村上しいこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
発達障害の疑いがある中学1年の雅也と、様々な事情を抱えて北海道の児童養護施設「北の太陽」で暮らす子どもたちとの交流を描く。
彼らが共通して読んでいる『みつばちマーヤの冒険』から大切な言葉の引用がスパイスになっている。
「普通」ってむずかしい。
「普通」になりたいよなぁ。
「普通に生きるって、世界を実感することだと思う。世界を実感すれば、きっと変われる」と雅也と海鳴の会話がやるせない。
コミュニケーションがうまく取れない雅也と家庭がない海鳴は自分たちを「普通」とは思えない。
でも「普通」ってなんだろう?
「自分の力ではどうにもならないことで悩む苦しさがわからないなら、大人失格です」
「あきらめる練習よりもあきらめない練習が必要な人もいるんです」
雅也が大人に向けて投げ掛ける言葉は核心を突いている。
そして雅也たちは、あきらめない練習をする。
贅沢と反対されたピアノの発表会ドレスを買うために、イカめしコンテストの賞金を狙って参加する子どもたちの奮闘が素敵だ。
イカめし食べたくなる。
雅也はこの地で、居場所と友と生きる力を得た。世界を実感した一歩だったのだろう。
「もう希望しかない」を合言葉にした雅也と海鳴は、心の奥にまで差しこんでくる光を受けとめたのだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ日野美桜里(みおり)、中学1年生、両親は離婚して今は母と二人暮らし。学校では友達とのあるいさかいから不登校になっている。お母さんは、学校カウンセラーの仕事をしていて、さらに苦しんでいる女性の助けになる活動を始めたりして毎日忙しい。理屈っぽいところもあるけど、美桜里を小さな子ども扱いしない。
お父さんとは時々会って話をする。
物語冒頭から、母の留守の時に空き巣が入った。美桜里が一人でいるのは危ないという事で、学校に行かない代わりに昼間はおばあちゃん家にいく事になった。
そこで、おばあちゃんの友達の、貴夫ちゃんというおじさんと16歳の登夢(トム)という少年がやっているキッチンカーを手伝う事になった。テーブル設定、カレーの仕込み、仕事をしながら、トムは美桜里の話を聞き、相談に乗ってくれた。
トムも学校には行っていない。今はキッチンカーの仕事をしながら、高校卒業の資格を取るため勉強している。好きな事を見つけて、知りたい事ややりたい事をして、いろんな人と出会う。貴夫ちゃんからの受け売りと言いつつ美桜里にアドバイスしてくれる。イーブン、自分のことを話てから、相手の話を対等に聞くやり方で。
美桜里の両親の離婚の原因、父親のDV。それは母親の合理的で理屈っぽい物言いや忙しさからきていた。今も、美桜里と母とのギスギスした感じが、トムからのイーブンで話すというやり方を試してみて、少しづつ、母と話せるようになってきた。
そして定期的に会う父とも話をしていくうちに、母も父も、それぞれが自分のことを語ってくれるようになっていく。
中学1年生にしては、美桜里はしっかりした考えを持っているように見えて、幼い所もある。物語が進む中で、美桜里とトムだけでなく、大人達の過去が今につながっていることがわかる。
そして、主人公達が、話を聞き、自ら語り、話し合って、前に進む姿がいい。重いテーマを扱っているけど、希望が持てる物語。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ子どもの読み聞かせで、村上しいこはこれまでに数えきれないほど読んできた。特に「はじめての俳句」「はじめての詩」「はじめての標語」のシリーズは、子どもたちも僕も大好きで、子どもたちの作るユーモラスな詩がどれも楽しかった。
このうた部三部作では、部のみんながそれぞれに短歌をつくるのだが、それが本当にその心情をよく映していて、心を打つ。短歌の良しあしは正直よくわからないところもあるし、先生が指導して直すのも半分くらいは「本当にそのほうがいいの」と思ってしまうところもあったりするが、高校生たちがつくる短歌はとても真摯で嘘がない。これを一つ一つ作者が作ったのだと思うと、本当にすごい。
物語に関しては、桃子ちゃんのうじうじしたところが少々うっとうしいが、いとさんや清らさん、きっぱりした周りの人にはげまされ前に進んでいくところはなかなか悪くない。 -
Posted by ブクログ
「うたうとは小さないのちひろいあげ」の続編。
前作は友情がテーマで、うた部一年生部員の桃子と綾美が物語の中心となっていたが、今回は恋がテーマで、三年生となった清らと業平二人の恋模様と、転校生だが業平の中学時代の友人時宗らの存在が加わっており、また短歌甲子園も物語の中心をなす。
付き合い始めたものの、お互いの心の成長(特に清らの)が二人の距離を難しいものとしてしまう。人の懐にはすっと入っていける清らだが、自分のこととなると不器用で、自分に厳しい課題を設けて脱皮しようとする姿にも成長を感じられる。LGBTのことを作品に盛り込んだのも、まだまだ閉ざされている日本の教育への問いかけと感じた。2018.6