村上しいこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
言葉の可能性を信じることができる作品にしたい…と、作者は短歌を一から勉強してこの小説を書いたと知り驚いた。
いじめが原因で引きこもってしまった綾美、親友を裏切ってしまった桃子の気持ちがリアルに伝わってくる。
高校の"うた部"の仲間と短歌を通して繋がっていくうちに、物語は明るい方へ動き出す。
いと先輩や清らの恋バナがストレートにうたとして詠まれたり、短歌大会の題詠が「恋」とは、今どきの高校生らしいなと微笑ましく思えた。
傷つきながら、戸惑いながらもそれぞれが懸命に生きている姿に感動した。
表題の「うたうとは小さないのちひろいあげ」が
連歌の上の句であったことが終盤になって明か -
Posted by ブクログ
「陰口を言うことより、いすを投げつける方がいつも罪が重かった」
本文中に出てくるこの文は、私も同じ思いに囚われている。おそらく今でも(お子さまですいません)。
冷静に考えてみると、確かにいすを投げつける方が、相手に取り返しのつかない大怪我をさせてしまう可能性が高いから罪が重いのだろうと、大人なら思うだろう。
ただ、こう返されると、当時の子供の私には、
「肉体の痛みと心の痛みは、肉体の痛みの方が上なの?」と反発するだろう。
「私がどういう環境で育ってきたか、あんたたち知ってるの。知りもしないくせに分かったようなこと、言ってんじゃないよ」と、今風に言うと「キレて」しまっていたのだ。
さす -
Posted by ブクログ
桃子は高校のうた部に強引に勧誘される。短歌で気持ちや情景をうたうことや、先輩たちに心惹かれる。しかし桃子は幼なじみで不登校となった綾子と、高校では友達を作らないと約束しているのだった。
友達を守れなかった後悔、自分の気持ちがわからず殻に閉じこもってしまう。そんな不登校の苦しみとふたりの友情、それと短歌の魅力が見事に融合された作品。
短歌の魅力を理屈で説明するのではなく、各々が自分の短歌を披露し批評し合う様子で示しているので、桃子とともに自然と受け容れています。
そこに挿入される綾子のブログの形をとった気持ちの吐露。
友人や両親に無理難題を押し付けて、攻撃的になることで己を守ろうとする。しか