籘真千歳のレビュー一覧
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ラノベのようなスタイルをとりながら、重厚なテーマと複数の読み方を持つ、何度でも再読したい一冊です。
「限りなく人間に近い機械」というありがちな設定に、男女隔離を余儀なくされた世界に第三の性として作られたという存在理由を加えたことで、テーマに大きな深みが生まれた気がします。
特に印象的なのは洋一と置名草の美しくも残酷な物語です。精緻なSF的要素に見える置名草の体質や背景は、単なる無味乾燥なSFガジェットではない、人間の思いが届くものとして描かれています。このあたりに全編を通じて暗示される人工妖精と人間双方の悲哀が詰まっている気がします。
何より、結びは冒頭の一節だけでなく主人公への解答として機能 -
Posted by ブクログ
途中で引用されているbad apple!!にこんな解釈もありか、と思った。
久しぶりに聞きたくなった。
祝福された真白が全ての存在を呪い、拒絶された揚羽が全ての存在を受け入れたのが印象的。
最後に怒涛の超展開が続いて、消化不良を起こした。
結局揚羽って生きてるの?死んだの?
揚羽って何人もいるの?
疑問ばかり増えたのが残念だった。
麝香の存在もご都合主義の塊のようにしか感じなかった。
エピローグの洋一って一巻の少年?
今度こそ幸せにしてあげてほしい。
そういえば一巻からここまでで八年たっていたのに今更気づいた。
それから、毎回巻頭にあった百人の村の話が好きだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「θ」シリーズの二作目で、目次の章番号も引き継いでいます。
二章収録されていますが、両方とも印象に残る作品でした。
「本と機雷とコンピューターの流儀」はコンピュータ上の電子戦に関連したお話です。
情報系の人間としてはありふれた話題ですが、同時にとても面白いテーマです。
θ世界の人工知能の「強さ」、「人間臭さ」を素敵に思います。
「ツバクラメと幸せの王子様と夏の扉」の方は色々詰め込まれて語り尽くせませんが、
やはりスワロウテイルシリーズとの関連が印象深いです。
同一の世界線上ではなくともどこか通じている、
そういった作者の想像が垣間見えて嬉しくなります。
余談ですけど、静樹さんが将棋をやる -
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SFです。
ファンタジーの要素も多少合わせ持っているかもしれません。
電撃文庫版と比較して挿絵がない代わりに
「蘭とパンダと盲目の妖精」が収録されています。
こちらは電子書籍で刊行されていたようです。
非常に面白く読めました。大好きな本のうちの一冊です。
世界観としては、人工知能やアンドロイドといった技術が存在する、
(SFとしては)比較的オーソドックスなものでした。
生物の存在が希薄に描かれていますが、主人公であるT・Bが体験する出来事は
「生」を強く実感するものです。
ある種奇妙なそのバランスが、とても心地よく感じられました。
個人的に好きな場面は西晒湖女史の演説。
場面と合わせ、想 -
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人口自治区最大の危機と、揚羽たちの決断を描くスワロウテイルシリーズ最終巻。
ハッピーエンド、バッドエンド、トゥルーエンド、そんなあらゆる終わり方の要素が詰め込まれたシリーズの終着点だったと思います。
個性的な登場人物のやり取りや突飛な行動といったコメディ要素に鏡子の哲学談義と、前半部の雰囲気はこれまでのシリーズ通り、それだけに後半、今までのシリーズ通り、揚羽たちが過酷な運命に巻き込まれていくか、と思うと辛く、平和な前半パートで終わってほしい、と思わずにはいられなかった気がします。
自分の顔を持った殺人人工妖精”麝香”を追う揚羽を描くAパート、
自治区総督の暗殺によって騒乱に巻き込 -
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種のアポトーシスと呼ばれる性交によって感染する病を患った男女たちが暮らす男女別自治区。そこでは異性の代わりに人間を模して造られた、人工妖精(フィギュア)が人々と共に暮らしている。
その自治区で連続殺人が発生。事件を追う人工妖精の揚羽は徐々に自治区をめぐる謀略に巻き込まれていく。
練りに練られた複雑な世界観や設定の解説に加え、ラノベっぽい独特の言い回しやキャラクターたちの会話、小難しい言葉や思想で装飾された文章で書かれたこの作品は決して読みやすくはありません。
自分自身も序盤は世界観をつかむのにも、文体に慣れるのにも苦労しました。
話としてもスケールが大きく、いろいろな要素をこれでもか -
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とうとう終わってしまいました。大円団でしたね。
みんながハッピーエンドでは無いけれど、エピローグ及びExtra Storyで1作目からのファンも納得がいったのでは。
のっけから揚羽が3人出てきて混乱しました。且つ各段落が主人公毎にA,B,C,D,の符号が付いて符号毎に時系列で話が進行する仕掛け。
伊坂幸太郎かと思いましたよ。
懐かしの雪柳が出てきて小揚羽周辺は楽しそう。
麝香も最後の最後で救われたし、一番可哀そうなのは真白かな。
表紙がラノベ風なので随分損してると思います。確かに一部ラブコメ風だし一部すちゃらか描写は有りますが、堂々たるハードSFでした。
この設定をいかして是非続編またはスピン