赤城毅のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「本好きにはトリビアが嬉しい本にまつわる軽い日常系ミステリ」
は割とよく見かけるし最近増えてきていますがこれは
「書籍が関係する歴史の謎に挑むミステリ」
と少々おおがかり!
ケネディ暗殺、雷帝の書庫、正教会が隠匿した福音書、ナポレオンの蔵書などなど
世界史になだたる偉人・事件に関わる壮大な謎…
それらに圧倒的な知識をもって挑むのが書物狩人です。
(別に謎に挑んでるわけじゃなく依頼で書物を探し出すとたどり就くのだけど…)
コンパクトな短編でありながら、
さながら洋画の歴史アドベンチャーを見ているような、
謎解きのワクワクさとダイナミックさすら感じます。
元々は冒険小説を書かれていた、と解説を読んで納得!
銀髪の書物狩人に美貌の人間コンピュータ…など
エンタメがかった登場人物ながら、
詳細な史実解説と緻密な歴史考察で胡散臭さを感じさせない
骨太なミステリーに仕上がっています。
そのほとんどがしっかり根拠に基づいているのも凄い!
世界史に疎い私には驚きの連続。 -
Posted by ブクログ
たった1冊の本が、国際政治を動かすことがある。宗教団体の正統性を脅かすことがある。歴史の通説を覆すことがある。
そんな秘密をはらんだ本を、依頼を受けて、命をかけて手に入れる。それが書物狩人の仕事。
1冊の本を巡って、様々な国の、人の思惑が交差する。
とにかく説得力がある。ノンフィクションとフィクションの混ぜ方が絶妙で、どんどん引き込まれてしまう。1冊の本が持つ力の大きさに、驚いて、少し怖くなる。
歴史ミステリー&本好きにはたまらない作品。
続編も出ているみたいだからこれは読まなくちゃ!今でさえ読みたい本が山のようにあるのに、また増えてしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレファンタジーとか歴史ものなどを刊行してきた作家が、本職のドイツ史の知識や経験を利用してものにした、日米開戦に至る、ポイント・オブ・ノーリターンを探る思考の軌跡を記したものです。
ドイツと日本の歴史資料を閲覧した際に、前者は和戦の決断ポイントが明確であるにも拘らず、後者ではいつの間にか状態が悪化しているという印象を著者が受けたことをきっかけに、どうして日米開戦に到ってしまったのかを調べてきたらしい。そしてその結果理解できたことを、ドイツとの同盟交渉やアメリカとの日中仲介交渉などの過程を紹介しながら記している。
序文によると、帝国が崩壊するはずがないという幻想を持っていた多くの人々が、その前提の下で、自己保身や勢力拡大、虚栄心を満たすことのみを考えて、その場その場で行動し続けた結果到ったものであり、誰もがそうなり得る、主役のいない物語と述べているが、前半では駐独大使大島浩を、後半では外務大臣松岡洋右をメインに据えて描いている。これは、前者は日独伊同盟締結を、後者は対米交渉決裂を象徴している。
著者は作家にしてドイツ現代史専攻であるので日独交渉の過程を中心において議論を進めており、そのキーワードは恣意専行になると思う。連絡・交通手段が限定されているということも背景としてあると思うのだが、本国から遠く離れた現場で相手国に入れ込んでしまった外交官・武官が、相手国の意向を汲んで交渉を進めてしまい、それを本国が承認してしまうという構図が見えてくる。それには、ナチス・ドイツの外相となるリッベントロップという人物も大いに関係してくるのだが。
おおよその著者のスタンスとしては、天皇や海軍上層部、外務省などはドイツに入れ込んだり、アメリカと対立することには反対だったのだが、陸軍や海軍の若手が実務レベル交渉で突っ走り、戦意を高揚する世論が醸成されるに至って、流されてしまったという感じなのだと思う。
物語としては面白みに欠けるし、歴史書としては中途半端だと思うけれど、対独交渉に当たっていた人たちがどれほど楽天的に考えていたのかが分かる作品である気がする。 -
Posted by ブクログ
こ、これは面白いぞー!文庫のオビの
逢坂剛氏のコメントもきっと本心なのだと
思われるくらいに面白い!
歴史の謎+古書の謎+騙し合いの要素が
上手く融合された紛れもない古書ミステリ。
こういった歴史上の謎や疑問点に、筆者が
様々な文献を調べ辿り着いた、少しの嘘や
想像力を紛れ込ませて、謎の解明をして行く
手法の作品は凄く好みです。どこまでが
本当でどこまでが嘘か分からない。それほど
歴史上の謎が本当に謎めいているって事
なんでしょうねー。
たった1冊の古書、寄書が今までの歴史や
これからの国家の在り方などを揺るがす存在
なんて、無条件にワクワクします。ある意味
これも知的な冒険小説なのかも! -
Posted by ブクログ
書物狩人シリーズ、8作目。そして今作が最終巻。
舞台は日本の長崎県五島列島の一孤島。最終巻である今作では、この地でル・シャスールと宿敵ミスター・クラウンの最終対決が行われることになります。今作の主役となる稀覯本は、かつて隠れキリシタンの里となっていたこの島の旧家に伝わる「呪いの書」。私が思うこのシリーズの醍醐味は、1冊の本に隠された裏歴史を知れるところであり、どこまでが真実でどこまでが創作か見極めるのも楽しみ方の一つであったのですが、今回は隠れキリシタンの歴史や風習に関しては興味深く読めたものの、かの預言者との絡みは面白味はあったけれども真実味は全く感じなかったのが残念なところ。あくまでも、今作の主題は二人の対決にあり、そのためのミステリだったのかな。二人の対決の結末が、二人の関係性通り、ライヘンバッハの滝をもじっているのであれば、ル・シャスールがあのホームズのようにいつか帰還してくれることを願います。