勢古浩爾のレビュー一覧
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勢古浩爾(1947年~)氏は、明大大学院政治学修士課程修了後、洋書輸入会社に勤務する傍ら読書を続けてきた、エッセイスト、評論家。
人生論、読書論を中心とした著作を多数発表している。
本書は、70歳を超えた著者が、これまでの読書人生を振り返ったものであるが、その面白さは、著者も本書で取り上げている立花隆、丹羽宇一郎、出口治明、斎藤孝、佐藤優、松岡正剛ら所謂エリート「読書家」とは異なる(こんな言い方をすると、勢古氏には誠に申し訳ないのだが)、市井の「読書家」である著者が、古今の名作・名著(著者は、文学を「名作」、哲学を「名著」と呼び分けている)と格闘した様子が綴られていることにある。
著者は、少~ -
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ここ数か月で「定年もの」を何冊か読んでみているのですが、それらの内容の“平凡さ”に辟易したので、これはどうだと手に取った本です。
著者の主張は、この手の本で定番の「地域社会への貢献」とか「資格を取って自立」とかの勧めとは全く異なります。「自分のしたいことをすればいい」、「したくなければしなくていい」、要は、自分自身にとって「意味」があると思えるように過ごせばいいという考え方です。
私のような“ずぼら系”の人間にとっては大いなる応援団のエールです。が、実際、そうだろうなとも思います。「利他」にしても「利己」にしても、自分自身がそうしたいと思うことをしているのでしょうし、それが他者らの強 -
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正直なところ「バカ」が付いたタイトルの本は好きではないのですが、この著者は、本音丸出しで面白いので読んでみました。
彼の定年本はこれまでも何冊か読んだことがありますが、主張していることは、「定年であれこれ心配しても仕方がない。自分の好きなように生きよう」ということ。これは彼のどの定年本でも一貫しています。
定年後に気になるのは、カネ、健康、生き甲斐、この3つが大きなテーマで、この本では、定年に関する専門家の様々な著書を読み漁り、実態との比較で内容を考察しています。専門家が書く定年本は、自分の経験や専門分野からのアドバイスという形で書かれていますが、その中には実態とかけ離れている理想論も多い。定 -
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「定年後人生」の達人が教える人生初の自由を手にするための指南書。
著者の本は「定年後のリアル」以降、何冊か読んでいるが、これもその系統の本。
内容は、定年後は社会のしばりから解放されて、自由に生きよ。人の意見に左右されない、世間を気にしない、お金や常識に縛られないようにしようといった内容。定年後の自由とは何かを考えさせられた。
長年会社で働くと、定年退職しても会社の事が気になったり、面子を気にしたり、何もしないことに罪の意識を感じたりするようだ。自分も会社の老後セミナーを受けたことがあるが、まず退職したら何をするかを考えろと言われた。退職すると時間があり過ぎて退屈する人が多いらしい。何もするこ -
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自我を持ってしまった人間は、「自分」に酔わずにはいられません。人間は自分に「ほろ酔い」でなくては生きていけないのだと、著者はいいます。しかし現代の日本人は、ほろ酔いの「自分」の上に、資産、地位、権力、知名度といった資本主義的自我を積み上げて、二階建ての「自分」に酔ってしまっています。こうして、現代の日本は「自分様」たちであふれかえることになったと著者は嘆いています。
個人的におもしろいと思ったのは、ひろさちやに対する批判をおこなっている箇所でした。ひろは、「苦しみを楽しむことができれば、あなたの人生はすばらしい人生になります」と述べますが、これに対して著者は「これらの言葉は、どこか上滑りして -
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「他人に認められたい」という承認欲求に骨がらみになっている人間の姿を冷徹に見つめて、その醜悪な事例を鋭い筆致で描き出している本です。その一方で著者は、「自分はこれでいい」「やるだけのことはやった」と自分で自分を認める自己承認が必要なのではないかと主張しています。
おもしろいと感じたのは、著者が自己承認が揺らぐということを率直的に認めていることです。「自分はこれでいい」と思っても、なかなかそうした境地に安住することはできません。「だから、何度でも打ち立てられなければならない」と、著者はは述べます。
本書で語られている、元読売ジャイアンツの桑田真澄さんの姿勢がとりわけ印象に残りました。