石山恒貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
日本社会全体の少子高齢化が進む中、企業に対していわゆる「定年」を延長することが求められ、65歳までの雇用確保義務が課されるようになっている。
これを終身雇用・年功賃金という従来からの雇用慣行と整合させるために、多くの企業において役職定年・定年再雇用といった制度が採り入れられている。
これらの制度は企業の立場からは「福祉的雇用」として捉えられ、役職定年者・定年再雇用者は賃金が下げられ、技能継承のみやればよいとの低い期待が与えられることでモチベーションが低下していくケースもままある。
一方で、役職定年者・定年再雇用者の幸福感・仕事への熱意は全体として低くないという調査結果が出ている。様々な喪失や衰えがあるはずなのにも関わらず、このような全体傾向が生じる現象を「エイジング・パラドクス」と呼ぶ。
要は、定年後の境遇の変化に対する受け止め方には個人差があるのだ。
そして、その個人差を生じさせる要因は、好奇心の有無や自身のキャリアへの関心があるか否かにあり、シニア労働者には心理的要素としての「働き方の思考法」を身につけることが重要な意味を持つ。一方で、企業組織側にはそれを考慮した上でのシニア社員に対する処遇が必要である。
以上のような著者の考えが事例とともに解説されている。
自分も企業組織の管理職の立場にあり、マネジメント対象となるメンバーにはシニア層の方もいるので、彼らにモチベーションを保って年齢に相応しい活躍をしていただくやり方については日々頭を悩ませている。
また、自分個人としても、定年を意識してこの先のキャリアをどのように送っていくかを真剣に考えなければならない年齢を迎えていることもあり、この本で扱われている論点を他人事でなく関心をもって読んだ。
個人にとって必要な「働き方の思考法」とは。
まずは企業組織に蔓延るマッチョイズムへの囚われから脱却すること。
自身の情熱・動機・強みがどこにあるのかを熟考し「自己の成長と専門性の追求」にフォーカスして主体的に職務を再創造する(ジョブ・クラブティング)。
その際には、独りよがりな「周りの見えないジョブ・クラフター」にならないよう全体性とのバランスに留意して、周囲から受け入れてもらえるようにする。
そのための実践として、スキルシェアサービスを利用してのギグワークや副業フリーランスを通じて業務委託という働き方に慣れること、越境学習となる場に積極的に身を置くことでホームとアウェイを行き来し葛藤を通じた自己調整を経験することなどが推奨されている。
一方、企業組織側は、賃金を引き下げなければならないという認識に引っ張られて、シニアの自己評価を徒に下げるようなことがあってはならない。
シニアに対しても責任のある仕事を与えて権限委譲し、業務目標を主体的に設定してもらって支援を行い、正当な人事評価で報いることが大切である、と。
モチベーションの低下したシニアを企業が低い待遇で囲っておくというのは、誰も幸せにならない話で、社会的な損失は甚大だと思う。
まずは個人が自らのキャリアを自律的に考える素地を広げていくことが重要で、企業側にもキャリア自律を促す取り組みがもっともっと必要なのだと再認識した。 -
Posted by ブクログ
前半はエンゲストローム、ヴィゴツキーといった学習理論から越境学習の系譜を紐解き、後半に向かうにつれ、越境学習がもたらす個人的体験と組織との関わりが事例を交えて紹介される。人事や働く人の現場をよくわかる人が書いたかなり入門的ではあるが網羅的で実践的にまとめられた良書だった。
後半で特にページが割かれていた越境学習者のカスタマージャーニー的なプロセスの記述は興味深く、自らの社会人大学院通じた越境学習体験と深く重なり納得感があった。確かに私も二度死んだ。ただただ分かりやすい。概念浸透の段階で、難解な学習理論の書籍が多い中で、この分かりやすさは社会の宝だ。
これから制度の導入もそうだが越境学習者への支援も組織課題として組み込まれるようになるだろう。
越境学習のルーブリック評価基準は大変実用的に見える。 -
Posted by ブクログ
日本の労働人口の中に、
40代50代の占める割合が大きくなっています。
そんな中、40~50代のうちに、
よく考えてキャリアを積み上げておかないと
それ以降の人生に大きく影響します。
本日ご紹介する本は、
会社人生の中でシニア世代へ向かう人たちの
キャリアや働き方を紹介した1冊。
ポイントは
「自走」
かつては、会社がベルトコンベアのように我々を「動かして」くれました。
しかし、それは働く人から「見通しを持つ力」や「自分で走る力」を奪います。
その結果、このままではいけないとわかっていても、
目の前の仕事だけで毎日が過ぎていくようになります。
これからは、ベルトコンベアに運ばれるだけでなく、
自分の足で動くこと、つまり「自走力」を高めることが重要です。
「まずやってみる」
まず、自分で決めてやってみること。
しかし、組織に慣れ親しみ、効率的に仕事を回せるようになると、
「回せる仕事」以外は腰が重くなります。
その結果、新たな学びの機会は失われます。
①変化を作り出そうとする
②自分で目標を設定していく
③フィードバックを要求する
まずやってみるには、この3つが重要です。
「仕事意識」
「自走力」を高めるには、言われた仕事を何も考えずこなすのではなく、
仕事の意味を考えることが重要。
①社会に対する意味
②組織に対する意味
③自分に対する意味
社会の考えと、自分の考えのズレを少しでも埋めることを考える。
意味を見出すには、目の前の事象の外にでることが必要。
自分が社長だったら、いまの自分の仕事をどうとらえるだろう?
自分の仕事は、同僚にとってどんな意味があるだろう?
シニア期の「上昇気流」が吹き始めるときまでに、
どれだけペダルをこぐ力をつけておけるか?
ぜひ、読んでみてください。
◆本から得た気づき◆
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自分から情報を取りにいかなくなっているせいで、動けなくなってしまっている
自ら小さな変化を積み重ねていくことで、徐々に大きな裁量を得ていく
意味を探るときに、「お金」と答える人は、かなり手前で思考停止している
社内にある資産と、「問題」とをつなげる役割を果たせたら、そこにネットワークが生まれる
「相談される人」になるための一番の秘訣は「相談する人」になること
「人に意見を求めること」ほど「コスパの高い行為」はない
経験を次の仕事に役立つような形に落とし込めているか
後悔をしないためには、越境的学習を中心とした学びが欠かせない
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◆目次◆
PROLOGUE 「でも…私の会社人生、これでいいのだろうか?」
CHAPTER 0 ミドル・シニアの憂鬱
CHAPTER 1 まずやってみる [Proactive]
CHAPTER 2 仕事を意味づける [Explore]
CHAPTER 3 年下とうまくやる [Diversity]
CHAPTER 4 居場所をつくる [Associate]
CHAPTER 5 学びを活かす [Learn]
CHAPTER 6 「リアル」を見通す [RCP]
EPILOGUE 「会社人生、これでよかった」と言えるために
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Posted by ブクログ
最初は「えっ、そもそも社員の研修を職場で負担してるなんて大企業向けでは」とか、「転職未経験者でもない限りは、ジョブの棚卸するのでは」や、「この本はバブル以前の豊かな時代に大企業に勤め、その後を憂いている選ばれしもののための本ではないか(自分向けじゃない)」と思っていたのだが、読み進めるとこれがどっこい、どんな人でも、いつかぶつかる「働き方を変えること」「生き方を変えること」について書かれている。だれでも過去の成功体験だけでは生きていけない、社会も自分も変わっている。
つまり、今はダメだとしても、いつでも働き方や生き方は変えられるという本だった。20代はまだぴんと来ないかもしれないが、30歳を過ぎたら読んででもいいかも。 -
Posted by ブクログ
日本的な雇用の仕組み(総合職、正社員、家父長制的な考え)を合わせて「三位一体の地位規範」と呼び、その仕組みが現代では通用しなくなっていること、人口ボーナス期からオーナス期へ以降して久しいことなど、社会変化に対して日本の多くの企業文化が変わっていないことを指摘し、どういう制度が良いのかという提言をしている。
しかしタイトルの内容に触れてくるのほようやく最終章になってからで、そこまでは「三位一体の~」がとうに制度疲労を起こしていることが列挙される。そんな本書を単純にまとめるなら、高度成長期は上手く機能していた「会社に人生を捧げる夫と主婦が主体の社会モデル」の枠組みから脱して多様な働き方を認めることが大切、といったところ。今更な感もあるテーマだがいくつか印象に残ったことがあった。
働く人の意識として日本人は先進国の中で「ストレスの高さと仕事のやりがい意識の低さがトップクラス」ということ。これがどんな基準での調査なのかには触れておらず、順位が拮抗していた中国(ストレス)とイタリア(やりがい意識)など他国との比較詳細は知りたかった。
会社は「自律的に行動する社員」を望みながらも「従順さ」を結局は求めているのではというくだり。企業は教育のせいにしがちだが、長年染み付いてしまった日本全体の仕組みと考え方は根深すぎてこれから先も大きくは変わらないであろうと思えた。
人それぞれの事情があり、またその時々で「理想の働き方」は変わるもの。社会と会社の仕組みは簡単には変わらないものとして、自分の価値(これも色々)を高める努力をしなければ。