大地は、妻に先立たれ、独りになり自暴自棄になっていた。
もう生きていても…という無気力のなか妻の気配を感じて会話をする。
誰のために、なんのために生きているのかわからないと言うと亡き妻は、死ぬ前にひとつだけ頼みを聞いてと。
それは、子どもを育てるのが夢だったから自分の代わりに子どもと関わって話しを聞
...続きを読むかせてほしいということだった。
58歳の大地は、学童クラブ〈キッズクラブ・ただいま〉で放課後の子どもたちの指導員の補助として働くことになる。
学校の授業終了後から親の引き取りの時間までの4〜5時間だが、慣れないうちは名前を覚えるのに苦労し、喧嘩を仲裁して、相手をする。
子育て経験のない昭和世代のおじさんだけに何が正しいことなのか、なぜこんなことで諍いをおこすのか日々想定外のことに驚きながらもいろいろ考えて自分の思いを言い、叱られ揉まれつつ子どもたちと向き合っていく。
ここでの先生や子どもたちと出会って、神さまにもできない仕事をしているんだと。未完成な子どもたちのために、不完全な僕たち大人が、笑いながら、怒りながら、泣きながら一緒に成長していくんですと言ったことですでに欠かせない一員になったんだと感じた。
そう、生きる目的があれば妻の気配も無くなった。
妻が遺してくれていた手紙とともに絵本がとても素晴らしくて、その詩に思いがいっぱいつまっていた。
「ともだち」
なぐさめてくれる ともだち
はげましてくれる ともだち
なにもいわずに そばにいてくれる ともだち
「しんせつ」
やさしく だれかと
てをつなぐこと
「ゆめ」
かなうゆめもあれば
かなわないゆめもあるけど
それが いきるということ
あなたに
「あえてよかった」