【感想・ネタバレ】明治維新 1858-1881のレビュー

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明治維新を各藩の「柔構造」で捉え、国際化の成功を能動的な「翻訳的適応」にみる点は自分にとって新たな視点だった。現在に対する示唆としても面白い

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2015年02月23日

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読み始めて少し不思議な内容だと感じた。それは本書が一部海外向けの論文であることに由来をするのだろうか。冒頭に第二次大戦以降の開発独裁の国と、日本の明治維新の比較を様々に行う。日本人の感覚では開発独裁と明治維新とでは明らかに異なる発展の仕方に見え、比較検討をしようとあまり思わないのではないか。しかし海外では一見すると似た傾向を持っていると捉えられていてもおかしくはない。そして、私も開発独裁と明治維新とに決定的な違いは何かと問われたときに、断定的に回答する自信がない。

本書はペリーの接触後たかが50年で列強に加わった明治維新という現象を解釈する。明治維新というタイトルであるが歴史的経過は追わない。本書が明瞭にするのはその背景である。江戸期に培った経済的思想的な下地、地方で発展した雄藩の人財育成、そして指導者たちが様々な利害から離合集散を繰り返しながらも決定的な分裂を回避する柔構造。
本を閉じて思い返すと、明治期の政治家や軍人はどこまでも維新志士の延長にいたのだと思う。理念の違いをぶつけ合いながらも、大目標に向かって邁進する姿をイメージした。

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2014年06月07日

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興味の持てなかった幕末~明治期。必要に迫られていろいろな本を読んでいたのだけれど、この本は「柔構造」という視点を提唱し、それに基づいて、幕末から新政府に関わった藩ごとに分析されている。「柔構造」という視点が新鮮かつ面白くて、この時代の面白さが少しわかったように思う。

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2011年10月25日

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プリンシプルの無いと呼ばれる日本の強さを分析した書、自分の生きてきた中の観察では相も変わらず大和民族の日和見主義は機能している。

今後も日本を大和民族が支配していく限りこのシステムは作動し続くことだろう。

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2010年05月23日

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日本近代政治史の専門家と開発経済学の専門家が、明治維新という世界史上稀な革命を可能とした、幕末維新期の構造的特徴ついて考察している。
明治維新は、個々の人物や事件を追っていくと極めて分りにくい時代である。登場人物が多く、彼らの間に政策論争や政治闘争が延々と展開されるし、国家目標なるものが複数個あり、それらが合体したり変容したり逆転したり、更には、各グループの目標がどんどん変わっていくように見えるからである。しかし、著者達はこのわかりにくさを「柔構造」と名付け、これこそが明治維新を可能にした、世界に類を見ない長所だったと言う。
「柔構造」の第一の側面は国家目標で、幕末期には、「公議輿論」が政治的な、「富国強兵」が経済軍事的な改革指針であったが、その後維新を経て、「公議輿論」は木戸孝允の掲げる「憲法制定」と板垣退助の掲げる「議会設立」に、「富国強兵」は大久保利通の掲げる「殖産興業」と西郷隆盛の掲げる「外征」に変容・発展していったということである。
第二の側面は、上記の4派が単独では政策実施能力を欠いていたものの、各派は、幕末期から醸成されてきた基本的な相互信頼や、ナショナリズム・尊王思想の共有により、極端な政治闘争となることはなく、柔軟な合従連衡が継続したということである。
第三の側面は、指導者自身が複数の目標の重要性を基本的には分かち合っており、ときに相互乗り入れや乗り換えが行われることすらあったということである。よって、カリスマ的リーダーは生まれず、指導者の不慮の死や失脚でも、スムーズに指導者の交替が行われ、その派が途絶えることはなかった。
そして、こうした幕末維新期の独特の政治構造に加えて、それまでに日本が近代化のための諸条件を備えていたことが、植民地主義が吹き荒れていた時代に、日本だけが列強に屈することなく、欧米に並ぶ「一等国」に駆け上がることを可能にしたという。諸条件とは、1.政治的統一と安定、2.耕作面積と生産性両面における農業の発展、3.物流システムの発展と全国統一市場の形成、4.商業・金融の発展及びそれに伴う富裕な商人層の台頭、5.手工業の発展、6.地方政府(藩)による産業振興、7.教育の普及である。
そして、ペリー来航以来の、対外的な軍事的無力、通商条約手続きの不備、開港がもたらした急激なインフレと産業の盛衰などにより、徳川政権に対する政治的遠心力が増す一方で、主要階層で広く共有された民間ナショナリズムにより社会的求心力は維持され、藩益や特定階級の利益が国家利益よりも優先されて日本が長期の内乱に突入したり、その隙に乗じて外国勢力の介入や支配を招く事態は生じなかったのだという。
明治維新に関しては、活躍したそれぞれの志士や藩・勢力を取り上げた伝記、歴史小説、歴史ドラマは多数あるが、その全体を俯瞰し、かつ構造的に捉えたものとして、本書は意義あるものとなっている。
(2010年12月了)

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2016年01月11日

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明治維新は公議世論と富国強兵の名の下に実現され、外征、憲法制定、議会設立、殖産興業の4つの方向性のどれを優先するかで対立したものの、大きなところでの目標は共有していたため、組織が崩れずにいられたというもの。

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2014年05月23日

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意外と面白かった。新しい捉え方で、都合よく当てはめてるだけでは、とか抽象的な表現に逃げているのではと思わなくもなかったが、それを差し引いても新鮮。推奨。

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2013年09月01日

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 本書を読んで明治維新の時代が立体的に見えた思いがした。この時代を取り扱った書として、高く評価できる本と思う。
 本書によると「明治維新は、欧米列強が支配する19世紀の国際秩序に後発国日本が組み込まれるという国際統合過程であった」とし、その政治過程は戦後の「開発独裁」と違って「富国(大久保)」「強兵(西郷)」「憲法(木戸)」「議会(板垣)」のグループが柔軟に連携を組み替えながら、それぞれの局面でリーダーシップをとっていたというのだ。
 本書では「国論の分裂である」という見方を否定し「政治的柔構造」と高く評価している。この見解はこの時代を俯瞰して新鮮であり、納得できる主張であると思った。
 本書では、1881年(明治14年)を変革の終了とする。その年までに上記の4つの政治目標が基本的に達成されたとする。
 現在も多くの発展途上国が上記の国家目標を目指しながらも、現実に到達している国は数少ない。歴史的にみても実に困難な国家目標の達成に明治日本が到達した理由が上記の「政治的柔構造」だという主張は実に興味深い。
 本書では、この政治的柔構造が成立した理由として当時の指導者の柔軟性を指摘する。「国家目標を富国強兵一本に絞らず複数の目標を視野に収めていた」「自分達のグループだけで権力を握ろうとはせずにいつも競争相手との合従連携に努めた」「どこにホンネがあるのか疑わしくなるほどの柔軟性」。この指導者の柔構造こそ、変革の時代を乗り越えた原動力となったとの見解は、現在の日本を見ていて、ちょっとうらやましい。現在の日本にはこのような指導者はいないものかと。
 しかし、本書では、その変革期の連携の組み換えが成立した理由についても考察している。「指導者達は相互に抜き差しならない対立に追い込まれた時でも、衝突の寸前まで相手の善意を信じ込んでいた」「旧藩を基盤とする交流経験」「江戸期を通じて醸成された求心的な社会条件」。やはり、優れた指導者は突然に登場するものではなく、その前の時代の諸条件が準備するものなのだろうと納得した。
 本書では近代化の前提条件として、江戸時代の特徴も考察している。本書が指摘する江戸日本が到達していたレベルの高さは、読んでいても心地よい。
 本書あとがきでの指摘に、「21世紀の初頭に生きる私たちも、この4目標のうちの三つは依然として目指している。すなわち「富国=成長」「公議=憲法」「輿論=議会・選挙」は、私たち日本人の共通目標であり続けている」との主張は、まさにそのとおりである。はたして私たちの世代は、明治期の先人のように国家目標を達成できるのだろうか。疑問とともに、かつての指導者の視線を感じるのは私だけではないと思う。

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2013年06月30日

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[ 内容 ]
西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、板垣退助―途上国を一等国に導いた指導者を分析する。

[ 目次 ]
第1部 明治維新の柔構造(明治維新というモデル;柔構造の多重性;明治維新の指導者たち;政策と政局のダイナミズム)
第2部 改革諸藩を比較する(越前藩の柔構造;土佐藩の柔構造;長州藩の柔構造;西南戦争と柔構造;薩摩藩改革派の多様性と団結;薩摩武士の同志的結合;柔構造の近現代)
第3部 江戸社会―飛躍への準備(日本社会の累積的発展;近代化の前提条件;幕末期の政治競争とナショナリズム)
「富国強兵」「公議輿論」という複数の国家目標はなぜ実現できたか?途上国ニッポンを一等国に導いた指導者を分析し、世界史上希有な「革命」を政治史家と開発経済学者が捉え直す。

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年11月26日

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明治維新に関するおススメ本として友人に教えて貰ったもの。
なぜ明治維新は成功したのか、他の後進国の開発独裁型統治とは何が違うのか、という視点から雄藩間のやりとり、方針転換などの有様を分析し、この革命(?)の「柔構造」を解読する。
専門外の本ながらわくわくして読んだ。明治維新はひとりの人間の力で成るものではなかった。しかしその一方で確かにひとりひとりの人間の行動が近代日本を作ったのだなぁと思う。

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2010年08月02日

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維新150年だし「西郷どん」だしで再読。
明治維新を実現した薩長土肥等雄藩の「柔構造」分析が面白い。
「グローバル化した世界の中で異なる民族、宗教、思想が何とか共存して生きうる世界を築くためには、いい加減な生き方もまったく役に立たないとはいえまい(p179)」
日本人の特性である「翻訳的適応」を今こそ発揮すべきだと感じた。

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2018年05月13日

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ネタバレ

明治維新を柔構造という視点で見つめなおし、新たな評価をするという内容。視点は非常に面白いのだが、歴史を題材にしているという点では、あまりその背景には深く入っていないため、正直、良く分からなかった。おそらくある程度の知識を持っている前提で読むと面白いのだろうが。。。
何よりも「なぜ、そのような構造になったか」という点に対しての深堀りができていなかったことが、期待値から外れていたというのもあるかもしれない
正直、これらの事象は「偶然が積み重なった結果」ではないだろうか。事実、この柔構造は国家の目的や成し遂げるスコープが明確になった時点で、硬化してしまっている。
また、この著書では漱石の嘆きを悲観的とし、困難を乗り越えた偉業としている。この点がどうにも違和感がある。なぜか。漱石は「未来に対して悲観」しているが、著者らは「過去を評価」している。見ているものが異なるのだ。この点は漫画の「坊ちゃんの時代」で読み解けよう。漫画では新たな価値観の象徴である幸徳秋水を政府が抹消してしまう。そこに柔構造は影も形もない。
結局のところ、明治維新は育った土地、留学先等で得た様々な価値観を持ちながらも、日本を立て直すという共通の目的を持った人々が絶妙なパワーバランスのもと成し遂げた奇跡なのかもしれない。だが、その後に待ち受けられたのは柔構造を捨てた硬化構造?だ。そして、その、明治に作られた構造のまま現在に至っている、という事実。
著書らの掲げる「柔構造」は非常に面白い視点だ
これを現在においてどう実現していくかは、重要なキーに思える

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2017年10月09日

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歴史小説ばかりで新書はあまり読まなかったのですが、ちゃんと学び直すつもりで読んでみた。
藩毎の考察は興味深かった。薩摩のことにもう少し詳しくなりたい。

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2012年05月12日

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・明治革命は、複数の目標、「富国強兵」と「広議輿論」の二項目、の並列的競合、リーダー間の合従連衡およびリーダーだちによる目標の優先順位の自由な変更を通じて達成された。東アジア型開発独裁のスタイル、つまりカリスマ的リーダーは上意下達するスタイルではない。
また、リーダーグループ間の柔軟な連携の組み換えが特徴であるとする。

・「翻訳的対応」:明治日本の国際統合が成功した理由は、それが国際社会への受動的な「組み込まれ」ではなく、能動的な「翻訳的適応」として実行されたからである。つまり、自国の主体性、社会の連続性、国民の自尊心、および民族のアイデンティティの持続を確保しなければならないのである。
日本は、稲作、仏教、中国の文化と政治システム、鉄砲とキリスト教、西欧との再会、米軍占領下の諸改革など、「翻訳的適応」を繰り返すことによって形成されてきた。日本人の意識の中で民族的アイデンティティーが失われることなく、この翻訳的適応過程そのものが日本人の性格の中心部分であるとさえいえる。

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2011年06月18日

Posted by ブクログ

るろうに剣心をまた読み返したい今日この頃。剣じゃなくて政治の話なのでるろ剣とはあんまり関係ないけど面白かった。

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2010年10月15日

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