坂野潤治のレビュー一覧
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日本における階級の解消の歴史について書いたもの。
序文において、戦後野党勢力は自由・平和の追求には熱心だったが平等を求めることに不熱心だったことを指摘しており、本書は昭和初期までを対象にしている。
本書の眼目はあとがきで書かれた以下の文。これが言いたくてこの本を書いたのだろうな。
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明治維新に46年間、上層農民の政界支配(筆者の言う「明治デモクラシー」)に26年間、いわゆる「大正デモクラシー」の実現(普通選挙制の成立)に20年間がかかっているのである。こうして1925年に成立した「政治的平等」が「社会的平等」(そこまでは言わないとしても「格差の是正」)に発展、転化しかけたの -
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ネタバレおもしろい。
1857年から1937年の日本近現代史について論じる。
著者は上記の時代を以下の6章にわける。
1.改革 1857~1863年
2.革命 1863~1871年
3.建設 1871~1880年
4.運用 1880~1893年
5.再編 1894~1924年
6.危機 1925~1937年
1.改革 1857~1863年
明治維新への紆余曲折について論じる。
西郷隆盛はこの時期、敵対していた薩長をつなぐ役割を担っていたが、二度流刑に処されていた。その都度パイプ役がいなくなることで、敵対関係が悪化するなどしていた。
2.革命 1863~1871年
薩長同盟と幕府軍の戦い。やがて勝海 -
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東京大学を定年退官になってからの坂野先生はホント沢山お書きになっている。書きたいことが山ほどあるのだろうと推察するが、恐らくこの本もそうした是非書いておきたい1冊だったのだろうと思う。
テーマは明快である。明治維新の士族、明治デモクラシーの上層農民、大正デモクラシーの資本家の時代を経て都市民衆にまで拡大してきた政治的平等は社会的平等を実現し得る可能性があったのか。「総力戦体制」抜きでもそれは可能であったと坂野先生は述べる。
1937年の総選挙で躍進した社会大衆党に社会的平等の自生的実現の可能性を見た戸坂潤や河合栄治郎の言説をそのまま鵜呑みにして良いかどうか疑問には思うが、平和の下で自由を、 -
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日本近代政治史の専門家と開発経済学の専門家が、明治維新という世界史上稀な革命を可能とした、幕末維新期の構造的特徴ついて考察している。
明治維新は、個々の人物や事件を追っていくと極めて分りにくい時代である。登場人物が多く、彼らの間に政策論争や政治闘争が延々と展開されるし、国家目標なるものが複数個あり、それらが合体したり変容したり逆転したり、更には、各グループの目標がどんどん変わっていくように見えるからである。しかし、著者達はこのわかりにくさを「柔構造」と名付け、これこそが明治維新を可能にした、世界に類を見ない長所だったと言う。
「柔構造」の第一の側面は国家目標で、幕末期には、「公議輿論」が政治的 -
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明治維新前後の「改革期」から、太平洋戦争開戦直前の「危機」の時代まで、日本の近代史を凝縮して解説した一冊。
ところどころで、基礎的事項が省略されているところもあるので、一通り、教科書レベルの前提知識があった方が読みやすいとは思うが、戦前の政治社会に関わった様々なアクターが、裏付け資料とともに、イキイキと描写されており、関心を引き付けてくれる。
個人的には、政党が政治の主役になって以降、「崩壊」に至るまでの過程に、現代でも身につまされるところが、多々あるように思えた。
二大政党の両者、特に原敬と、民政党側の論客であった美濃部達吉への著者の微妙な評価が興味深いところである。 -
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ネタバレ日本において、実は明治以降の自由主義、リベラルの流れが脈々と流れており、それが伝統として認識されていないが故の、自由主義の弱さを指摘しています。福沢諭吉、徳富蘇峰、吉野作造、そして民政党、社会大衆党・・・。15年戦争さなかの1936,7年頃においても民政党、社会大衆党が躍進をしていることが何を意味しているのか?民政党が政友会と異なり非常にリベラルな政党であったとは今まで考えてもみませんでしたが、軍縮に力を入れた濱口雄幸、叛軍演説で有名な斎藤隆夫などが出てきた背景を考えると確かにそうですね。そしてファシズムの一翼を担ったかのように考えられてきた社会大衆党が実は社会民主主義の党として経済の民主改革
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本書を読んで、かつて司馬遼太郎は「翔ぶが如く」という小説のあとがきで、西郷隆盛という人物について「日本にはこの様な人物の類型がなくわかりにくい」という趣旨のことをつづっていたことを思い起こす。
本書は、そのような「幕末から明治維新」という混迷と動乱のわかりにくい時期を、現代の政治の知識から考察している興味深い本であると思った。
「尊王攘夷」という当時の政治スローガンを、「尊王」「攘夷」「開国」という思想内容にまで踏み込んで、当時の各藩におけるそれぞれの政治勢力の動向と変転を詳細に考察する本書の内容は、実にわかりやすい。
混迷の時代には、常に「保守派」「革新派」と分かれて争うのは歴史の常 -
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本書を読んで明治維新の時代が立体的に見えた思いがした。この時代を取り扱った書として、高く評価できる本と思う。
本書によると「明治維新は、欧米列強が支配する19世紀の国際秩序に後発国日本が組み込まれるという国際統合過程であった」とし、その政治過程は戦後の「開発独裁」と違って「富国(大久保)」「強兵(西郷)」「憲法(木戸)」「議会(板垣)」のグループが柔軟に連携を組み替えながら、それぞれの局面でリーダーシップをとっていたというのだ。
本書では「国論の分裂である」という見方を否定し「政治的柔構造」と高く評価している。この見解はこの時代を俯瞰して新鮮であり、納得できる主張であると思った。
本書 -
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近代日本(幕末~太平洋戦争直前まで)を政治・経済の両面から描いた本。
とくに日中戦争へ突入するまでの、政治・経済・軍部のながれがダイナミックで引き込まれる。
なぜ日本は海外に戦争をしかけていったのか?
日中戦争~太平洋戦争にいたるまで、民意や議会・政府が反ファシズムだったのに、軍部の独走を止められなかったのは、どういう流れだったのか?
これまでは、歴史は点でのおきまりの知識と解釈でしか知らなかったが、この本で歴史を流れでよむことで、新たな視点で歴史を理解するようになったものが多々あった。
個人的には、参政権をもつ人々の懐具合の変化で、いかに政治がかわるのか、この本でえがかれていて(この本 -
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近代日本の政治史(明治維新から太平洋戦争直前までの80年間)
著者なりのスタイルで新書の形にまとめあげていますが、それでも約450ページという大容量。勉強のつもりで読んでください。
日本がなぜに戦争に走っていったのか、小中学校の教科書では知ることのできなかった「そういうことだったのか」を解き明かすには、これくらいには分量が要るのだと、それほどまでには激動の時代だたのだと思わせられます。読んでいるときは気づかなかったのですが、江戸時代末期から昭和初期まで、たった80年間しか経ってないのに、こんなに世の中が変わったことに、読み返しながら驚いています。
この時代に何があったかは、知っておくべきこ