角田安正のレビュー一覧
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イギリス生まれ、コルセット職人の子の労働者階級出身の知識人のトマス・ペインがアメリカ独立戦争蹶起を促した檄文の出版である。彼自身特別なわけではないものの、当時のムードがよく言語化されているらしい。
訳者があとがきで提起している「今の日本もそうなっていないか」という問題意識は、その国債発行が1. 土建国家時代の「誰も住んでいない限界集落にぴかぴかの国道が通っている」過剰なインフラ投資、2. 民主党-安倍政権時代の「死体に赤ん坊を食わせる」医療福祉補助金等、純然たる無駄・詐欺に繋がっているならば全くそのとおりである。
【引用】
- アメリカの大義は大部分、全人類の大義でもある。 (p. 11 -
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君主は頭。元老院は心臓。財務官は胃腸。裁判官は目耳舌。兵士は武装した手。役人は武装していない手。農民は足。国家は身分秩序の下、共通の目的のために協働している。ソールズベリのジョン『ポリクラティクス』1159
唯一最高の普遍的な政治的権威・世界帝国が秩序を生む。ダンテ・アリギエーリAlighieri『帝政論』1312
サン・バルテルミの虐殺(1572)。宗教による暴力が横行。悲惨。無秩序。秩序を取り戻すため、何者にも(ローマ教皇にも)依存従属しない主権者が必要だ。主権者は絶対であり、いかなる抵抗も許されない▼国家を国家たらしめるものは、主権的権力であり、それは絶対・永続・不可分である▼主権者 -
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アメリカ人と仕事をすることが多く、自分の行動原理や観念的な素地がそもそも米国人と違うことを日々感じていた。
ただそれを言語化できず認知できていなかった今の自分に必要な本だった。
本稿の中でベネディクトの示す「恩の貸借」の概念はとても納得感があった。
また「日本人の特性を子育てから見る」くだりも、なるほど全く同じではなくとも伝統的に親から受ける教育には戦前戦後共通項があり、それが日本人らしさに還元されているという考えは私たち20代にも共感できる部分があったと思う。
方法論的にもコロンビアのフランツ・ボアズから受け継いだ比較論がとても興味深かった。
国外に向けて仕事をする人は、まず日本をよく -
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日本人が相対的価値観にとらわれる理由
この本は日本人が相対的価値観(世間の目、人からの評判、身分、貧富の差等)に囚われがちであり、だからこそ相対的価値観とは逆の絶対的価値観(自分の軸で生きる)を説いている自己啓発本が人気が出る理由が分かった。
気付き
・恩と愛の違い
恩は返さなければならない、または返したい
愛は見返りを求めない
日本人は恩のほうが強い。これは義務感的な役割も持つ。
・恥の文化
日本人は自分が馬鹿にされたり、けなされたり、恥をかくことを気にする。
これは道徳心が自分の中にあるか、外にあるかが大きな要因。
キリスト教ならば、自分は常に神に見られているので自分の中に道徳を置く
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面白かったー
訳も読みやすかった。
特に第12章の子育てと第13章(終章)の戦後日本についてがいい。
第12章では西洋人から見れば矛盾している日本人の態度の豹変ぶり(戦時中の愛国精神から戦後の占領統治に従い得ないと予想されていたが、的外れに終わったなど。他にも多々ある。)の謎が解ける。
第13章は戦後日本の平和主義への方向転換に矛盾はないことを本書を通したまとめとして書く。よい。
個人的に、先日まで試験に合格するかしないかでかなり気を揉んでいたのだが、これが日本人的な思考だと論じられて、世界には同じ局面に対峙してもこんなに精神をやられないんだなと、自分が小さく見えたし、気持ちが軽くなった。 -
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プーチンが横暴なロジックでウクライナに侵攻する今、ロックの著書を読むことの意味とはと思ってしまう。
本書でロックは、民主主義と自由主義についてその正統性を説く。市民は自由に財産・生命・自由を自らの意志に従って保全する権利があるということ。そして立法権や執行権は一度社会契約として権力側に引き渡しているが、権力は市民の所有権を保全する形で権力を行使する必要があること。市民は権力が市民の権力を犯していると判断した場合には戦う権利を持っていることを論ずる。
それにしてもこの著作が書かれ、イギリスで名誉革命が起こったのが17世紀であることを考えると人類の進歩のなさに驚きを感じる。この思想を実現するために -
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ネタバレ太平洋戦争終結時に敵国日本がどのような態度に出るかを予想するために、アメリカ軍情報局が文化人類学者に指示し編纂された軍事報告書が元になっている本書。
当時、アメリカ軍は不可解な敵国「日本」に困惑していた。
最高の礼節を身に着けている にもかかわらず 思い上がった態度の大きい国民である など、これほど「~にも関わらず」という言葉が多用された民族は他にない。
極めつけは、戦争終結前に国民の大半が徹底抗戦を肚にくくっていたのに、戦争が終結するや否や、進駐軍に笑顔を振る舞いている。
この急激な態度の変化にアメリカ軍は面食らった。
以上のような状況を踏まえ、日本人がそのような態度を取るもしくは取 -
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元祖 民主主義・社会契約論である
イングランドのホッブズ著の『リヴァイアサン』
1651年に刊行。
まず言えることは、
この古典がなければ恐らく、
ジョン・ロック『市民政府論』、トーマス・ペイン『コモンセンス』、ルソー『人間不平等起源論』などの、民主主義を振興した古典達は生まれなかったであろうということ。
ということは、
名誉革命も、アメリカ独立戦争も、フランス革命もあの時期にあのように起こりはしなかっただろう。
歴史に「If」はないというのはもはや陳腐な言い方かもしれないが、このホッブズの『リヴァイアサン』に関してはそれほどのインパクトを与えた、今の世界を構成している民主主義国家の礎 -
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500P超えの大著。
アメリカの文化人類学者ベネディクトによる『菊と刀』
アメリカとの第二次世界大戦中に、
敵国日本の情報収集の意を担ったこの研究は、
表層的な日本の軍事行動ではなく、
日本人の行動原理を深層から理解するために、日本人の文化発祥から当時に至るまでの歴史的観点で、日本人ならではの文化特性を鋭く考察した著書だ。
この本は1996年の時点で日本語版だけで230万部を売る、1946年からのロングセラーとなっている。
1945年第二次世界大戦終結の翌年に出版されている。
日本人をアメリカ人の社会文化構造の価値観の中から判断するのではなく、
日本人の社会文化構造の根底からの理解に努め -
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イングランド生まれのジョン・ロックによる政治論・国家論『市民政府論』
この書はのちのアメリカ独立宣言やフランス革命思想の元になった歴史的名著である。
ホッブスの『リヴァイサン』に対して、
ロックは人間は本来ほっておいたら仲良くしているという前提に立っているところが一番の相違点。
自由主義や民主主義の父といえる存在である。
また、ロックは別の著書『寛容についての手紙』で政教分離という極めて明瞭な思想を展開しこれもまた非常に面白い本だが、聡明な人物だ。
人民と国家との在り方を書いたこの本には、
今読んでも古びていない内容であり、
欧米の国家の様相はこの本抜きでは語れないといえるだろう。
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社会主義関係の本といえば、マルクスにしろ、エンゲルスにしろ、とても難しくて、とても読みにくい。
用語が難解なこともあるけれども、なんだかこれらの本には、現代史上の思想的・政治的格闘による怨念がとりついているようで、おどろおどろしいところがある。
ロシア革命の立役者であるレーニンの書物も、もちろんそんな中の一つ。
有名な「帝国主義論」だから、読むには心してかからなければならない。
社会主義関係の本に共通なのは、本文が始まる前の「序文」がやたらと長くて煩雑なことで、「フランス語版への序文」とか「ドイツ語版への序文」だとか、「第1版への序文」とか「第2版への序文」とか「第3版への序文」とかいっぱ -
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[なれの果てに]ロシア革命において主導的な役割を果たしたウラジーミル・レーニンが、第一次世界大戦中にチューリッヒにおいて脱稿した著作。資本主義が高度に発達すると独占が必然的に起こり、それが即ち帝国主義となることを主張し、社会主義や帝国主義を考えるに当たり大きな影響を与えた作品です。訳者は、身構えることなく本書を手に取ってもらえる訳を目指したという角田安正。
その使用に伴っては、常に何らかの政治的意図が見え隠れしてしまう「帝国主義」という言葉/考え方ですが、レーニンが喝破したその経済的な発生の仕組みには改めて注目する価値があるように思います。ソ連の崩壊に伴い、レーニンと言うといわゆる「過去の