坂野潤治のレビュー一覧

  • 〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等

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    日本における階級の解消の歴史について書いたもの。
    序文において、戦後野党勢力は自由・平和の追求には熱心だったが平等を求めることに不熱心だったことを指摘しており、本書は昭和初期までを対象にしている。

    本書の眼目はあとがきで書かれた以下の文。これが言いたくてこの本を書いたのだろうな。
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    明治維新に46年間、上層農民の政界支配(筆者の言う「明治デモクラシー」)に26年間、いわゆる「大正デモクラシー」の実現(普通選挙制の成立)に20年間がかかっているのである。こうして1925年に成立した「政治的平等」が「社会的平等」(そこまでは言わないとしても「格差の是正」)に発展、転化しかけたの

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    2025年01月02日
  • 日本近代史

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    おもしろい。
    1857年から1937年の日本近現代史について論じる。
    著者は上記の時代を以下の6章にわける。
    1.改革 1857~1863年
    2.革命 1863~1871年
    3.建設 1871~1880年
    4.運用 1880~1893年
    5.再編 1894~1924年
    6.危機 1925~1937年

    1.改革 1857~1863年
    明治維新への紆余曲折について論じる。
    西郷隆盛はこの時期、敵対していた薩長をつなぐ役割を担っていたが、二度流刑に処されていた。その都度パイプ役がいなくなることで、敵対関係が悪化するなどしていた。

    2.革命 1863~1871年
    薩長同盟と幕府軍の戦い。やがて勝海

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    2020年03月23日
  • 帝国と立憲 ──日中戦争はなぜ防げなかったのか

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    副題にあります”日中戦争はなぜ防げなかったか”の問いには、中国側にとっての日中戦争は「民族解放戦争」であり、侵略者日本軍を国土から駆逐することが目的であったので、日本軍の無条件全面撤兵を前提としない講和はまやかしでそれに応ずることは敗北を意味したのである。よって、日本は中国軍民の「殲滅」を選択したが、開戦2年で長期持久戦に方針転換した。筆者は和平への責務は為政者であるといい、リベラルな政党内閣か準政党内閣の下でしか、戦争は抑え込めないと主張しています。

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    2017年11月05日
  • 〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等

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    東京大学を定年退官になってからの坂野先生はホント沢山お書きになっている。書きたいことが山ほどあるのだろうと推察するが、恐らくこの本もそうした是非書いておきたい1冊だったのだろうと思う。

    テーマは明快である。明治維新の士族、明治デモクラシーの上層農民、大正デモクラシーの資本家の時代を経て都市民衆にまで拡大してきた政治的平等は社会的平等を実現し得る可能性があったのか。「総力戦体制」抜きでもそれは可能であったと坂野先生は述べる。

    1937年の総選挙で躍進した社会大衆党に社会的平等の自生的実現の可能性を見た戸坂潤や河合栄治郎の言説をそのまま鵜呑みにして良いかどうか疑問には思うが、平和の下で自由を、

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    2016年05月09日
  • 日本政治「失敗」の研究

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    かなり冗長で読みにくいけど好きな人には刺さると思う。全然、毎回新しいものとして取り上げられる自由主義政党の伝統化を図る本。確かになあ、というのとなぜ他国では上手く根付いたところがあるのだろうか… どの自由主義政党も詰めが甘く残念なのだなあ なんなんだ、と思わされる…

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    2016年02月09日
  • 明治維新 1858-1881

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    日本近代政治史の専門家と開発経済学の専門家が、明治維新という世界史上稀な革命を可能とした、幕末維新期の構造的特徴ついて考察している。
    明治維新は、個々の人物や事件を追っていくと極めて分りにくい時代である。登場人物が多く、彼らの間に政策論争や政治闘争が延々と展開されるし、国家目標なるものが複数個あり、それらが合体したり変容したり逆転したり、更には、各グループの目標がどんどん変わっていくように見えるからである。しかし、著者達はこのわかりにくさを「柔構造」と名付け、これこそが明治維新を可能にした、世界に類を見ない長所だったと言う。
    「柔構造」の第一の側面は国家目標で、幕末期には、「公議輿論」が政治的

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    2016年01月11日
  • 日本近代史

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    同じ出来事も歴史家の眼差しによって全く違う位相が現れる。
    政友会と改進党の二大政党制、内にリベラル外にタカ派(とその逆)という補完関係は興味深い。

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    2015年09月12日
  • 日本近代史

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    幕末から日中戦争直前までの政治を中心とした近代史を、改革から危機まで6つの段階に分けて大きな流れを描いている。内容は盛りだくさんで、基礎知識があることを前提にしている感もあり、途中から図説を傍らに見ながらでないと付いていくことができなかった。

    「富国=大久保」「強兵=西郷」「公議=木戸」「輿論=板垣」

    明治22(1889)年に発布された明治憲法の第11条「統帥権の独立」は、昭和6年の満州事変以降の現地軍の暴走の原因となり、第55条「国務大臣単独責任制」は昭和16年の対英米開戦や終戦に際しての首相以下各大臣の無責任体制の原因となった。

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    2018年10月31日
  • 〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等

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    明治維新から日中戦争勃発までの近代史は歴史として学校で詳しく習った記憶が無い部分であり、知らないことが沢山あった.1884年の華族令で509人の爵位が与えられ、そのうちの244人が貴族院議員になった由.今以上の格差社会だ.選挙制度も金持ちだけに投票権を与えており、所謂普通選挙は1928年になって実現している.ここで有権者が300万人から1200万人と4倍増だ.当時の政党は格差社会の解消を全く考慮していないのにも驚いた.皮肉なことに日中戦争に伴って取られた「総力戦体制」の基で「格差の是正」が進んだことも意外な事実だ.

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    2015年07月13日
  • 日本近代史

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    明治維新前後の「改革期」から、太平洋戦争開戦直前の「危機」の時代まで、日本の近代史を凝縮して解説した一冊。

    ところどころで、基礎的事項が省略されているところもあるので、一通り、教科書レベルの前提知識があった方が読みやすいとは思うが、戦前の政治社会に関わった様々なアクターが、裏付け資料とともに、イキイキと描写されており、関心を引き付けてくれる。

    個人的には、政党が政治の主役になって以降、「崩壊」に至るまでの過程に、現代でも身につまされるところが、多々あるように思えた。

    二大政党の両者、特に原敬と、民政党側の論客であった美濃部達吉への著者の微妙な評価が興味深いところである。

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    2015年01月01日
  • 明治維新 1858-1881

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    明治維新は公議世論と富国強兵の名の下に実現され、外征、憲法制定、議会設立、殖産興業の4つの方向性のどれを優先するかで対立したものの、大きなところでの目標は共有していたため、組織が崩れずにいられたというもの。

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    2014年05月23日
  • 明治維新 1858-1881

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    意外と面白かった。新しい捉え方で、都合よく当てはめてるだけでは、とか抽象的な表現に逃げているのではと思わなくもなかったが、それを差し引いても新鮮。推奨。

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    2013年09月01日
  • 日本政治「失敗」の研究

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    日本において、実は明治以降の自由主義、リベラルの流れが脈々と流れており、それが伝統として認識されていないが故の、自由主義の弱さを指摘しています。福沢諭吉、徳富蘇峰、吉野作造、そして民政党、社会大衆党・・・。15年戦争さなかの1936,7年頃においても民政党、社会大衆党が躍進をしていることが何を意味しているのか?民政党が政友会と異なり非常にリベラルな政党であったとは今まで考えてもみませんでしたが、軍縮に力を入れた濱口雄幸、叛軍演説で有名な斎藤隆夫などが出てきた背景を考えると確かにそうですね。そしてファシズムの一翼を担ったかのように考えられてきた社会大衆党が実は社会民主主義の党として経済の民主改革

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    2013年08月17日
  • 西郷隆盛と明治維新

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     本書を読んで、かつて司馬遼太郎は「翔ぶが如く」という小説のあとがきで、西郷隆盛という人物について「日本にはこの様な人物の類型がなくわかりにくい」という趣旨のことをつづっていたことを思い起こす。
     本書は、そのような「幕末から明治維新」という混迷と動乱のわかりにくい時期を、現代の政治の知識から考察している興味深い本であると思った。
     「尊王攘夷」という当時の政治スローガンを、「尊王」「攘夷」「開国」という思想内容にまで踏み込んで、当時の各藩におけるそれぞれの政治勢力の動向と変転を詳細に考察する本書の内容は、実にわかりやすい。
     混迷の時代には、常に「保守派」「革新派」と分かれて争うのは歴史の常

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    2013年07月23日
  • 明治維新 1858-1881

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     本書を読んで明治維新の時代が立体的に見えた思いがした。この時代を取り扱った書として、高く評価できる本と思う。
     本書によると「明治維新は、欧米列強が支配する19世紀の国際秩序に後発国日本が組み込まれるという国際統合過程であった」とし、その政治過程は戦後の「開発独裁」と違って「富国(大久保)」「強兵(西郷)」「憲法(木戸)」「議会(板垣)」のグループが柔軟に連携を組み替えながら、それぞれの局面でリーダーシップをとっていたというのだ。
     本書では「国論の分裂である」という見方を否定し「政治的柔構造」と高く評価している。この見解はこの時代を俯瞰して新鮮であり、納得できる主張であると思った。
     本書

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    2013年06月30日
  • 西郷隆盛と明治維新

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    勝てば官軍。

    権力を握った側は、自身の出自を正当化しなければ、統治できない。

    所謂、征韓論なるものに敗れた西郷は、賊軍として処遇せざるを得ない。

    しかしながら、史実は史実として厳粛に残存する。

    西郷にまつわる史実を丁寧に読み解けば、新たな仮説を立てることができる。

    日本近代史の第一人者が近代国家に導いた人物の実像を解き明かしてくれた。

    若い時から慣れ親しんだ司馬史観を離れるてみるのも楽しいものである(笑)。

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    2013年06月28日
  • 日本近代史

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    近代日本(幕末~太平洋戦争直前まで)を政治・経済の両面から描いた本。

    とくに日中戦争へ突入するまでの、政治・経済・軍部のながれがダイナミックで引き込まれる。
    なぜ日本は海外に戦争をしかけていったのか?
    日中戦争~太平洋戦争にいたるまで、民意や議会・政府が反ファシズムだったのに、軍部の独走を止められなかったのは、どういう流れだったのか?

    これまでは、歴史は点でのおきまりの知識と解釈でしか知らなかったが、この本で歴史を流れでよむことで、新たな視点で歴史を理解するようになったものが多々あった。

    個人的には、参政権をもつ人々の懐具合の変化で、いかに政治がかわるのか、この本でえがかれていて(この本

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    2013年04月08日
  • 日本近代史

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    幕末から日中戦争勃発までの通史。
    この本によって、自分の近代史の知識がいかに不足していたかを知った。
    特に明治後半から昭和にかけての政治史。
    政友会と憲政党という二大政党が争っていた事など
    すごく基本的な事柄のはずなのによく知らなかった。
    今後、近代史を学ぶ上での基礎になりそうな一冊。

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    2013年04月02日
  • 日本近代史

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    近代日本の政治史(明治維新から太平洋戦争直前までの80年間)
    著者なりのスタイルで新書の形にまとめあげていますが、それでも約450ページという大容量。勉強のつもりで読んでください。

    日本がなぜに戦争に走っていったのか、小中学校の教科書では知ることのできなかった「そういうことだったのか」を解き明かすには、これくらいには分量が要るのだと、それほどまでには激動の時代だたのだと思わせられます。読んでいるときは気づかなかったのですが、江戸時代末期から昭和初期まで、たった80年間しか経ってないのに、こんなに世の中が変わったことに、読み返しながら驚いています。

    この時代に何があったかは、知っておくべきこ

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    2013年02月21日
  • 日本近代史

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    それは過ぎ去った近代史ながら、まるで今日の現代史さながら。とはいえ、その差異を見出していくこと無しに、未来はけして拓かれない。

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    2013年01月18日