田中文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
プロローグから、著者に関わるかなりショッキングな事情が語られる。著者の伯父2人と従兄が精神疾患の病にかかっていて、祖母はその一生を通して彼らを守り続け、父は身近に彼らの姿を見て苦しんできた。そのため、遺伝、病気、正常、家族、アイデンティティといったテーマが、著者の家族の会話の中に繰り返されていたという。そのような個人的事情をも抱えた著者が、「遺伝子」の誕生と、成長、そして未来について、物語ったのが本書である。
上巻の第一部から第二部では、メンデルのエンドウ実験による遺伝法則の発見とダーウィン進化論との交差、ゴールトンによる優生学の提唱、アメリカにおける断種手術、そしてナチスによる民族浄化へ。これらの歴史的流れについては他の本でも読んだことがあり、比較的知っていることが多かった。
ナチスのユダヤ人等の大量殺戮について現在その措置が肯定されることはないだろうが、劣等な人間に子孫を残させないようにすることは良いことだという優生学の考え方自体については、結構な数の当時の著名人が賛同していた訳で、下巻になるが、新優生学のことを考えると、今は違うと必ずしも言えないことが恐ろしい。
また第二部では、これまた有名な話である、ワトソンとクリックによるDNA二重らせん構造の解明、遺伝子の調節、複製、組み換えの機能等の解明について語られる。
第三部では、遺伝子クローニングによって、”人間”に大きな影響を与える可能性が出てきたことが説明される。
ある発見がきっかけとなって、次から次へと新しい発見がなされ、未知の領域が解明されていくところはとてもスリリングだし、また病気の治療にも役立つようになってくると、莫大な金銭の問題が絡むことになるなど、綺麗事では済まない生々しいことも率直に語られている。