あらすじ
日清戦争から十年──じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。しかし、両国の激突はもはや避けえない。病の床で数々の偉業をなしとげた正岡子規は、戦争の足音を聞きながら。燃えつきるようにして逝った。
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Posted by ブクログ
坂の上の雲、3巻。
以下、ネタバレ。
この巻の序盤で、正岡子規が亡くなった。
子規についての知っていたこと、そのイメージが、この小説によって大きく更新されることになった。
いろんなところへ出掛けて、自分の感覚でこの世界の様々を、見て触れて知って解りたいと思っていたのだろうか。
限られた字数で紡ぐその世界を、写実的であることにこだわったという事実が、夭折した彼を思う時、なんとも切ない。
さてさて、物語は遂に日露戦争開戦へと突入する。
秋山好古は陸軍騎兵のエキスパートに、
弟真之は海軍参謀に。
彼らの活躍はもちろんだが、
今回の巻も周辺の人々についての記述が大変多く、しかも充実している。
小説なら許されるはずのケレンみは本当に少ない。主人公に関わる人々の細かな描写やエピソードを重ねて彼らの人となりを浮き上がらせるような所もあるのだが、その効果以上に、とにかく出てくる人物についての記述がたいへん細かい。こんなにたくさん、よく調べたなぁ…。
だから時々退屈だなと感じる部分も正直あるのだが、海戦の迫力などはその確かな描写でしっかり引き込まれるので、なんだか情緒が忙しかった。
閉塞作戦に携わった広瀬武夫や、
露のマカロフ中将…、
既知の内容の隙間を埋める壮絶な最期だった。
ここから先、陸の戦いが激しさを増してくる日露戦争。
さて、どんなふうに描かれるのだろう…。
続きが楽しみ。