円地文子のレビュー一覧
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「なまみこ物語」と「源氏物語私見」、昔は別々の本だったが、今は一冊になっているのね・・・。
「なまみこ物語」の方は、おどろおどろしいタイトルだけど、偽巫女のような意味らしい。
握った権力を盤石たらんとする藤原道長の容赦ない陰謀に、若き一条帝と中宮定子の愛はどうなってしまうのか、中関白家の命運は?と、ほぼ全編通じて目が離せません。道長の攻撃がクライマックスに達するところを、電車の中で読んでいたんですが、思わぬ展開に落涙してしまった。
同じ著者の「源氏物語」現代語訳同様、言葉の使い方など雅やかで、馥郁たる平安宮廷の世界に浸れます。
また、本作は著者が子供の頃に読んだ鎌倉か室町期の写本?と思われる古 -
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ネタバレ柄谷行人「倫理21」の中で言及されていたので読んだ。
70年代の連合赤軍が起こした一連の事件をモチーフにしている。八ヶ岳山荘事件(あさま山荘事件がモチーフ)に関連したリンチによる殺人罪(幇助)に問われた息子を持つ父親を主軸に展開される。
どうもこの手の小説を読むと気が立って仕方ない。そもそもの小説が三人称視点だし、神の視点で俯瞰してるわけだから抱く感情なのかもしれないが、加害者家族とそれに対するマスコミを始めとする大衆感情のようなものには辟易する。
この父親は、そういった日本の家族観を背景とした批判に取り合わず、成人した子の行動に責任は取れないとして謝罪も会社を辞めることもしなかった。
この -
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古典強化お薦め品その5。
まろやかで古雅な文体と、本来の文庫本サイズの小さいフォントのせいで、敬遠されてしまうかもしれませんが……。
著者が自分の幼い頃に、家で見た古書「なまみこ物語」(なまみこ=ニセモノ、半人前の神子の意)の内容をふと思い出し、記憶を頼りに綴ってゆくという形式の表題短編小説の主人公は、清少納言が仕えた悲劇の中宮・定子。
歴史の上では、彼女の一門は藤原道長の前にはかなくつぶされてしまったがために、悲劇の中宮とされているが、果たしてほんとうに、定子は不幸だったのか……? という、歴史の裏側からの面が書かれています。
「枕草子」と平行して読むのがお薦めです。 -
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第三巻は、宇治十帖。宇治といえば、百人一首にも選定されている和歌、我が庵は都の辰巳鹿ぞすむ世を宇治山と人は言うなり、が思い出されます。そして、宇治十帖はそのイメージに近いものがあります。
女三の宮と光源氏の息子、薫(柏木との罪の子)。
朱雀院の息子の今上帝と明石の中宮の息子、匂宮。
匂ふ兵部卿と薫の中将。ネーミングも素晴らしい二人の新ヒーローの愛の苦悩の物語です。
ヒロインは、宇治に隠れるように暮らす姫二人とその異母姉妹。桐壺院の第八皇子の娘達。八の宮は、政治的政略の波を受け、不遇の生涯を宇治で娘を慈しみながら過ごしました。
そして、美しい姫あり、と知った二人の貴公子の恋の鞘当てという感じ。
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「絵合」から「幻」
光源氏の栄華から終焉まで。
「玉鬘」から「真木柱」が玉鬘十帖と呼ばれています。十帖の、「初音・胡蝶」は春を、「蛍・常夏」で夏を、「篝火・野分」では、秋を、「行幸」は冬と、四季が織り込まれて描かれます。六条の源氏邸自体も四季を意識されています。この日本的な感性が、絵画や着物に長くモチーフとされているのかと思います。
「紫の上系」「玉鬘系」という分類の根拠は幾つかあり、それを知ってから読んでみても、ストーリーの収まりが良くて、全く忘れて読んでしまいました。
円地さんは、3部構成説でまとめられてますので、三巻は、光源氏の子孫の恋愛模様になります。
与謝野晶子さんは、2部構成です。 -
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11月14日 円地忌あるいは文子忌
円地文子さんの源氏物語を読ませていただく。
昭和42年から5年以上かけて、源氏物語口語訳に取り組み10巻の単行本としてまとめる。それを、若い人向けに3巻に凝縮。しかも前書きで知るところによると、先の口語訳で眼を患い、この完結版は口述でされたという。
若い方が入りやすいというコンセプトなので、必要充分な内容でストーリーを追いやすい。多少テキスト的な雰囲気はありますが、忘却防止用にも活用できます。
巻一は、桐壺から関谷までが収められています。各帖の表紙には要約が準備されていました。
先月の歌舞伎座で「夕顔」を観覧してきました。源氏と夕顔の逢瀬の場が、煌びやかな -
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雑感。
■なまみこ物語
・抑制の筆致
易しくない文章に耐えながらじりじり読んでいると急に面白くなる。え?いまなにかたいへん重要なことが起こらなかった?と思って数行戻って読み直してみると、深遠なる策謀が成し遂げられたところだったり、思いもよらぬ裏切りによるどんでん返しのシーンだったり。恋人の背信だとか、愛の奇跡だとか、なかなかにドラマチックな要素がてんこ盛りなのに、アップもなし、BGMもなし、のようなストイックさ。不親切といえばそうだが、その媚びなさにしびれる(なんて、ちょっと背伸び)。
・話の内容
も、すごく面白かった。まとめると、悪役道長の策謀と、それに負けなかった定子と一条天皇の無垢 -
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円地文子 「 源氏物語 私見 」 源氏物語論。
俗な源氏物語論とは違い、源氏物語の古典性(なぜ読み継がれるか)、文学性(男女の性を超えた 人間的テーマは何か)が よくわかる。
*源氏物語は女性文学か *六条御息所 論 *源氏物語の体系分類の整理 *西鶴文学との違い は秀逸
源氏物語 正篇を 33帖 藤裏葉までを1部、34帖 若菜から2部と区分し、1部を源氏に愛し愛された女性達の曼荼羅図とした。宇治十帖はあまり評価していない様子
著者の源氏物語論
*光源氏という光が中心→女性達が一つ一つ違う色香
*源氏物語=忍ぶ恋の物語→源氏の青年期に夕顔、成年期に玉鬘、晩年に女三宮
*源氏物語の本流= -
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ドナルド・キーン氏の自伝に出てきたものである。タイトルの「なまみこ」という音にとても新鮮な、そして不思議な響きを感じた。「なまみこ」とはいったい何であろうか。40年以上も前、著者の父の蔵書の中に日本文学者チャンバレン博士から引き継いだであろうと思われる数多の本の中の一冊であるらしい。表紙には「奈万美古毛乃可太里」と万葉仮名で書かれていたそうだが、次頁に「生神子物語・栄華物語拾遺」とあるのを見て、初めて巫女についての話だと知ったのだという。
一條帝の御時に二人の后、定子、彰子がおり、それぞれに仕えていた清少納言と紫式部の確執はつとに有名だ。この「なまみこ物語」は栄華物語をベースに書かれてい -
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源氏物語は高校時代の古典と「あさきゆめみし」で読んだ程度の私。百人一首好きということもあり、和歌を読みたい気持ちから、ふと手にとってみました。
原典をそのまま訳すのではなく、章(必ずしも原典の巻分けと一致してるわけではない)ごとに最初にあらすじをまとめてあり、本文では原典を訳しながらも物語として現代の私たちにも違和感ないように編集してある。
一巻は、光源氏の両親の出合いから、源氏が明石から戻り、権力も戻り、秋好中宮を入内させ、末摘花・空蝉と再会したところまで。
あさき〜の印象とは大きくは変わらないが、花散里の印象だけは、少しちがっていた。漫画では伝わらなかった部分が伝わってきた感じがする。
原 -
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円地文子の「なまみこ物語」と「源氏物語私見」が
講談社文芸文庫で一冊になっていたんですね。
どちらも名作中の名作。さっそく買って「源氏物語私見」から読みました。
作者が「源氏物語」を現代語訳したあとの随想で1974年の作。
今では源氏物語関連のエッセイは数限りなくありますが(特に去年は多かった)、
六条御息所と藤壺など源氏をめぐる女性たちや、光源氏の性格など、
それらのものの見方の根幹となっているような気がします。
六条御息所というと、嫉妬深い年上の女という面だけクローズアップされがちな
ところがありますが、彼女の教養の高さ、趣味の良さとともに、
藤壺と並ぶ、源氏が見上げるべき高貴な二人の