あらすじ
日独同盟論の芽生えから、運命の対米英戦争開戦まで。激動の世界史の中で揺れ動く日本の政治・外交の人間模様を描き上げる、歴史ドキュメント。 【半藤一利氏推薦!】政治家も軍人も、そして国民も、「大日本帝国が亡びるはずがない」と信じていた。その「空気」を、気鋭の著者が迫力をもって描き出している。 【著者の言葉】著者は、あるいは人物Aの軽薄さに怒り、あるいは人物Bの無責任をなじるであろう。されど、彼ら、批判の対象となるひとびとは、実は、歴史の鏡に映った著者自身であるかもしれない。国がなくなることはない、会社がつぶれるはずがない、日本人が壊れてしまうわけがない。そんな根拠のない確信を抱いているかぎり、批判されている彼らと同じ過ちを犯しかねないだろう。自戒をこめて、亡国の物語を記そうと思う。
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Posted by ブクログ
太平洋戦争は、始まる前の実際に砲火を交える前に、外交面で負けていた、ということですか。
単純な言い方すると、戦争するには資源が足りない、だから戦争して資源を得よう、ってことにしか思えないんだけど。
それって、おかしいやね。
この時代に関しては、不勉強なもので全然わからんのです。それこそ、この本と教科書のレベルの知識です。
個人的には、まがりなりにも日清・日露で世界の大国の仲間入りしてしまったという、カンチガイが本質なんじゃないか、と思いますけどね。
成金的な感覚です。
Posted by ブクログ
ファンタジーとか歴史ものなどを刊行してきた作家が、本職のドイツ史の知識や経験を利用してものにした、日米開戦に至る、ポイント・オブ・ノーリターンを探る思考の軌跡を記したものです。
ドイツと日本の歴史資料を閲覧した際に、前者は和戦の決断ポイントが明確であるにも拘らず、後者ではいつの間にか状態が悪化しているという印象を著者が受けたことをきっかけに、どうして日米開戦に到ってしまったのかを調べてきたらしい。そしてその結果理解できたことを、ドイツとの同盟交渉やアメリカとの日中仲介交渉などの過程を紹介しながら記している。
序文によると、帝国が崩壊するはずがないという幻想を持っていた多くの人々が、その前提の下で、自己保身や勢力拡大、虚栄心を満たすことのみを考えて、その場その場で行動し続けた結果到ったものであり、誰もがそうなり得る、主役のいない物語と述べているが、前半では駐独大使大島浩を、後半では外務大臣松岡洋右をメインに据えて描いている。これは、前者は日独伊同盟締結を、後者は対米交渉決裂を象徴している。
著者は作家にしてドイツ現代史専攻であるので日独交渉の過程を中心において議論を進めており、そのキーワードは恣意専行になると思う。連絡・交通手段が限定されているということも背景としてあると思うのだが、本国から遠く離れた現場で相手国に入れ込んでしまった外交官・武官が、相手国の意向を汲んで交渉を進めてしまい、それを本国が承認してしまうという構図が見えてくる。それには、ナチス・ドイツの外相となるリッベントロップという人物も大いに関係してくるのだが。
おおよその著者のスタンスとしては、天皇や海軍上層部、外務省などはドイツに入れ込んだり、アメリカと対立することには反対だったのだが、陸軍や海軍の若手が実務レベル交渉で突っ走り、戦意を高揚する世論が醸成されるに至って、流されてしまったという感じなのだと思う。
物語としては面白みに欠けるし、歴史書としては中途半端だと思うけれど、対独交渉に当たっていた人たちがどれほど楽天的に考えていたのかが分かる作品である気がする。