のようなもので刺され凍死したと思われる男を見つけた。その後、女の遺体が見つかったが、それは、行方不明になった女とは違っていた。 長野県警諏訪署の刑事、道原伝吉と貞松らが捜査を始める。 無関係だと思われた二つの遺体の関連性が次第に明らかになるにつれて事件は複雑で意外な展開を見せ始める。 道原と貞松の二人の刑事は、東北から関西に至る広域捜査で犯人を追う。 道原刑事の山岳ミステリーシリーズ初期の刮目作!
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-警察庁の警部、宮之原は親しい銀座のクラブのママから殺人事件の捜査を依頼される。大手の建設会社の役員だった男が、大宰府近くの公園で遺体で発見されたのだ。 死んだ男と親しかったホステスを伴って大宰府へ赴くが、はっきりとした手掛りもなく、やむなく東京へ戻る。捜査は続け、銀座の高級クラブを舞台にした金や利権に絡む、裏社会の実態が見え隠れし始める。政治家、官僚、天下り経営者、フィクサーなどが建設会社にむらがっていた。 不審死、そして不当逮捕された経済雑誌記者などの周辺から、宮之原は事件の核心に迫っていく。 旅情ミステリーと、金融と経済が激しく変化する日本の裏を鮮烈に描く社会派ミステリーとが見事に融合した上質エンターテインメント!
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-熱海の錦ヶ浦に少女の絞殺死体が打ち上げられた。 発見したのは、元関東管区警察局監察官の飯森であった。 彼は、横浜の警察署の捜査係長だった宮之原の手腕を見込み、警察庁直属の捜査係に引っ張ったその人である。 そうしたいきさつもあり、錦ヶ浦の絞殺死体の捜査を、宮之原警部が担当することとなる。 公開捜査によって絞殺された少女の身元が判明するが、なぜ、彼女は産んだばかりの我が子を、関わりのまったくない有名女性デザイナーの自宅の前に捨てたのか。そして、捨ててすぐに殺されなければならなかったのか。 この事件の裏にひそむ哀しく切ない人間の業を、若々しい宮之原があらわにしていく。
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-茶道の最匠流の若き宗家・最匠数真は、茶道の世界にはびこる悪しき風習の改革を掲げ、注目されていた。 数真には老舗和菓子店の一人娘早紀という恋人がいたが、周囲からは宗家の嫁に最適かどうかと陰口を叩かれていた。 6月のある日、最匠流の改革案をつくるために籠もっていた旅館で、数真はまき散らされた抹茶をかぶって殺されていた。捜査本部は異様な殺害方法に注目しながらも、恋人の早紀を最重要容疑者と見たのだった。 京都府警の魚津刑事は、捜査本部の方針に疑問を抱いたが、どうすることもできない。そこで警察庁の宮之原警部に捜査応援を依頼し、打開を図ることにした。はたして、宮之原警部は数々の因習の残る京都での殺人事件をすべて解明できるのか――。
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-京都の洛西、ニュータウン近くの大蛇ヶ池に投げ込まれたジャケットは強盗に殺害された男のものだった。遺留品には、本の所有を示す「蔵書票」があった。そして園内の岩から覚せい剤反応がある血痕も発見される。 殺され男は「蔵書票」作家で、池と反対側の左京区にはその美術館もあるのだという。確認のために美術館を訪ねた刑事が会った美人館長が、時を経ずして同じ池で他殺死体で発見される。捜査にあたり、京都府警内部で起こる軋轢。そしてまた殺人事件。どこまで連続殺人はつづき、犯人は誰なのか。 歴史ロマンを感じさせる「蔵書票」を巡り、古都に次々と起こる殺人事件。警察庁広域捜査官の宮之原警部とその上司小清水警視が活躍する人気シリーズ。
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-山岳ミステリーの第一者の作家人生、充実期の山岳ミステリー集だ。意表をつく見事な展開を繰り広げる3つの中編からなり、いずれの作品も筆が冴え渡っている。表題の『虚線の山』は、槍ヶ岳から戻るはずの夫を待っていると、深夜、見知らぬ女から、衝撃の知らせを受けた。夫は、女の部屋で急死したという。夫の死の原因は何か、本当にその死は病死だったのか。悲しみに暮れる中、妻は動き出す。 『氷の密室』は、生活苦からやむなく自分の臓器を売ろうと決めた男にもちかけられた怪しいバイト。「臓器を売る気になったんだから」、どんなことでもできるはずだといい、100万円を振り込んできた。男はそれが罠と気づいたが、すでに抜けられなくなっていた……。 『殺人・クリヤ谷』は、母が亡くなる寸前、一人娘の浩子は金を貸していたと教えられる。その額、1500万円。借金をしている、下町で印刷会社を営む東川は、小狡かった。 返済する気がないとわかり、浩子はある危険な申し出を東川にしたのだった……。
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-霧ヶ峰の自然が好きで、東京から何度も登っていた北村真由子が行方不明になった。 宿泊を予定していた山荘では、経営者の五代芳昭を先頭に、合宿をしていた多くの大学生らも加わって捜索がはじめられた。 同時期に、霧ヶ峰を大々的に開発しようと、地元民と交渉をつづけていた東京の業者の責任者が殺害され、遺体で見つかった。 自然を破壊し開発を強引に進めようとする業者と、地元民との軋轢が殺害理由なのか? そして、北村真由子は無事なのか。 帰還を願って捜索をつづけたが、山荘の近くのカラマツ林の中で、北村真由子は遺体が発見された。その近くからは、山荘の経営者・五代芳昭が愛用していた登山ナイフが見つかった。 警察では当然、五代を容疑者として取り調べることになったが……。 開発したい者と保存を願う者との思惑が絡んだ、長編山岳ミステリー。
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-長野県諏訪市の現職市長の愛娘で、東京の女子大に通う植草真砂子が失踪した。 内々に調べてほしいと市長直々の依頼を受けた諏訪署署長は、真砂子が暮らす東京のアパートに道原伝吉を派遣した。しかし、めぼしい手掛かりは得られず、公開捜査となった。 それをきっかけに、事態は動く。北海道の厚岸のタクシー運転手から、失踪した女子大に似た女性を乗せたという報せを受けた。諏訪署ではさっそく、道原刑事を北海道に派遣した。 北海道に赴いた伝吉は、車中で出会った20代女性アミに、生涯初めてとなる恋の予感を抱く。伝吉は事件の核心に迫るが、アミに心を奪われていく。伝吉初の、事件と恋の同時進行推理長編!
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-「あふれるほどの光」「金魚時代」「やわらかい肌」「半熟卵」は女子高校生が主人公。 時代は大阪万博や沖縄返還に騒ぎ、名画座では「いちご白書」「俺たちには明日はない」が上映されていた頃。東京タワーが校舎の窓から望める高校に通う衣莉子(短編によって蓉子などと名前が変わる)は同級生との間で恋愛とは呼べないような形で初体験をする。 体育館の用具室、校舎の奥まった階段、建築中の家に忍び込んだり、愛よりも好奇心で未熟な体の関係を続ける。 老人相手の猥褻なアルバイトなども経験する。しかし、大学受験、補習授業などの高校生としての現実にも直面する。繁華街の深夜のデートの中でも、彼女は考える。 「二人でセックスを試し、大人になったつもりでも、世間から見れば、鉢の中の金魚のような存在なのだ」
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-世界の四大奇書の一つと言われるのがこの本『金瓶梅』だ。その書名はほとんどの人が知っているはずだが、さてその全訳となると目にした人は少ないはず。なぜなら本書本以外、全訳がないからだ。この本では露骨な性交の描写も訳されている。 物語の舞台は十二世紀の山東・清河県。主人公の西門慶は正妻のほか五人の夫人がいる、そのうえに女中や乳母、使用人の女房たちとも関係をしているし、遊郭にも通う。色と欲とが絡み合った人間臭いドラマが流れている。 中国の性に関するおおらかさを楽しんでほしい。デジタル化にあたり、長大な物語を四つに分けて編集をし直した。
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-「変な男が家に上がりこんで、母を脅しています」――街の資産家と知られる家からの通報だった。 男を確保し取り調べを始めるが、のらりくらりと道原伝吉ら刑事の質問をはぐらかす。被害者の女性にも事情を聴いたが、見当もつかないという返答だった。だが、道原は犯人との微妙な食い違いが気になった。飼い犬が数日前に毒まんじゅうで殺されたことも引っかかる。それは刑事の勘だった。事情を調べるうちに30年前の不審死が浮かび上がり、一連の殺人事件にたどり着く。 道原の執念は薄皮をはがすように、事件の全貌を明らかにしていくと、そこには女三代の悲しみが流れていた。 大人気、人情刑事・道原伝吉シリーズ!
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-残業で帰宅が遅くなったときのために、自宅とは別にアパートを持つ――。 妻の承諾のもと、遠距離通勤しているサラリーマンにとっての夢のひとつを叶えた銀行マンの相原亮介だったが、一本の恐ろしい脅迫電話がかかってきた。その電話の主は、相原が別宅でもあるアパートに部下の女子工員を連れこんでいた秘密を知っていたのだ。 バラされたくなければ山に登れ。脅迫者はなぜか、山に登れと命令してきた。相原は銀行マンとしての立場を守るため、平和な家庭を守るため、脅迫者に従ったが……。 エリート銀行マンの夢が、どこで悪夢となったのか。人生の破綻にスポットを当てた異色の山岳ミステリー!
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-神戸の異人館[シムの邸]の持ち主、西条澄晴が六甲の別荘で殺害された。彼の愛人と別荘の敷地内に住む管理人・速水が発見し警察に通報。「十八番」というダイニングメッセージを残したという。 たまたま姪・冴子の結婚式の仲人を頼まれ神戸に滞在していた警察庁の宮之原警部は、姪のとんでもない行動によって事件に関わってしまう。 実在したラムネの創始者のアレクサンダー・キャメロン・シムと「十八番」というブランドが事件を複雑にさせる。そして風変わりなレストラン[花鳥風月楼]のオーナーで冴子の友人・美佐緒も関係がありそうだ。警察庁広域捜査官・宮之原警部の推理が冴える!
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3.035歳になったフリーライターの真弓子。元彼のDVのトラウマから過食嘔吐を繰り返す。 新しい彼〈蛍さん〉は、結婚してしまったが、彼との不倫関係は続いている。 ライターとしての仕事に窮した真弓子は、風俗雑誌のライターとして働き始める。取材に訪れたプチ風俗店で、青い瞳の男「グンジョー」に出会う。彼は渋谷あたりでうろつく少女たちを風俗店に売り飛ばす男だった。 グンジョーと出会ったことから、彼女の生き方は次第に転落の一途をたどる。一方グンジョーは正体不明の女「藍」の幻を追いかける。「藍」は救われない男たちに無償の奉仕をしている女だ。 リアルでファンタジックで、愛と性の狭間で壊れていく女、再生していく女を描く物語。
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-阪神淡路大震災から2カ月半ほどたった頃、愛媛県松山市のホテルで絞殺死体が見つかった。 その背中一面に桜の刺青があった。 暴力団同士の抗争かと思われたが、殺されたのは退官した高級官僚だった。 ひとり娘の話から、父親は西行法師に傾倒し、その足跡、事蹟を訪ねることが退官後の趣味だったといい、持ち物から肌身離さず持ち歩ていた西行の歌集「山家集」がなくなっていることがわかった。 娘の契は婚約者とともに捜査に同行する。 西行と桜の刺青と高級官僚、これらのキーワードによって事件は複雑になっていくが、次第に解き明かされる。 警察庁の宮之原警部が活躍する社会派ミステリー。
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5.02030年ごろ、世界は大きく変わっていた。 ことに日本は、東京が多民族都市となり、各地で自治区ができ、東北は福島を除く5県が自治区として独立してしまった。 ジャーナリスト丸谷は取材で訪れた山形で古代の遺物と思われる直径2メートルはあろうかという石の球体を見る。 多民族化した東京は古代文明に興味のある丸谷は再度、東北自治区への潜入を試みようとする。 自治区から逃れてきた生化学者を匿った上司が殺されたことから、東北自治区の企みが見えてくる。 古代文明の技術を超えた球体の存在は神の意思なのか宇宙からの技術なのか、思いあがった人類に何を警告しようとしているのか。 30年後の日本の状況を示唆する伝奇小説の傑作。