吉本ばななのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
原マスミ氏の画が、強烈に印象に残る。画だけでも十分楽しめ、何度も何度も手にする。『マリカのソファー』両親に、幼い頃から虐待をうけていたマリカ。保護された彼女のなかには、何人かの人格が存在し、みながみな、必死にマリカを守ってきた。彼女の人格のなかのひとり「オレンジ」の願いで、マリカとジュンコ先生は南国バリに旅に出る。虐待〜多重人格と、ありがちな筋とはいえ、やはりヘヴィだ。対比して、南の島の昼の眩しい日差し、ヌルッとした夜の感触、そんななかで、マリカのなかの最後にして最愛の人格「オレンジ」が消えてゆく。再生とか自立とかではなく、う〜ん、なんというのだろうか・・・うまく言えないけど、何度読んでも泣い
-
Posted by ブクログ
世間の評価とは全く関係なく、読者として、小説はすごくいいけど、エッセイは感性が合わない作家、逆に小説はイマイチだけどエッセイはたまらなく面白い作家というのがいる。
そりゃ、もちろん作家というからには小説を本業としているという自負があるだろうから、小説よりもエッセイがいいと言われるのは面白くないだろう。とはいえ、エッセイは書き手そのままが出てしまうので、そこで感性が合う人とは人間的に繋がったような気がして読むほうは嬉しい。で、吉本ばななは、私にとって後者の作家。中でも、この初期のエッセイは彼女自身あとがきでも書いているけど、若々しい失敗をたくさんしているという。でも、彼女が「失敗」と呼ぶところこ -
Posted by ブクログ
◆吉本ばななの人生を一変させた人々の言葉や生き方を紹介する「ひきつけられる人々」。特異な緊張感がみなぎる「海外に向けた仕事」。胸に迫ってくる「心をゆらす様々なできごと」他。大きな気持ちで人生を展開する人々を描き、また、独特の視点で生活と事物を見極める吉本ばなな初のコラム集。◆
『何かを創る人間にとって最も大切なことは昔から変わりない。自分が時代の空気を自由に呼吸し、得た感動を消化して作品にして、世間に還元しているという実感だ。』
『その人が徹底してその人であり続けて全うする人生ほどすばらしいものはない。そこには善悪はない。ただその魂の色と力が残像のように残るだけだ。』
『「(略)回復率の -
Posted by ブクログ
7話の短編集。すべての話において主人公の女性が不倫を経験、もしくは継続中、あるいは母や祖母などが愛人だったなど不倫にまつわる出来事が語られ、話の舞台はそのほとんどがアルゼンチン。(ひとつだけブラジルに住む友人の話)ばななさん自身によるあとがきによると、小説中のエピソードの多くは、アルゼンチンを旅したばななさん自身が体験したものによるそうだ。ただ恋愛的な要素については、実際はなかったそうだが・・アルゼンチンって不思議な国だと思う。ヨーロッパの歴史と古代文明の香りが融合したような。日本から一番遠い国のひとつであることも想像力をかきたてられるひとつの要因かもしれない。
-
Posted by ブクログ
タヒチと東京を舞台にした恋愛小説。タヒチアンレストランで働く瑛子とオーナーの恋愛。面倒なことにかかわりたくない、亡くなった母親にそういわれ続けてたこともあったし、田舎で純粋な生活を営んでいた彼女にとっては、お互い惹かれ合うものがあることがわかっても、不倫関係になるドロドロがいやでオーナーの気持を拒みつづけ・・タヒチ滞在の最後の夜に出会った老婦人、金山さんの話が瑛子の心を動かしたあたりの描写が良かった。オーナーの「男の純情」にもきゅんとくるものがあったし、巻末のタヒチの写真(いるかとたわむれるばななさん・・うらやましい!)もすごくステキだった。