神崎裕也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ついに、完結。ありがとうございました、神崎先生、良い漫画を
単なる復讐モノではなく、友情や恋愛、仲間意識、精神的な成長が絡んだ、重厚感たっぷりな人間ドラマでした
失礼な事に、ドラマ版は観ていなかったので、甲乙は付けられないのですが、こうやって、漫画版の見事な幕引きを目の当りにしてしまうと、物足りなさを覚えてしまうのでは、と不安です
憎しみは何も実らせない、復讐は負の連鎖を生むだけ。それは事実でしょう
誰もが頭じゃ分かっているんです、けど、心から生まれるドス黒いエネルギーは押さえ込めません。むしろ、それが人間です。けど、暴れ狂うエネルギーを飼い慣らす事が出来るのも、また、人間だけでしょう
罪が犯した人間が自分の命を断つ事で、虚しい復讐を終わらせる、この自分勝手な行為が、「正しい」のか、「間違っている」のか、それは誰にも分かりません。潔し、と言えば聞こえはイイかも知れませんが、やっぱり、新しい悲しみが生まれる事には変わらないでしょう
それだけに、このラストはたまりませんね。これでこそ、『ウロボロス 警察ヲ裁クハ我ニアリ』でしょう
個としての復讐は終わった。けれど、まだ、この世には許しがたい悪が蔓延っている。道を踏み外した者だけが下せる、悪人への裁きがある、これもまた、勝手な理屈である事には変わりませんが、黒い興奮を覚えてしまう私もいます
現実的ではないかも知れませんけど、漫画の中にくらいは、この手の「正義」があってもいいと思います、私は
きっと、イクオは美月の前に、その姿を二度と見せる事はないでしょう。けれど、陰から彼女を見守り続け、また、美月もまた、彼を探し続けるでしょう。多くの事件を経て、自分なりの信念を得た彼女の事ですから、もしかすると、奇跡くらいは起こすかもしれませんよね
私も、それなりの年齢になって、多少の経験は積んだので、警察は正義の味方、悪い事なんてしない、なんて甘ったるい考えは持ってません。ヤクザより性質の悪い悪徳刑事もいるでしょう。実際、ニュースにもなっていますしね
けど、この『ウロボロス 警察ヲ裁クハ我ニアリ』を読んで、ちょっと信じてみたくなりました、中には「正しい」事を貫き続ける努力を惜しまない、本物の刑事がいるんだろう、と
「正しい」を保つ事は、そんな簡単な事じゃありません。でも、カッコいいですよね、周りの人間だけでなく、自分の中の葛藤と衝突を繰り返して、ボロボロになりながらも、「正しく」あろうとする人は。ヒーロー、ヒロインってのは、そういう人の事を言うのでしょう
この台詞を引用に選んだのは、日比野美月、彼女がいたからこその『ウロボロス 警察ヲ裁クハ我ニアリ』だった、と思ったからです。この作品の中で、最も成長したのは、誰でもない、彼女でしょう。そして、彼女はもっと、強くなっていくんでしょうね -
Posted by ブクログ
『嘘喰い』に負けないほど、精神的にスリリングなこの漫画
ついに実写映画化!! 一ファンとして嬉しい。しかも、主演が松坂桃李さんって、絶対にハズレじゃない。しかし、宇相吹を松坂さんが演じるとなると、多田刑事も、松坂さんに匹敵する演技力を持つ俳優である事が必要。一体、誰になるんだろう
公開は2018年だけど、今から楽しみだ
映画化決定で、宮月先生と神崎先生のテンションが高まったのかは定かではないけど、この(5)、今まで以上に攻めてきている
(1)で道を踏み外し、宇相吹の闇に喰われてしまった夜目刑事の姉・夜目結夏が登場
最初こそ、ごくごくまともな、妹思いである心理カウンセラーだと思ったが、やはり、宮月作品のキャラ。復讐者の面を持っていたか。しかも、宇相吹を殺すためなら、手段を選ばない危険性まで有している。姉妹揃って、破滅もとい自滅までの道をまっしぐら
しかし、そんな夜目結夏のインパクトを上回った展開が、多田刑事の記憶喪失
しかも、宇相吹正に関する記憶だけが、すっぽりと欠落しているのが皮肉
宇相吹に、ではなく、彼に壊された保坂によって殺されかけたショックが大きすぎたのか
仇敵に対する執着を失ってしまった多田刑事。けれど、これで戦線離脱とはならない
正義感は全く消えていない彼であれば、間違いなく、復活するだろう、しかも、以前より強くなって
ただ、光もまた、行き過ぎれば自分も他者も傷つけてしまう悪となる。彼であれば、それを自覚して、感情をコントロールできるだろうが、夜目結夏の暴走に引きずられる可能性があるから不安
今後の鍵を握っているのは、案外、百々瀬さんかもな
このキャラクターが複雑に絡み合い、ストーリーを加速させていく、ホントに面白い漫画だ
どの回もブラックだ。そんな中で、特に私の印象に残ったのは、第31話「浮気心」だった。自分の大切なモノを捧げた男が、他の女に目移りするのを許さず、見た目だけでなく性格まで変えさせた奥さんの束縛っぷりに悍ましさを覚えた一方で、宇相吹がちゃっかり新居を得たラストに笑ってしまった
この台詞を引用に選んだのは、先にも書いたが、光は決して善ではないのだな、と感じたので。言い分は立派だ。間違ってない。言われた者は、自信を得られるだろう、ただし、それに押し潰されないタフネスさがあれば、だが。人の最大の敵は、誰でもない、自分の心の弱さなんだろう。弱さを知ってこそ強くなれる。まぁ、話はそう簡単じゃないんだけども -
Posted by ブクログ
ホント、身の毛がよだつってこう言う事だな、とコミックスを閉じながら思う
ひよどり祥子先生の『死人の声をきくがよい』、押切蓮介先生の『サユリ』、または市川ヒロシ先生の『どんぶり委員長』とは違った意味合いで、夜に読んじゃならない類の漫画
他の読み手に薦めるのが、第一の目的であるレビューで、こんな書くのは本末転倒ではあるが、正直なトコ、「平然と」までは行かないにしろ、(1)からドロップアウトせず読み続けられている私の精神は、どっかズレてるんだろう、と感じる。多分、この『不能犯』がストライクゾーンに入る人間は、漫画の好みじゃなく、人間性に歪みがある。まぁ、そもそも、その歪みが個性を生むので、まともな人間性なんてのはありもしないんだろうが、この『不能犯』のストーリーに引き込まれ続けたら戻れなくなりそう、いや、戻れなくなる、と頭じゃ判っていても、面白い漫画を吸収して自分の糧にしたいって心は抑制できない
それだけの魅力が、この『不能犯』にある
宮月先生の原作に宿る何かを、ここまで漫画って形で引き出せるのは、星の数ほどいる青年漫画家の中でも、神崎裕也先生だけだろう
人間を、ここまで剥き出しにする宇相吹正の最終的な目的、それは自分の「呪言」の影響を受けない人間に自分を殺させる事。その瞬間に、彼は人間の本質を知る事が叶う。宇相吹もまた、人間としての自分の弱さに振り回されている一人か・・・・・・
そんな宇相吹に翻弄されまくりの刑事・多田
人を言葉だけで陥れ、絶望のどん底に叩き落とす宇相吹本人だけでなく、被害者を救えなかった自分への不甲斐なさに対する怒りと憎しみが綯い交ぜになった、ドス黒い感情に飲まれかけ、宇相吹へ「正義」の鉄槌を下そうとする多田
しかし、彼は越えちゃいけない一線の前にこそ立ちはしたが、踏み止まった
甘い、しかし、彼は間違ってないし、その心は弱くない、と私は思った
罪にこそ問えずとも、宇相吹の存在は悪だ。だからと言って、殺す事は正しい裁きじゃない。多田は、刑事と言う仕事を自分の意志で選んだのだ
男らしさや人間らしさでなく、刑事らしさを貫いた多田と、宇相吹の戦いはまだ終わらず、どこに向かう、いや、転げ落ちていくのか、それは誰にも分からない。神(原作者)のみぞ知る、と言いたい所だが、宮月先生も宇相吹の魔力に当てられてしまっているなら・・・・・・
宇相吹を“殺せる”人間に、多田はなってしまうのだろうか
一方、宇相吹を、多田と同じように、けれど、異なる理由で追い続ける保坂
宇相吹の闇、それが生む死に魅了された彼は、ついに踏み外してしまう、道を
宇相吹は、凶器を手にしない殺人者だ。自分の手は、決して汚さない。そこに美学があるかどうかは置いておいて、保坂は自分の手を血で染めた、その手に人の命を終わらせる感触を覚えさせてしまった。人を死に追いやっている以上、宇相吹も保坂も最低の部類に入るが、どちらが生理的に受け付けないかと言えば、保坂である。既に狭まっていたコイツの世界は、これから完全に閉じるな、どんな形で幕引きとなるか、は分からないけれど
どの話も強く記憶に刻まれ、それこそ、夢に出て来そうなレベルだが、個人的に推したいのは、第26話「顔」だ。下手をすると、性差別発言だ、と叩かれてしまいそうだが、女性の方が容姿の美しさに激しい執着を見せ、それを損なった時、復讐に駆らせるほど憎しみは燃え上がるな、と戦慄したので。女を「殺し」た宇相吹よりも、それを依頼した人間の方がよほど、おぞましい
この台詞を引用に選んだのは、言葉よりも宇相吹の表情が強く印象に残ったので。何故、宇相吹はこんなにも寂しさと物欲しさが両立する顔となったのか、何故、彼はそれを知りたい、と思うようになったのだろうか。ただ、私は思う訳だ、脆さと強さ、どっちかじゃなく、両方があって人間だろう、と -
Posted by ブクログ
ネタバレ北川警視総監を追い詰めるが、イクオの実の父親だと知る。また、結子先生が銃口を向けていたのはイクオではなく、その向こう側にいた北川だったことを知る。イクオは結子先生が思っていたままの存在だったと知り、安堵した隙をつかれ、北川に刺され、北川は逃走。北川本人も長年イクオにおびえて暮らしていた。
赤鼻に追い詰められる竜哉の元には蝶野がやってきて、参戦。赤鼻に追い詰められる竜哉と蝶野。その時相棒だった東海林を自殺に追いやった張本人が赤鼻だったことを知る。また、北川が蝶野の弟や美樹本警察庁長官を貶めるための駒にする予定で近くに置いたことを知る。いよいよ追い詰められた所にイクオが登場。赤鼻を撃退。
逃げようとする北川に、日比野さんがせまる。結子先生がまほろばの事件以降も生きていたこと。北川が一度結子先生の元を訪ねていたこと。北川は結子先生を本当に愛していたからこそ、わが子を手にかけても組織でのし上がると決めていた。続きが気になる。
最後は竜哉の番外編。神父が虐待をしていること、やくざの武器を隠し持っていることを暴く。 -
Posted by ブクログ
エグい、エグすぎる、ヤバい、ヤバすぎる
誇張でも何でもなく、そんな、語彙の少なさをわざわざ自分で曝すような感想だけで、この『不能犯』のインパクトが、既に読んでいる人には伝わるだろうし、未読の方にも警鐘を鳴らせるだろう
実際、こうやって感想を書いている、この瞬間も私の中で、「この作品をもっと多くの人に読んでもらいたい」って気持ちと、「この作品をここまで強気に推薦してしまっても大丈夫かな」って気持ちが半々、いや、3:7だ
なのに、何故、感想を書いてしまうのか
宇相吹の邪視に魅入られているっつーよりかは、下手にパニックを起こして、一度、ガッツリ合ってしまった目を外したら、一気に襲い掛かられる、野生動物と道でカチ会ってしまった時の危惧感に近い物が心中にあって、それを落ち着かせるために、徒労に終わると判っていながら、書いている感じ・・・・・・
もう、さすがに、3巻まで読むと、宇相吹正がホントに人間か、って疑うのすら馬鹿らしくなってくる。私の中で、完全に彼は『這い寄る混沌』と同格だ。もし、彼と優雅に会話できる可能性がある存在は、それこそ、『嘘喰い』の獏か、『魔神探偵脳噛ネウロ』のネウロだけだろう
この巻では、ついに、今まで宇相吹と対峙し、その闇を強い明の心で跳ね返してきた多田刑事の心がヘシ折られかけ、亀裂から毒が染み込み始めてしまっており、今後、ますます、面白くなりそうな予感が際立っている
この台詞を引用に選んだのは、人を滅ぼすのは悪でなく、時に善、しかも、自分の中にある正義感だ、そんな虚しい真実を衝いているから。正義感に関わらず、人はたった一つの物を信じる強さがあるゆえに、もし、仮に、唯一の拠り所を疑ってしまった瞬間、呆気なく、精神の均衡を崩してしまうのだ・・・・・・ -
Posted by ブクログ
ネタバレこの小説はちょっと独特でして、もう一冊「タツヤ篇」というのがあります。
2冊とも同じ事件の話なのですが、この小説の主人公であるイクオと、もう一冊の主人公であるタツヤのそれぞれの視点で話が進むという仕組みです。
こういう形の小説は初めてだったので、どう読もうかと悩んだのですが、どちらからでも先に一冊読んでしまったら、大体のあらすじがわかってしまうので、残りの一冊を読むのがしんどくなるかも、と思い同時に少しづつ読み進めることにしました。
というわけなので、イクオ篇にもこの感想と同じ内容を書かせていただきます。
それぞれの視点から描かれていますので、警察の捜査状況の進行具合、事件に絡むヤクザの事情が別々に詳しく書かれています。
単なる事件と思っていたのが、実は裏にはそんな事情が!みたいな真相(?)を見つけるような感覚が面白かったです。
人を撃ち殺したあとに「ドーナツが食べたい」って言い出すイクオもイクオだし、夜中にドーナツがある店を探し回るたっちゃんもたっちゃんだよ・・・。
このシーンとても好きです(笑)
だけど登場人物の中で一番危ないな~というのはヒトミです。
イクオが同じだと思ったのは境遇だけではなく、何人もの人を殺してきたし、そしてこれからも自分の目的を邪魔する者は躊躇なく殺す、という彼女のスタンスに共鳴したのかもしれないですね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレドラマにどハマりしまして、BDBOXまでポチってしまってる状況であります。
そんなわけなので、オリジナルノベルがあると知って手を出さずにはいられなくなったのです。
漫画は未読なのですが、そろそろ終わりに近づいているという噂を目にしたので、完結したらちょっとヤバいです。
(絵が苦手だと思っていたのですが、小説の絵を見る限り大丈夫な気がしてきました。こ、こわい・・。)
この小説はちょっと独特でして、もう一冊「タツヤ篇」というのがあります。
2冊とも同じ事件の話なのですが、この小説の主人公であるイクオと、もう一冊の主人公であるタツヤのそれぞれの視点で話が進むという仕組みです。
こういう形の小説は初めてだったので、どう読もうかと悩んだのですが、どちらからでも先に一冊読んでしまったら、大体のあらすじがわかってしまうので、残りの一冊を読むのがしんどくなるかも、と思い同時に少しづつ読み進めることにしました。
というわけなので、タツヤ篇にもこの感想と同じ内容を書かせていただきます。
それぞれの視点から描かれていますので、警察の捜査状況の進行具合、事件に絡むヤクザの事情が別々に詳しく書かれています。
単なる事件と思っていたのが、実は裏にはそんな事情が!みたいな真相(?)を見つけるような感覚が面白かったです。
人を撃ち殺したあとに「ドーナツが食べたい」って言い出すイクオもイクオだし、夜中にドーナツがある店を探し回るたっちゃんもたっちゃんだよ・・・。
このシーンとても好きです(笑)
だけど登場人物の中で一番危ないな~というのはヒトミです。
イクオが同じだと思ったのは境遇だけではなく、何人もの人を殺してきたし、そしてこれからも自分の目的を邪魔する者は躊躇なく殺す、という彼女のスタンスに共鳴したのかもしれないですね。 -
購入済み
気になるところで~
タッちゃんが、久しぶりに出てきたと思ったら、イクオのことだけすっかり忘れてしまって、ひどい!!二人が戦うなんて~。でも迫力ありましたね。タッちゃんの登場シ~ンといい、この漫画家さん、凄い画力だなあ。タッちゃんすごくキレイ。メガネしてないほうが素敵ね。イクオの動きカッコいい。それにしても、今度は警視総監のSPだなんてどうなるの?タッちゃん、殺してくれってどういうこと?次巻が待ち遠しいです。
-
購入済み
かっこいいです。
段野竜哉かっこいいです。ヤクザもビビる男っぷり。顔もキレイでクールで頭もキレる。ほんと魅力的。イクオも強くてかっこいいが、この二人どうなる?目が離せない。物語もだんだん核心にせまって次が楽しみ。
-
Posted by ブクログ
原作の宮月先生と、作画担当の神崎先生の歯車がカッチリと噛みあい始めたか、先巻よりダークさが増しているので、肉体的なダメージよりも精神的な負荷が得意じゃない人は注意が更に必要になっていると思う
人間の本質って善と悪、どっちなんだろうか? と悩む余裕すら与えてくれないほど、人の汚さ、自己中心さ、弱さ、が濃厚に描かれている
欲望を持っている方が、人間としてはマトモだが、自分で自分の欲望をコントロールできず、最終的に自滅する人間は悪じゃなく、弱者だろうな・・・
殺し屋である以上、宇相吹はヒーローとは言い難い。彼の仕事で人が死ぬことで、救われる誰かが確実にいないので、ダークヒーローとも言い難い。彼の立ち位置はとことん、殺し屋だ、実に卑しい
依頼者がいるから宇相吹は存在するのか、それとも、宇相吹がいるから依頼者が後を絶たないのか
人の脆さを自分の眼で見るために、最も効果的で、最もおぞましい手段を選ぶのに躊躇が無い、こんな知りたがりの宇相吹の瞳と舌は、悪魔すら殺しそうな気がする
自分の中の正義の在り方に迷いながらも、愚直に彼を追い続ける多田
このバカ素直な刑事の存在が、宇相吹の底知れなさを強調しているのだろう
あまりにも力量がありすぎるので好敵手とは言えない、彼らの関係が今後も続くのか、それとも、変化が生まれるのか、楽しみだ -
Posted by ブクログ
人間にここまで、残酷な話が書けてしまうのか・・・・・・
今まで、凄まじいまでの流血表現と肉体破壊、身の毛もよだつような殺し方をする犯人、相手を自分と同列の生物と思っていない、楽しさも興奮も欠落した無感情な言葉攻め、様々色々な、エグい内容の漫画をジャンルに囚われずに読んできたつもりだったが、ここまで読んでいて、心が捩じり軋ませられたのは久しぶり・・・いや、初か?
『ディアボロのスープ』や『今際の国のアリス』も第一級と言って差し支えないダークさが醸されているが、両作品ともまだ、善と悪の狭間で揺れ、迷い、決断を下せない生半可な人間がいるだけ、マシである
この『不能犯』に登場するキャラ、ほぼ悪人。しかも、主軸の宇相吹正(彼の負完全な『個性』を鑑みると、この名前も相当にキレてる)以外は、純粋悪でも完全悪でも必要悪でもない、ただただ、己の弱さに屈服した愚か者。残るのも善人っつーより、底抜けのバカ(もっとも、宇相吹からすれば、その『個性』が一等に厄介なんだろうが)
宮月先生が練るストーリーの冷酷さを、神崎先生の温度を感じさせない画風が見事に、全く損なわないどころか、異様に引き出している
これまでのサイコサスペンスに登場し、キャラや読み手を恐怖のどん底に引き摺り込んできた殺人鬼も使ってこなかったであろう、罵声による追い詰めならまだしも、言葉による巧みな誘導での強烈な思い込ませで標的を殺す、その設定がともかく惨新
何にも勝る凶器だろう、彼の言葉は。実際、タネさえ判れば大した事のないように思えるのだが、その単純さが、しばらく経過してから、一層に読み手の恐怖を煽ってくるのだ
一体、何者なのだろう、宇相吹正とは?
生まれながらに絶望を負った、業と咎が深い悪人なのだろうか? はたまた、何らかの実験により造られた天才犯罪者なんだろうか?
悪魔よりも惨酷で残忍で冷徹な人間であるのは間違いないだろうが、少なくとも、彼が話のラストで漏らす、「~~~だね、人間は」の“人間”には自分自身も含んでいるような気がしてならない。彼が動物を可愛がるのも、自分の心が些細であっても生まれる罪悪感を薄める為なのか?
気持ち悪い、おぞましい、でなく、心髄から、肌が音を立てて一斉に粟立ち、胃の腑を裏表引っくり返されるような、純粋な恐怖が湧き上がってきて、思わず、耳をキツく塞ぎたくなる、悪魔の甘い囁きが入ってこないように
仮に、私が選出委員の一人に選ばれたなら、『このマンガがすごい』の上位ランキングの候補に入れるのを迷わないだろう