坂野潤治のレビュー一覧
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昭和11から12年にかけて生じた日本近代史における危機ないし転換点の実態を明らかにしている本です。
昭和11年の二・二六事件以来、軍によるファシズムが支配的となり、民主主義が押しつぶされて日中戦争へ突入していくことになったという見かたがひろく流布していますが、著者はそのような歴史像が誤りであることを論証しようとしています。たとえば、マルクス主義経済学者の大森義太郎による人民戦線論が発表されており、そのなかで彼が選挙を通じて国政を変えていくことをひろく国民に訴えかけていたことからも、言論の自由が完全にうしなわれていたわけではないと著者は主張します。
その一方で、大森の国民戦線論は、まったくべ -
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明治、大正、昭和戦前期の政治史を理解するためには明治憲法の構造と機能を知る必要がある。本書は、政治史を、憲法史として再構成しようとするものである、とはじめに本書の狙いが示されている。
以下、気になった点。
第二章「明治憲法体制の出発」の章は、初期議会における予算審議権を巡っての「富国強兵」と「経費節減」の争いを整理している。
藩閥政府は、概して政党に否定的であったが、美濃部達吉の天皇機関説が、「解釈改憲」により政党内閣の正当性を結論付けた、その論証を丁寧にあとづける。この辺りは、なるほどと思わされた。
そして、憲法11条の統帥大権、12条の編成大権に関し、ロンドン海軍軍縮条約締 -
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ネタバレ明治維新を柔構造という視点で見つめなおし、新たな評価をするという内容。視点は非常に面白いのだが、歴史を題材にしているという点では、あまりその背景には深く入っていないため、正直、良く分からなかった。おそらくある程度の知識を持っている前提で読むと面白いのだろうが。。。
何よりも「なぜ、そのような構造になったか」という点に対しての深堀りができていなかったことが、期待値から外れていたというのもあるかもしれない
正直、これらの事象は「偶然が積み重なった結果」ではないだろうか。事実、この柔構造は国家の目的や成し遂げるスコープが明確になった時点で、硬化してしまっている。
また、この著書では漱石の嘆きを悲観的 -
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大久保利通=産業殖産による「富国」、西郷隆盛=外征のための「強兵」
、木戸孝允=国民統治の「憲法」、板垣退助=自由民権の「議会」と、維新の立役者たちが目指した政治的方向性は微妙に異なっており、タイミング毎に離合集散を繰り返して日本の国づくりが進められていった。
「富国強兵」とは一緒くたにされることが多いが、方向性としては富国=内治であり、強兵=侵略であるため、実は対立構図にある。指導者であった大久保と西郷は薩摩での盟友であったために、2人の間でこの対立が表面化することはなかったが、新政府の官僚機構と幕藩体制の旧秩序における士族階級による西南戦争をもたらした。
明治10年までの台湾出兵や西南 -
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著者の「日本近代史」が、時代の分類など、うまく整理がされている良著だったこともあり本著も読むことに。
西郷隆盛に焦点を当てているとはいえ、基本的には「日本近代史」での論説に沿うもの。
・西郷は攘夷を唱えたことはなく、合従連衡により幕府に代わる新体制構築を考えていた。
・藩兵の合従連衡が先行し、武力のトップとしての存在が大きくなり、士族の不満を一手に引き受けざるを得なくなってしまった。
・西郷は必ずしも「征韓論」を唱えてたわけではない。
司馬遼太郎曰く、「西郷隆盛ほど説明が難しい人物はない。それは、この時代でしか登場し得ない人物であるから」。
本著を読んでも本当の「西郷隆盛」が明らかになるわけ -
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去年、日本近代史を読んで面白かったので・・・
坂野さん2冊目・・・
今回は明治維新の元勲筆頭、西郷隆盛・・・
西郷隆盛のイメージっちゅーと・・・
まずは上野公園か江戸城無血開城、征韓論、西南戦争あたりでしょうか?
チョイと込み入ると、征韓論と西南戦争から軍部独裁やアジア侵略の元祖とか、士族反乱の中心人物ちゅー感じになってるみたいです・・・
そこで・・・
坂野さんが意義有り!ちょっとそれは違うんじゃない?と出したのがこの本・・・
征韓論とは言うけれど・・・
征韓の急先鋒は板垣退助で、西郷は征韓ではなく、朝鮮への使節派遣を求めたまでで、むしろそれによって急先鋒の板垣を説得、制することにしたまで -
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普段から「明治維新」というのはわかりにくいと思っていた。
「尊王攘夷」で政権を奪取した政治勢力が、すぐに「開国」をしたり、「征韓論」に反対した勢力が反対派を政権から追い落としたあとに「台湾出兵」を行うなど、歴史上の出来事は分かっていても、なぜそのようなことになったのかの「政治路線」と「現実政治」の関係がどうもよくわからない。
本書は、明治初期の政治勢力を「大久保利通(殖産興業)」「西郷隆盛(外征)」「板垣退助(議会設立)」「木戸孝允(憲法制定)」と分類し考察している。なるほど、このように解釈すれば当時の状況はある程度わかる。
しかし、同時にちょっと議論が荒いようにも思えた。本書で扱って